第92話 学校
ライブの翌日。
大きなステージの夜が終わり、
ノアールはまた学校へ戻ってきた。
けれど――
いつもの日常は、少しだけ変わっていた。
朝。
校門をくぐった瞬間だった。
「……あ」
一人の女子が声を上げる。
「ノアール!」
その声に、周りの生徒が振り向いた。
「あ、本当だ」
「昨日ライブ出てたよね!」
「見た見た!」
女子たちが一気に集まってくる。
「おはよう!」
「昨日すごかった!」
「ねぇサインして!」
ノアールは少し驚いた顔をする。
「え、今?」
女子が笑う。
「今!」
ノートが差し出される。
スマホも差し出される。
「写真いい?」
「いいよ」
ノアールは少し照れながらペンを受け取った。
「名前書くだけでいい?」
「うん!」
周りから笑い声が上がる。
「やばい、本物だ」
「昨日のセンターかっこよかった」
ノアールは少し困ったように笑った。
そこへ――
「ノアール」
ルミエールが声をかける。
「もうホームルーム始まるよ」
ノアールは顔を上げる。
「あ、ほんとだ」
女子たちが慌てて散る。
「またね!」
「ドラマ楽しみにしてる!」
「次のライブも行く!」
ノアールは小さく手を振った。
放課後。
部活。
空いた教室の机には紙とペンが広がっていた。
アニメ研究会。
部員たちはそれぞれイラストを描いている。
ソレイユもペンを動かしていた。
「このキャラさ」
「髪の動きもう少し――」
そのとき。
部室のドアが開く。
ノアールだった。
一瞬、部員たちの手が止まる。
描いていたペンが止まる。
「……ノアール先輩?」
一人が立ち上がる。
「昨日ライブ出てましたよね?」
「見ました!」
「すごかったです!」
イラストを描いていた部員たちが、次々に席を立って集まってくる。
「先輩サインください!」
「色紙あります!」
「私も!」
ルミエールが笑う。
「人気だね、ノアール」
ノアールは少し困った顔で笑った。
「えー……」
でもペンを受け取る。
「順番ね」
部員たちが嬉しそうに並ぶ。
ソレイユが笑う。
「昨日のライブの影響すごいね」
ルミエールも頷く。
「本当だね」
ノアールはサインを書きながら、少しだけ笑った。
高校生活も残りわずか。
最初はひとりだったノアールの学校生活も、
少しずつ賑やかに変わってきました。




