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第11話 まぶしい人

よく晴れた日の、

小さな出会いのお話です。

その日は、

太陽がまぶしすぎるくらいの、

よく晴れた日だった。


窓から差し込む光に、

ノアールは少しだけ目を細める。


「……天気、いいね」


ショコラが、

何気ないふうに言った。


「気晴らしに、

少し散歩してきたら?」


ノアールは、

一瞬だけ迷ってから、

小さく頷いた。


久しぶりの外だった。


街は、

思っていたよりも明るい。


空は高く、

雲ひとつない。


ノアールは、

人の流れから少し外れて、

ゆっくり歩く。


まだ、

胸の奥は静かじゃない。


それでも、

外の空気は悪くなかった。


その少し先で。


ひときわ明るい気配が、

目に入った。


――まぶしい。


そう思ったのは、

太陽のせいだけじゃなかった。


「……あ」


小さな声。


前を歩いていた女の子が、

ほんの少し足をもつらせる。


バランスを崩し、

抱えていた荷物が、

ぱらぱらと地面に落ちた。


ノアールは、

反射的に足を止める。


(……落ちた)


一瞬、

そのまま通り過ぎようとして――

やめた。


しゃがみ込み、

無言で荷物を拾い始める。


紙。

小さな箱。

ノート。


ひとつずつ、

丁寧に。


「ごめんね」


明るい声が、

すぐそばで聞こえた。


「ありがとう。

助かる」


ノアールは、

顔を上げる。


そこにいたのは、

太陽みたいな人だった。


オレンジ色の髪が、

光を受けてきらめく。


笑顔は自然で、

隠す影がない。


(……まぶしい)


ノアールは、

心の中で思った。


自分とは、

正反対の場所にいる人。


「……これで、

全部だと思います」


ノアールは、

拾ったものを差し出す。


「ありがとう」


女の子は、

にっこり笑った。


「私、ソレイユ」


名前まで、

明るかった。


「……ノアールです」


小さな声。


ソレイユは、

その名前を一度だけ、

大事そうに口にする。


「ノアール」


それだけだった。


連絡先も、

約束もない。


ノアールは、

軽く会釈して、

その場を離れる。


歩き出してから、

少しだけ胸が早い。


理由は、

分からない。


ただ――


振り返ると、

そこにはまだ、

太陽みたいな背中があった。


(……不思議な人)


ノアールは、

そう思いながら、

前を向く。


空は、

相変わらずまぶしい。


※つづく

読んでいただきありがとうございます。

物語は、続いていきます。

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