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第22話 便利すぎる世界

学校に来てから、

ノアールの周りでは変わったことばかりが起きている。


今度は、

“お昼”が――。

昼休み。

ノアールは売店の前で立ち止まった。


パンを買うつもりだった。

売店はいつも競争で、ノアールが手に取れるのは、だいたい最後まで残っているもの。


それでも、並ぶ時間は短い。

誰とも話さなくていい。


そのとき。


「ノアール」


振り向くと、ルミエールとソレイユがいた。


「学食、席を予約してあるの」

「一緒に食べよう」


ノアールは言葉に詰まった。

断りたい、というより……いつもの場所に戻りたい。


「……でも、私――」


「大丈夫」


ルミエールはそれだけ言って、スマホを軽く示した。


学食へ向かう途中で、違和感は増した。

ノアールの知っている学食と、少し違う。


カウンターの奥に、いつものおばちゃんたちがいない。

代わりに、無機質なロボットが静かに動いている。


列も、食券の機械もない。

生徒たちはスマホの画面をかざして、淡々と食事を受け取っていた。


(……私が休んでる間に?)


ルミエールが言う。


「ここで」


ノアールも同じように、画面のQRをかざす。

すぐに、注文したものが出てきた。


席も、もう取ってある。

三人で座る場所が、最初から用意されていた。


「便利でしょ」

ソレイユが笑う。


ノアールはうまく笑えない。

便利なのに、落ち着かない。


でも、周りの誰も驚いていない。

まるでこの学校は、最初からこうだったみたいに。


昼休みの後半は、図書室だった。

静かな机で、遅れた英語と数学をルミエールが教えてくれる。


「ここは、こう覚えるといい」


言葉が短いのに、頭にすっと入る。

ノアールはノートを埋めていく。


(……私、今日ずっと書けてる)


黒いシャープペンが、滑らかに動く。

本当に、ただの文房具なのに――


ノアールは、胸の奥で小さく疑った。


(これ、もしかして……お守り?)

気づけば、

ノアールはすっかり

ルミエールとソレイユのペースに巻き込まれていました。


次は、どんな「当たり前」が

書き換えられてしまうのでしょうか?

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