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第5話 静かに軋む姉たちの心

少しだけ、姉たちの視点のお話です。

ノアールの涙の裏側で、ショコラとブランシュもまた――

それぞれの場所で、揺れる胸の内を抱えていました。

◆ブランシュ


防音室の扉がそっと閉まる。

ブランシュはピアノの前に静かに座った。


鍵盤に指を置き、

深く息を吸い、整える。


(私は……大丈夫。

いつも通りに、弾けばいい)


――そう言い聞かせた。


だが、最初の一音が鳴った瞬間、

ブランシュの瞳がわずかに揺れた。


澄んでいるはずの音色は、

ひどく悲しみを帯びて震えていた。


(違う……こんなの、私の音じゃない)


いつもなら、

冷静に、完璧に、

感情を一滴もこぼさずに音を操れるのに。


今日だけは違った。


抑え込んだはずの揺れが、

音の中に混ざってしまう。


(ショコラには冷静でいろと言ったのに……

私こそ……冷静でなんていられない)


指先が震え、

和音がわずかに濁る。


それでも弾いた。

止まれば、心の奥が崩れてしまいそうだった。


スタジオの照明だけが、

静かにブランシュの背中を照らしていた。


◆ショコラ


その頃。


自室の扉を閉めたショコラは、

ベッドの端に座り込み、膝を抱いていた。


灯りはつけていない。

机のスタンドライトだけが、

不安げな白い光で彼女の横顔を照らしている。


(また……またやっちゃった……)


ノアールの泣き声が

耳の奥で何度もリフレインする。


助けたいだけなのに。

優しくしたいだけなのに。


手を伸ばせば伸ばすほど、

ノアールの背中が遠ざかっていく。


(どうしてなの……

どうして私、うまくできないの……)


震えた指先が、机の上の本に触れる。


医学書。

心理の専門書。

そして古びた魔法書。


必要なものを片っ端から集めたのに、

開いても開いても、頭に文字が入ってこない。


大学のレポートも目の前にある。

提出期限も迫っている。

なのにページはめくれない。


(もし……このままノアールが倒れたら……

その理由が、私だったら……)


胸が鋭く痛む。


ショコラは立ち上がり、

部屋を行ったり来たりした。


止まったら崩れそうで、

歩くことしかできなかった。


(お願い……ノアール……

どうか……明日もちゃんと、息をしていて……)


祈るように握った拳が、

かすかに震えていた。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ノアールの心が揺れる夜――

その影で、姉のショコラとブランシュもまた、それぞれの“痛み”を抱えていました。


三人の想いがすれ違うたび、

少しずつ、物語は次の夜明けへ動き出します。


これからも、ノアールたちをそっと見守っていただけたら嬉しいです。

次回、第6話もどうぞよろしくお願いします。

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