第4話 静かに満ちていく闇の気配
お読みいただきありがとうございます。
前回、ノアールの涙とともに、闇の力が姿を見せはじめました。
今回は、ノアールの部屋の外で──
姉たちの葛藤が静かに動き出します。
どうか、静かにページを開いてみてください。
暗闇に沈んだリビング。
停電した室内で、ショコラは拳を強く握りしめていた。
「……どうして、またこんなことに」
声がひどく震える。
扉の向こうでは、ノアールの嗚咽が止まらない。
雹が窓を叩く音だけが
家中に不気味に響き渡っていた。
その時──
静かな足音が近づいてくる。
月光に淡く浮かび上がるシルエット。
ブランシュが姿を現した。
「ショコラ。言ったわよね」
冷静な声。
だが、その瞳は月光を反射して揺れている。
「……ノアールを刺激しないで、って」
ショコラは顔を上げ、噛みつくように言い返した。
「刺激しないで?
何もしないで見てろって言うの!?」
暗闇で、ショコラの目が赤い。
「ノアールは苦しんでるのよ!
助けなきゃ……壊れちゃう!」
ブランシュは小さく息をつき、言葉を選ぶ。
「……あなたの気持ちはわかるわ。
わたしだって、同じ気持ちよ」
雹がさらに強く窓を叩く。
ブランシュは、ノアールの部屋の方へ視線を向けた。
「でもね。
ノアールのなかにある“闇”は……
苦しみ、不安、怒り、悲しみ。
そういうマイナスの感情を糧にして
どんどん大きくなってしまうの」
ショコラは息を詰まらせる。
「それって……
わたしが声をかけるほど……
ノアールを苦しめるってこと……?」
ブランシュは静かに頷く。
「そう。
少しでも追い詰めるような言葉も、
焦りも、涙さえも……
全部、“闇”の餌になる」
ショコラの指先が震えた。
(じゃあ……どうしたら良いの……?)
その瞬間だった。
ノアールの部屋から──
ゴォォ……ッ
低く、重たい音が響いた。
床が、ゆっくりと震える。
ショコラとブランシュは
同時に息を飲んだ。
「……今のは?」
ブランシュは
慎重にノアールの部屋の扉へ近づき、
わずかに隙間を開ける。
中で──
ノアールが泣きながらうつむく足元に、
闇色の魔法陣が
ぼんやりと、脈打つように浮かんでいた。
それは
前よりも、濃く。
前よりも、禍々しく。
前よりも──大きい。
ショコラは息を呑み、
胸を締め付けられるような痛みを覚えた。
ブランシュが小さく囁く。
「……闇が
またひとつ、大きくなった」
ノアール自身も気づかないまま
涙と一緒に、闇は育っていく。
それはまるで──
光が強まるほど、影が濃くなるように。
ショコラは
自分の膝が震えるのを感じながら、ただ願った。
(お願い……
ノアールをこれ以上
連れていかないで……)
月の光だけが
閉ざされた部屋の闇を細く照らしながら、
静かに揺れていた。
※次話へつづく
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
ノアールの苦しみに、姉たちはどう向き合えばいいのか──
その答えはまだ見つかりません。
でもきっと、光があるから影が生まれる。
影が濃いからこそ、光はまばゆい。
これからもそばで見守っていただけたら嬉しいです。
次回もよろしくお願いいたします。




