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第91話 楽屋の涙

キャットスターのライブが終わった。


歓声はまだ、ホールの外まで響いている。


その頃――

三人は楽屋に戻っていた。

ライブが終わった。


最後の曲の余韻が、まだ耳に残っている。


歓声はホールの外まで響いていた。


楽屋のドアが閉まる。


急に静かになった。


さっきまでのライトの熱と歓声が、まだ体に残っている。


ショコラが椅子に腰を下ろす。


「……すごかったね」


ソレイユが大きく息を吐いた。


「客席、すごい声だった」


ルミエールも小さく頷く。


「ええ。本当に」


ノアールはまだ立ったままだった。


ぼんやりと、ステージのことを思い出しているようだった。


ショコラが笑う。


「ノアール」


ノアールが顔を上げる。


その瞬間。


ノアールの目から涙がこぼれた。


「……お姉ちゃん」


声が震える。


「ありがとう」


ノアールはブランシュとショコラに抱きついた。


「ありがとう……」


ショコラの目にも涙が浮かんでいた。


「よかった……」


「本当によかった」


ショコラはノアールを強く抱きしめる。


「戻ってこれたね」


ノアールは何度も頷いた。


ブランシュはその様子を静かに見ていた。


そして、少しだけ笑う。


「当たり前でしょ」


落ち着いた声だった。


「キャットスターの妹なんだから」


ノアールは泣きながら笑った。


そのとき。


スタッフが楽屋に入ってきた。


「お花、届いています」


テーブルの上に、次々と花束が置かれていく。


大きな花束。


色とりどりの花。


スポンサーや関係者からのものだった。


ソレイユが目を丸くする。


「すごい……」


その中に――


赤い薔薇の花束があった。


ノアール宛てのカードが付いている。


ショコラがカードを見る。


「レンから」


ノアールは少し驚いた顔をする。


ショコラは少し笑った。


「真っ赤な薔薇」


ノアールは少し照れたような顔をした。


その横に、もう一つ花束があった。


派手ではない。


白と淡い色の、上品な花だった。


小さなカードが添えられている。


ショコラがそれを見る。


「これ……ブランシュ宛て」


ブランシュが花束を受け取る。


カードには手書きの文字があった。


――ライブ、とても美しかったです。


ショコラが小さく笑う。


「お見合い相手じゃない?」


ブランシュは何も言わなかった。


ただ、その花束を静かにテーブルに置いた。


そのとき。


楽屋のドアが開いた。


社長とマネージャーが入ってくる。


社長は三人を見て頷いた。


「よくやった」


短い言葉だった。


「今日のライブは大成功だ」


マネージャーも笑う。


「SNSもすごいよ」


「ノアール復活って、もうトレンド入りしてる」


ショコラが驚いた。


「本当に?」


社長は腕を組んだ。


「今日はもう休め」


それだけ言うと、二人は楽屋を出ていった。


部屋がまた静かになる。


ノアールはテーブルの上のスマホを見た。


まだ触っていない。


少し迷う。


そして、ゆっくり画面を開いた。


通知が一気に流れる。


メッセージ。


コメント。


動画。


写真。


全部――


ノアールの名前だった。


「ノアールおかえり」


「待ってた」


「涙出た」


「キャットスター最高」


ノアールは画面を見つめた。


指が少し震える。


胸の奥が、じんわり熱くなった。


昔。


自分の部屋で泣いていた夜。


SNSを見ていた。


姉たちは褒められていた。


自分は何もできないと思っていた。


でも――


今、画面に並んでいる言葉は


全部


自分に向けられていた。


ノアールは小さく笑った。


そしてスマホを胸に抱えた。

キャットスターのライブは、大成功でした。


ノアールは再びステージに立ち、

たくさんの歓声の中で歌いました。


そして――

今度は自分の力で。


ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

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