第3話 光が眩しいほど、影は濃くなる
本日も読みに来てくださりありがとうございます。
少しずつ、ノアールの影が深まっていきます――。
暗い部屋の中。
カーテンの隙間から月の光が細く伸びている。
雲に少し隠れながら、それでもなお輝こうとしていた。
ノアールはベッドに顔を埋めたまま、声を殺して泣いた。
涙が枯れるまで。
喉が痛むまで。
胸の奥が、ひび割れるまで。
……どれくらい時間が経っただろう。
呼吸が途切れ途切れでも、ようやく落ち着いてきた頃。
暗闇の中、
ノアールは手探りでスマホを見つける。
光の小さな四角が、ぽつんと孤独を照らす。
無意識に、SNSを開いていた。
流れてくるのは
知らない誰かの笑顔と
楽しそうなショート動画。
(こんなの……どうでもいい)
指先は止まらず、無表情のままスクロールする。
……そして、不意に。
画面が切り替わる。
ショコラがステージに立っていた。
眩しいライトを浴びて、完璧に踊っていた。
ファンの歓声、次々と流れる称賛コメント。
《可愛すぎ!》《スタイル最強》《推せる!》
(……また、褒められてる)
胸が少し刺さって、ノアールは視線をそらそうとする。
だが、次に流れたのはブランシュだった。
氷の上で飛ぶ。
美しい旋回。
三回転、四回転。
歓声に包まれ、リンクの光を独り占めにして。
別の動画ではバレエ。
しなやかな動き。
そしてピアノの鍵盤の上を、白い指が軽やかに跳ねる。
《才能の塊!》《天使かと思った》
ノアールの指先が止まる。
(どうして……)
私は泣いてばかりで
なんにもできなくて
誰にも必要とされなくて
……それなのに。
姉たちはいつだって輝いてる。
「こんなに違うなんて……」
ぽつりと漏れた声。
その瞬間――窓の外から、雲が月をすべて隠した。
闇が部屋に落ちる。
次いで、
横殴りの大雨が叩きつけるように降り始めた。
まるで、
ノアールの涙の続きを
空が代わりに落としているみたいに。
(もう……嫌だ……)
その時だった。
ノアールの足元。
闇に浮かび上がる、くすんだ光の紋様。
見慣れたはずの魔法陣――
だけど、前よりずっと濃く、禍々しい。
じわり、と黒い靄が室内に溶け出していく。
(また……勝手に……)
ノアールは顔を覆った。
マイナスの感情を抱くたび、
闇は力を増していく。
それは、彼女自身の心を蝕みながら。
(どうして……どうして私ばっかり……)
返事はない。
あるのは、激しい雨音と、闇のざわめきだけ。
光が眩しいほど
影は濃くなる――
ノアールの影も、
静かに、しかし確実に
大きくなっていった。
※次話へつづく
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
静かに、確実に膨らんでいく闇。
それでも、まだ光は消えていません。
ノアールの物語をこれからも見守っていただけたら嬉しいです。




