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第98話 桜の下

桜が咲き始めていた。


凛と海斗が仕掛けた、小さな作戦。

二人はそれぞれ、別の理由で同じ場所へ呼び出されていた。

夕方。


川沿いの桜並木。


淡い花が枝いっぱいに広がっている。


風が吹くと、花びらが舞った。


ノアールが歩いてくる。


「凛に呼ばれたんだけど…」


周りを見る。


誰もいない。


「まだ来てないのかな」


そのとき。


足音が聞こえた。


振り向く。


レンだった。


レンも少し驚いた顔をする。


「…ノアール?」


ノアールも言う。


「レン?」


短い沈黙。


レンが言う。


「海斗に呼ばれた」


ノアールは苦笑する。


「私、凛」


二人は同時に気づいた。


「あいつら…」


レンが小さく笑う。


「作戦だな」


ノアールも笑う。


「だね」


風が吹く。


桜の花びらが舞う。


夕方の光。


川の音。


しばらく二人は黙って桜を見ていた。


レンが静かに言う。


「ノアール」


ノアールが振り向く。


レンの表情は真剣だった。


少し迷ったあと、言う。


「俺さ」


「ずっと言えなかった」


風が吹く。


桜が揺れる。


レンが続ける。


「芝居じゃない」


「ずっと本気だった」


ノアールの胸が強く鳴る。


レンが言う。


「子供の頃から」


「ずっと好きだった」


ノアールの目が揺れる。


レンは少し苦笑した。


「でも」


「素直になれなかった」


少し沈黙。


レンが続ける。


「だから」


「ひどいこと言った」


ノアールは静かに聞いている。


レンが言う。


「顔を壊したい」


「そんなことまで言った」


桜の花びらが落ちる。


レンが目を伏せた。


「でも」


「全部逆だった」


ノアールを見る。


「壊したかったんじゃない」


「誰にも触らせたくなかった」


ノアールの目が潤む。


レンが言う。


「ずっと好きだった」


「今も」


「これからも」


沈黙。


風が強く吹く。


桜の花びらが舞う。


ノアールが小さく笑う。


「遅いよ」


レンが苦笑する。


「だよな」


ノアールは一歩近づく。


「でも」


小さく言う。


「私も」


レンを見る。


「レンが好き」


レンの表情が止まる。


ノアールが続ける。


「私も」


「子供の頃から」


「ずっと」


レンは一瞬動けなかった。


ノアールが笑う。


「だから待ってた」


その瞬間。


レンがノアールをもう一度抱き寄せる。


ノアールも静かに腕を回した。


しばらく二人はそのまま動かなかった。


風が吹く。


桜の花びらがゆっくり舞う。


レンがノアールの手を取った。


ノアールが少し笑う。


「どこ行くの?」


レンも少し笑う。


「さあ」


「歩こう」


ノアールが頷く。


「うん」


二人は並んで歩き出した。


川沿いの桜並木。


淡い花びらが静かに降り続いている。


歩きながら、レンが小さく言う。


「ノアール」


ノアールが振り向く。


「ん?」


レンが少し照れながら言う。


「今日は帰したくない」


ノアールが一瞬黙る。


それから小さく笑った。


「…私も」


二人は手をつないだまま歩いていく。


桜のトンネルの奥へ。


夕方の光の中で、二人の影がゆっくり重なる。


花びらが舞う。


並んだ背中が、少しずつ遠くなっていく。


そして――


桜の奥へ消えていった。

桜の下で、ようやく二人の想いが重なりました。

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