第43話 ルナの温もりと、眠る鋼鉄
初めて、ルナと一緒に眠る夜。
幸せな温もりに包まれていたはずの私は、屋敷の「秘密」を覗いてしまいました。
「今日は遅いから、ここまでにしましょう」
ルミエールの穏やかな声で、セッションは幕を閉じた。
「明日はいよいよレコーディングの準備ね! 楽しみ!」
ソレイユはまだ興奮が冷めない様子で笑っている。
ノアールは言葉にこそ出さなかったが、胸の奥に灯った充実感で満たされていた。
音楽室を出ようとしたとき、入り口でこちらを覗いていたルナと目が合った。
今だ、と思って手を伸ばすと、タイミングよく抱っこすることができた。
(……捕まえた)
ノアールはルナを腕に抱いたまま、自分の部屋へと連れて行く。
「ルナ、さっき見てた?
ソレイユちゃんの詩を元に歌を作ったんだよ。とっても楽しかった」
話しかけると、ルナは「ニャー」と短く鳴いた。
「今日は、私と一緒に寝てみる?」
ルナはきょとんとした顔をしていたが、部屋に入ると自分からノアールのベッドへ飛び乗った。
そして、猫用ベッドではなく、当たり前のように布団の中へと潜り込んでいく。
「ふふ、私の布団で寝たいんだね。じゃあ、一緒に寝よう」
やっと、ルナと一緒に眠れる。
隣で丸くなるルナは、驚くほど温かかった。
その体温を感じながら、ノアールは深い眠りに落ちていった。
夜中。
ふと、ノアールは目が覚めた。
隣ではルナが気持ちよさそうにスヤスヤと寝息を立てている。
ルナを起こさないようにそっと布団を抜け出し、ノアールはトイレへと向かった。
夜の屋敷は、暗く、静まり返っている。
まだ寝ぼけていたせいか、ノアールはトイレのドアだと思って、少し手前の扉を勢いよく開けてしまった。
「……っ、キャアアアアア!」
ノアールの悲鳴が、静かな屋敷に響き渡った。
そこはトイレではなく、従業員たちの控え室だった。
しかし、そこにあったのは「休息」ではなかった。
執事、運転手、メイドたち。
昼間、あんなにキビキビと動いていた屋敷の人々が、全員立ったまま、壁に並んで「充電」されていたのだ。
「どうしたの、ノアール?」
悲鳴を聞きつけたルミエールが、廊下に姿を現した。
ノアールは震える指先で、控え室の中を指さした。
「あ……そういえば、ノアールには説明してなかったわね」
ルミエールは事も無げに言った。
「うちの従業員、全員ロボットなのよ。驚かせてごめんなさいね」
「え……全員……?」
「ええ。まだ他にもロボットはいるけれど、明日また学校から帰ってきたら紹介するわ。今日はもう遅いから、寝ましょう」
部屋に戻ると、ルナはノアールの悲鳴にも気づかず、相変わらずスヤスヤと寝ていた。
ルナの体温に触れて、少しだけ落ち着きを取り戻す。
けれど、あの一列に並んだ無機質な姿が目に焼き付いて離れない。
ノアールはロボットたちの衝撃で、朝が来るまでなかなか眠りにつくことができなかった。
読んでいただき、ありがとうございます。
優しいルミエールの家で見つけた、無機質な秘密。
この屋敷には、まだまだノアールの知らないことがたくさんあるようです。




