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第53話 リベンジのステージ

失敗は終わりじゃない。

次へ進むための、ただの通過点。

今日、私たちはもう一度ステージに立つ。

ショッピングセンターでのリベンジの日。


前回のライブと違い、胸にあったのは過剰な緊張ではなく、

「前より、もっと良いものを届けたい」

という静かな決意だった。


控室で、ルミエールがタブレットを確認しながら言う。


「今日の流れ、確認するわ」


「最初はソレイユ。

あとは、私たちで繋ぐ」


ノアールは静かに頷き、

ソレイユの笑みがわずかに揺れた。


最後にルミエールが片手を差し出す。


「手を重ねて」


ノアールは意味を察して手を乗せる。

ソレイユは一瞬「?」となりながらも、すぐに笑って手を重ねた。


「――今日のステージ、成功させましょう」


三人の手が重なり、静かに気持ちがひとつになる。


そして本番。


会場に出た瞬間、前回より明らかに人が多いことが分かった。

ロボットの周りにはすでに親子連れの列。


「……すごい」


ノアールが小さく呟く。


そこへ会場アナウンス。


『それでは、ただいまより――

LUMISORA ミニライブショー、スタートです!』


「はーい! みなさん、こんにちはー!」


ソレイユがステージに飛び出し、大きく手を振る。


「こんにちはー……」


子供たちの声が返る。


「声が小さいぞー!

もっと大きな声で、こんにちはー!」


「こんにちはーー!!」


一気に会場の空気が明るくなる。


「今日はね、親子で楽しめる歌とダンス、

クイズ大会やじゃんけんゲームもあるよ!

最後まで、いっぱい遊んでいってねー!」


最初の曲はルミエール。


「みんな、パパ大好きかな?

今から“パパとの歌”を歌います」


♪ 『パパと いっしょに レッツ・ゴー!』


お外は ぴかぴか いい天気

パパの お手てを ギュッとつないで――


家族連れのパパと子供たちが、自然と手を叩き始める。

曲が終わると、会場いっぱいに拍手が広がった。


続いてソレイユ。


「パパの歌、どうだったかな?

次はママの歌を歌います」


♪ 『ママ今日は モールで何するの?』


“あるある”な歌詞に、ママたちが思わず笑う。

子供たちはリズムに合わせて体を揺らす。


「そろそろ、みんな座ってるのも疲れたよね?」


ソレイユがにこっと笑う。


「一緒に踊ろう!

“フードコート・ダンス”いくよ!

私のまねしてね!」


右にジャンプ! 左にジャンプ!

たこやき アツアツ フーフーフー!


子供たちが一斉に飛び跳ね、会場は笑顔でいっぱいになる。


「みんな、将来なにになりたい?」


ソレイユが手を耳に当てる。


「ロボット!」「アイドル!」「ユーチューバー!」「お姫様!」


元気な声が飛び交う。


「じゃあ、女の子の夢の歌!」


♪ 『魔法使えたら何になりたい?』


可愛い振り付けに、女の子たちが目を輝かせる。


「次は、男の子の夢!」


ルミエールがキーボードに手を置き、

ソレイユがギターを構える。


ノアールがマイクを握る。


♪ 『僕は世界のヒーロー』


迫力ある演奏に、会場が静まり、

曲が終わると大きな拍手が湧き起こった。


「ここでクイズ大会!」


「このショッピングセンターのフードコート、

お店は10個ある! ○か×か!」


子供たちが走り回り、最後に残った子には

ロボットの大きなステッカーが贈られる。


歓声。


ノアールはその光景を見ながら、

「ちゃんと届いてる…」と胸の奥で確かに感じていた。


「次は、ちょっとだけ静かな歌。

お母さんが子供を大切に思う歌です」


♪ 『小さな手をぎゅっと』


小さな 小さな その手で

ぎゅっと 指を 握りしめてくれた日――


会場のざわめきが、すっと静まった。

歌声に合わせて、子供を抱き寄せる母親の姿。

そして――

涙を浮かべる母親の姿もあった。


「最後は、私たちの曲を聴いてください」


♪ 『銀河の片隅で、秘密の恋を』


ロボットと三人の演奏が、しっかりとひとつになる。

前回とは違う。

ちゃんと“届いている”感触があった。


「最後に、じゃんけん大会!」


「じゃんけんぽん!」


笑顔と歓声が絶えない。


そして、握手とサイン会。


ノアールが描いたロボットと猫のイラスト入りサイン紙。

そこに三人のサインが並ぶ。


「かわいい!」

「ロボットかっこいい!」


長い列ができ、温かい言葉が次々と届いた。


帰り際。


「今日の子たち、すごく良かったね」


そんな声が、あちこちから聞こえる。


ロボットだけじゃない。

自分たち自身が認められた。


控室に戻ると、ショッピングセンターの責任者が笑顔で現れた。


「今日は本当に素晴らしかった。

お客様が増えただけじゃなく、

歌のあとフードコートに行く人が明らかに多かったよ」


「またぜひ、うちの店舗にも来てほしい。

全国に系列店があるから、次は別の会場もお願いしたい」


ルミエールが静かに頷く。


「ありがとうございます。

また、必ず来ます」


三人は顔を見合わせ、微笑んだ。


リベンジは成功した。

そして、新しい扉が開き始めていた。

前より少しだけ上手くなったのではなく、

前より少しだけ「心が届いた」――

そんな気がする一日でした。


小さな拍手が、大きな勇気に変わる。

この一歩が、次の未来へ続いていきます。

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