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第31話 初めて行くルミエールの家

旅立ちは、

静かな部屋から始まることもある。


今日は、

ノアールが「離れる準備」をするお話です。

ノアールは、ルミエールと一緒に、自分の部屋に行った。


ずっと暮らしてきた、見慣れた小さな部屋。

扉を開けた瞬間、いつもの空気が胸に広がる。


「持っていくものは、必要最低限でいいわ」


ルミエールは、部屋を見回しながら言った。


「学校の制服と、教科書やノートは必要ね」


「それ以外は、こちらで用意するから」


ノアールは小さく頷き、本棚の前に立った。


並んだ教科書。

授業のメモがぎっしり詰まったノート。


一冊一冊、背表紙に指を触れながら、必要なものだけを選んでいく。


それから、棚の上に置いてあった写真立て。


お姉さんたちと一緒に写っている、

特別でも何でもない、けれど大切な一枚。


そっと、それも鞄に入れた。


最後に、ルナと、ルナのために買ったもの。


小さなベッド。

食器。

お気に入りのおもちゃ。


「……これだけで、大丈夫かな」


不安そうに言うと、ルミエールはやさしく微笑んだ。


「ええ。足りないものは、あとで揃えればいいの」


部屋を出る前、ノアールは少しだけ立ち止まった。


ずっと悲しいときも、

うれしいときも、一緒だったこの部屋。


ここを離れると思うと、

胸の奥が、きゅっとさみしくなる。


玄関では、ショコラとブランシュが待っていた。


ショコラが、優しい声で言った。


「準備、できた?」


「……うん」


ノアールは、短く答えた。


ブランシュは、ノアールの荷物を見て、静かに頷く。


「無理しないでね」


「何かあったら、すぐ連絡して」


ノアールは、強く頷いた。


車に乗り込むと、マンションがゆっくりと遠ざかっていく。


ルミエールの家は、思っていたよりも近かった。


けれど、門を見た瞬間、

ここがまったく違う場所だとわかる。


複雑な構造の門。

幾重にも重なった結界の気配。


(……すごい……)


玄関をくぐると、

執事やメイドたちがずらりと並んで迎えてくれた。


「ようこそお帰りなさいませ」


一斉に頭を下げるその姿に、ノアールは少し驚く。


……でも。


運転手のときと同じだ。


どこか、ほんの少しだけ

「人間じゃないかも?」という、不思議な感覚。


(……でも、怖くはない)


ルミエールは気にする様子もなく、二階へ案内した。


「ノアールの部屋、どんな部屋がいい?」


「……え?」


突然の質問に、ノアールは言葉に詰まる。


どんな部屋がいいかなんて、考えたことがなかった。


「……わからないです」


ルミエールは少し考えてから言った。


「じゃあ、とりあえず――マンションと同じ部屋にしましょうか」


「……え?」


意味がわからない。


次の瞬間。


ルミエールが、腕を大きく振った。


キラキラと光るものが、空中に舞い上がる。


「……っ?」


一瞬、何かが起きたのかもわからなかった。


「このドアを開けて」


言われるまま、ノアールはドアノブに手をかける。


扉を開けた瞬間――


「……え……?」


そこには、

今まで暮らしていた部屋と、ほとんど同じ空間が広がっていた。


配置も、色も、空気の感じも。


違うのは、窓と、少し広いベランダくらい。


「……同じ……」


思わず、声が漏れる。


「今日は、とりあえずこの部屋で休みましょう」


「慣れるまでは、無理しなくていいわ」


胸の奥が、じんわりと温かくなる。


「じゃあ、晩ご飯にしましょう」


ダイニングルームへ行くと、

ロボットが静かに料理を運んできた。


・白身魚の香草焼き

・彩り野菜のサラダ

・かぼちゃの煮物

・ほうれん草のおひたし

・具だくさんの味噌汁

・炊きたてのご飯


(……ちゃんとした、ご飯……)


ノアールは、しばらく料理を見つめてから、そっと席に着いた。


新しい家。

知らない場所。


それでも、

ここには、安心できる気配があった。

読んでいただき、ありがとうございます。


環境が大きく変わり、

これからどんな生活が待っているのでしょうか。

続きは、また物語の中で。

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