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第85話 すべては、あの日の一文字から始まった

事故は、突然起きたわけじゃない。

覚醒も、今日生まれたわけじゃない。


すべては、もっと前。

まだ子どもだった頃の、あの日から始まっていた。

夜。


ライブの熱気がまだ街に残っている。


歓声は消えたはずなのに、

空気だけがざわついていた。


ルミエールは一人、足早に家へ戻る。


自室へ向かう途中、ふと思い出す。


――そういえば。


ノアールの部屋に入った時、

机の上に置きっぱなしのカードがあった。


急いで確認する。


黒いメッセージカード。


04.01 — You were there.


バレンタインのカード。


もう一枚。


映画決定の時のカード。


裏面。


N7R8


ノアール7歳。レン8歳。


台本の端に残された走り書き。


「ここ、来たことある?」


川沿いの桜。


白い花。


ベンチ。


指先が止まる。


「……繋がった」


地下の秘密扉を開ける。


円形の空間。


中央の装置が淡く光る。


時間軸を入力。


《04.01》


《川沿い・桜》


空間が歪む。


光が収束する。


ルミエールは迷わず踏み込んだ。


桜が満開だった。


川の音。


夕暮れの光。


ベンチの前。


幼いレンが泣いている。


「……母さん、いなくなった」


声が震えている。


ノアールが近づく。


小さな足音。


「レン」


背伸びして、頬にキス。


「私、大きくなったらレンのお嫁さんになる」


レンが固まる。


ノアールはさらに近づく。


人差し指を自分の唇へ。


「しー」


その指を、そのままレンの唇へ。


「私がレンのお母さんに会わせてあげる」


無邪気な笑顔。


「私、実は魔法使いなの」


小さな魔法書。


ページがめくれる。


詠唱。


――一文字。


間違える。


空気が変わる。


甘いはずの光が、濁る。


桜の花びらが逆流する。


黒い揺らぎ。


ノアールの胸に、闇が沈む。


同時に、レンにも欠片が落ちる。


その一部始終を――


少し離れた木陰から、

海斗が見ていた。


声を出せない。


好きだった。


でも、言えなかった。


その隣で凛が、海斗の袖を掴む。


震えているのは海斗の方だった。


凛は言う。


「海斗には、私がいる」


静かに。


泣かずに。


海斗は何も言えない。


桜が舞う。


光が揺れる。


そして、闇は根を下ろした。


時間が戻る。


ルミエールはその場に立ち尽くす。


「未完成魔法……禁断術式」


違う存在を呼んだ。


だから消えなかった。


だから共鳴した。


ライブの闇は偶然じゃない。


覚醒でもない。


事故の継続。


すべては、あの日の一文字から始まった。


同じ夜。


それぞれのホテルの部屋。


レンは窓の外を見ている。


桜。


あの日の匂いが蘇る。


「……俺、あの時」


海斗は天井を見つめる。


子どもの頃の光景が離れない。


凛はベッドに腰掛ける。


あの言葉を、思い出していた。


「海斗には、私がいる」


自分が選んだ場所。


自分が守った場所。


そして。


ノアールだけは――


深く、眠っていた。


何も知らずに。

すべての根は、ここにありました。


恋でもなく、嫉妬でもなく、

ただの事故でもない。


幼い誓いと、禁断魔法。


そして、四人の始まり。


次は――

消せるのか。


それとも、代償があるのか。


ここから本当の最終局面です。

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