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第103話 区切り

終わりは、急に来るわけではない。


ひとつの役目が終わり、

その先のことを決めなければならない時が来る。


事務所の社長室。


ノアール、ソレイユ、ルミエールの三人は並んで座っていた。


窓の外には、やわらかな春の光が差している。


部屋の中は静かだった。


社長は机の上の資料を閉じる。


それから、三人を順に見た。


「まず報告だ」


少し間。


「借金は完済した」


その一言が、静かに落ちる。


ノアールは黙って聞いていた。


ソレイユも何も言わない。


ルミエールは静かに座っている。


社長は続けた。


「これで、金のことでノアールを縛る理由はなくなった」


ノアールは少しだけ視線を落とす。


ずっと背負ってきたもの。


終わってほしかったもの。


そのはずなのに、すぐには実感にならなかった。


社長が言う。


「だからノアール」


「これからどうするかは、お前が決めろ」


少し間。


「どこで暮らすか」


「どんな仕事を受けるか」


「誰と生きるか」


「もう自分で決めていい」


ノアールはゆっくりとうなずいた。


「……はい」


社長はそこで言葉を切る。


「ただし」


部屋の空気が少し変わる。


「引き受けた仕事は最後までやれ」


「途中で投げるな」


短い言葉だった。


でも重かった。


ノアールはもう一度うなずく。


「はい」


社長は視線を横に移した。


「ソレイユもルミエールも同じだ」


二人は黙って聞いている。


「お前たちは、もうそれぞれ大きい仕事を受けている」


「ソレイユは学園ドラマのヒロインだ」


「子ども向けの仕事もある」


「ルミエールは企業案件とイベントだ」


社長は淡々と言う。


「今すぐ自由になるわけじゃない」


「責任を持って最後までやれ」


ソレイユは小さくうなずいた。


「はい」


ルミエールも静かに言う。


「分かりました」


社長は続ける。


「ブランシュは結婚の準備に入る」


「向こうの話も、もう正式に進んでいる」


少し間。


「ショコラは学業に専念するそうだ」


ソレイユが小さく息を吐く。


「なんか、みんな進んでいくね」


社長は否定しなかった。


「そういう時期だ」


少しの沈黙が落ちる。


部屋の中には、区切りの空気が静かに広がっていた。


それから社長が言った。


「それとな」


三人が自然に顔を上げる。


「キャットスターは、もともと夏から秋にかけてドームツアーを予定していた」


「会場はもう押さえてある」


少し間。


「それを卒業ツアーに変えるつもりだ」


その言葉に、空気が少し変わった。


ノアールは黙る。


ソレイユも言葉を失う。


ルミエールだけが静かに社長を見ていた。


社長は続ける。


「ブランシュの結婚の前に、きちんと区切りをつける」


「最後のツアーとしてな」


さらに資料を指先で軽く叩く。


「ルミソラも、この前の前座で評判が良かった」


ソレイユが少しだけ顔を上げる。


「その流れで、小ホール公演も予定に入っている」


「まずはそっちをきちんとやれ」


少し間。


「その上で、卒業ツアーの前座も引き続き任せたい」


社長の声は淡々としていた。


だが、そこには期待もあった。


「続けるなら、お前たちを次の時代を支える存在として育てる」


「辞めるなら早めに言え」


「中途半端が一番困る」


部屋の中が静かになる。


ノアールはしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。


「最後までやります」


短く、それだけ言った。


社長はうなずく。


「そうしろ」


ソレイユも小さく笑う。


「前座、またやるなら」


「今度はもっと盛り上げたいな」


社長は小さくうなずいた。


「期待している」


ルミエールは何も言わない。


ただ静かに聞いていた。


でもその目は、何かを確かめるようでもあった。


社長室を出たあと。


廊下を三人で歩く。


さっきまでの話が、まだ胸の中に残っている。


ソレイユがぽつりと言う。


「借金、終わったんだね」


ノアールはうなずく。


「うん」


少し間。


ソレイユは笑う。


「よかったじゃん」


明るい声だった。


でもどこか、少しだけ遠かった。


ノアールはその声を聞きながら、何も言わない。


ルミエールが静かに言う。


「本当に」


「区切りの時なんだね」


誰もすぐには答えなかった。


ただ、三人とも分かっていた。


ここから先は、今までと同じではいられない。

借金完済。


ブランシュの結婚準備。

ショコラの学業。

ノアールの自由。


それぞれの未来が、少しずつ形になってきました。


そして、もともと予定されていたキャットスターのドームツアーは卒業ツアーへ。

ルミソラもまた、小ホール公演と前座という新しい流れの中に入っていきます。


ここから、少しずつ空気が変わっていきます。

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