第10話 これからの任務
夜が明ける前のお話です。
夜明けには、
まだ少し早い時間。
街の灯りを見下ろす高い場所で、
二つの気配が並んでいた。
病院は、
もう視界には入らない。
ルミエールが、
静かに口を開く。
「地球に着いてすぐの任務、
お疲れさま」
ソレイユは、
わずかに肩をすくめた。
「ノアールの状態が、
油断できなかったから」
「大至急だったわ」
ルミエールは、
欠けた月を見上げたまま続ける。
「……あと少し遅れていたら、
本当にまずかった」
「助けてくれて、
ありがとう」
それは、
形式的な礼ではなかった。
「今回の任務で、
とりあえず一時的には
食い止めることはできた」
ルミエールは言う。
「でも――
まだ油断はできない」
ソレイユの視線が、
静かな空へ向く。
闇の雲も、
魔法陣も、
もうそこにはない。
それでも。
「また、
いつ出現するか分からない」
ルミエールの声は、
落ち着いていた。
「鍵は、
ノアールの心よ」
ソレイユが、
小さく頷く。
「ノアールの心が
安定しなければ、
また同じことが起きる」
「魔法だけじゃ、
足りない」
ルミエールは、
静かに言った。
「だから――
私たちが、
直接接近する」
「お友達になって、
そばにいる」
「魔法も使うけど、
心のケアもする」
一瞬、
夜の風が流れる。
街は、
何も知らないまま続いている。
「それが、
次の任務ね」
ソレイユが言う。
「ええ」
ルミエールは、
欠けた月から目を離さない。
「今度は、
影からじゃない」
二人の足元で、
静かな光が集まり始める。
離脱の準備。
派手なものではない。
人の記憶にも、
記録にも、
残らない。
「戻る道は、
もう作った」
「次は――
見守る番よ」
次の瞬間、
そこにはもう、
誰もいなかった。
空は、
変わらず静かだった。
欠けた月だけが、
これからの時間を
見下ろしている。
※つづく
読んでいただきありがとうございます。
物語は、続いていきます。




