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第47話 はじめての挫折、はじめての場所

事務所のGOサイン。

SNSへの投稿。


最高の結果を期待していた私たちは、

現実という名の冷たい壁にぶつかりました。

「……今日も、ダメだったわね」


ルミエールが、重いカバンを抱え直して低く呟いた。


放課後、私たちは制服のまま、ありとあらゆるところを回った。

テレビ局、ラジオ局、制作会社、イベント会社。


けれど、差し出した資料に『ノアール』の名前を見つけるたび、

相手の顔は一様に濁った。


「ノアールさんか……。

また体調不良で直前にキャンセル、なんてことになったら困るんだよね」


その言葉は、まるで鋭いナイフのように、私たちの心を削っていく。


SNSに投稿したデビュー曲も、

身内が「いいね」をしてくれるだけで、

世間からの反応は驚くほど静かだった。


ルミエールは知能も家柄も恵まれた令嬢。

ソレイユは異世界の王宮で愛されて育ったお姫様。


二人はこれまでの人生で、

望んだことが叶わなかったことなど一度もなかった。


(魔法を使えば、こんな扉、簡単に開くのに……)


そんな考えがよぎるが、二人とも親から厳しく言われていた。


『魔法は困っている人のために使うもの。

自分の利益や欲のために使ってはならない』


初めて味わう、思い通りにいかない「挫折」。


三人の足取りは、

いつしか鉛のように重くなっていた。


「……ねえ。

あそこのショッピングモールのフードコートに、

アイスを食べに行きましょう?」


ルミエールがふと、大きな商業施設を指差した。


「甘いものを食べたら、少しは元気が戻るかもしれないわ」


三人にとって、一般の人々で溢れかえるショッピングモールは、

新鮮で、どこか眩しい場所だった。


賑やかな広場を通りかかったとき、

ルミエールの足が止まった。


そこにはイベントスケジュールの看板があり、

『アニメキャラクターショー』などの予定が並んでいた。


「……ここでライブをやったら、

誰かが聴いてくれるかしら」


ルミエールのひらめきに、二人は顔を上げた。


三人はそのままインフォメーションカウンターへ向かい、

アポなしで「責任者の方に会わせてください」と告げる。


運良く現れた責任者は、

最初は難しい顔をしていたが、資料のロボットに目が止まった。


「……この猫型のロボット、

これも持ってきてくれるんですか?」


「ええ、もちろんです」


「ロボットが演奏するなら面白い。

集客の目玉になるかもしれない。

……よし、この日が空いているから、スペースを使ってください」


やっと、

自分たちの歌を披露できる場所が決まった。


その頃、学校のアニメ同好会の部室。


悠斗が一人、窓の外を眺めていた。


「最近、ソレイユも先輩たちも、全然来ないっすね……」


桐谷が寂しそうに零す。


悠斗は、

あのデビュー前の最後のデート以来、

連絡が少なくなったスマホを握りしめた。


ソレイユが夢に向かって頑張っているのは嬉しい。

けれど反面、彼女が手の届かない遠い場所へ行ってしまうような、

胸を締め付けるような寂しさがあった。


「……頑張れよ、ソレイユ」


その呟きは、

夕暮れの部室に静かに沈んでいった。


一方、事務所の別フロア。


「ノアール、大丈夫かしら……」


マネージャーから妹たちの

無謀な営業活動を聞いたブランシュとショコラが、

心配そうに空を見上げていた。

読んでいただき、ありがとうございます。


魔法を封じ、

自分の足で手に入れた小さなステージ。


そこは、かつて彼女たちがいた「完璧な世界」とは違う、

泥臭くて、けれど希望に満ちた場所でした。

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