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第12話 白い猫と、黒い影

何気ない散歩の途中のお話です。


午後の空は、

やわらかな光に包まれていた。


ノアールは、

街の端の道を歩いている。


急ぐ理由はない。

ただ、歩いているだけだった。


その時。


白いものが、

視界の端を横切った。


「……あ」


足元を、

小さな白い猫が走り抜ける。


迷いなく、

人のそばへ。


ノアールは、

立ち止まる。


白い猫は、

すでに足元に来ていた。


青い目をした、

白くふさふさした洋猫だった。


逃げる様子はない。


「すみません」


少し離れたところから、

声がかかる。


「その猫……

捕まえてもらえますか?」


ノアールは、

一瞬だけ戸惑ってから、

しゃがみ込んだ。


「……大丈夫だよ」


無意識に、

そう声をかけていた。


白い猫は、

素直に抱き上げられる。


軽くて、

あたたかい。


人に慣れている。


「ありがとう」


近づいてきた女の子が、

静かに言った。


白い服。

淡い光のような雰囲気。


ノアールは、

白い猫を差し出す。


「……この子、

人懐っこいですね」


「ええ」


女の子は、

小さく笑った。


「人が好きで、

好奇心が強いんです」


白い猫は、

腕の中でおとなしくしている。


まるで、

最初から戻る場所を

知っていたみたいに。


「……ありがとうございました」


女の子は、

そう言ってから、

少し間を置いた。


「私は、

ルミエールといいます」


名前は、

静かだった。


「……ノアールです」


ノアールは、

それだけ答える。


余計な言葉は、

いらなかった。


ルミエールは、

一度だけ頷く。


「また、

どこかで」


それだけ言って、

白い猫を抱いたまま

歩き出した。


ノアールは、

その背中を見送る。


白い猫は、

振り返らない。


帰り道。


角を曲がったところで、

ノアールは足を止めた。


塀の上。


いつもの黒猫が、

そこにいた。


目が合う。


一瞬だけ。


黒猫は、

尻尾を揺らし、

何事もなかったように

視線を逸らす。


「……」


ノアールは、

何も言わない。


呼び止めもしない。


黒猫は、

気まぐれに立ち上がり、

音もなく姿を消した。


白い猫は、

もういない。


黒い影も、

残らない。


それでも。


ノアールは、

少しだけ

胸の奥が落ち着いたのを

感じていた。


理由は、

分からないまま。


空は、

穏やかだった。


※つづく

読んでいただきありがとうございます。

物語は、続いていきます。

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