第14話 静かな準備
何気ない夜のひととき。
けれど、その静けさは、次へ進むための時間でもあった。
夜。
窓の外には、
三日月が浮かんでいる。
晩ごはんを終え、
学校の課題も片づけたあと。
リビングには、
一日の終わりの静けさが戻っていた。
テーブルの上には、
薄く光るノートパソコン。
ルミエールが画面を見つめ、
ソレイユはその向かいに腰かけている。
かすかに、
ミルクティーの、
ほのかに甘い香りが漂っていた。
夜に飲むには、
ちょうどいい温度と、
ちょうどいい優しさ。
「……もうそろそろ、ね」
ソレイユが静かに言う。
「ノアールが学校に戻る頃」
ルミエールは、
画面から目を離さずに頷いた。
「ええ。
入院している間に、
状況はだいたい見えてきた」
学校の空気。
人間関係。
ノアールが、
どれほど慎重に扱われるべき場所か。
「問題は――」
ソレイユが言葉を続ける。
「復学してから」
「一番負担が大きいのは、
“最初の日”」
ルミエールは、
ゆっくりとカップに手を伸ばす。
「急がせない」
「守るけれど、
前に引っぱらない」
「……待つのも、
私たちの役目ね」
ソレイユは、
小さく息を吐いた。
「難しいわね」
「ええ」
ルミエールは、
それだけ答えた。
暖炉のそばでは、
白い猫が丸くなって眠っている。
あたたかな光の中で、
尻尾だけが、
ゆっくりと動いた。
すべてが、
静かで、
平和だった。
今はまだ。
読んでいただきありがとうございます。
物語は、続いていきます。




