第101話 桜の試写会
春の夜。
同じ場所にいても、
立場はそれぞれ違っていた。
映画館の前には、赤いカーペットが敷かれていた。
春の夜。
入口には桜の装飾が並び、ライトに照らされた花びらがゆっくりと舞っている。
桜をテーマにした映画の試写会。
主演は、ノアールとレン。
フラッシュが一斉に光る。
「ノアールさん!」
「レンさん!」
二人がレッドカーペットに立つ。
ノアールは黒いドレス。
レンは落ち着いたスーツ姿。
レンが自然にノアールの手を取る。
それだけで、会場の空気が変わった。
記者の声が飛ぶ。
「お二人はお付き合いされているんですよね?」
少し間。
レンは穏やかに笑った。
「大切な人です」
フラッシュが一斉に強くなる。
ざわめきが広がる。
記者が続ける。
「今日は凛さんと海斗さんも来ていますよね?」
「四人は子役の頃から仲が良いと聞いています」
ノアールが少し笑う。
「はい」
「ずっと一緒です」
記者が振り向く。
「凛さん!海斗さん!」
会場の後方にいた二人にカメラが向く。
今日は出演者ではなく、観客として来ていた。
凛は静かに微笑み、海斗も軽く手を上げる。
記者が言う。
「こちらも理想のカップルですね」
周囲がざわめく。
「この会場に二組か」
「すごいな」
フラッシュは止まらない。
その光景はまるで、
芸能界の中心がこの場所に集まっているようだった。
上映が終わる。
館内の明かりがゆっくりと戻る。
人の流れがロビーへと向かう。
凛が言う。
「良かったね」
海斗がうなずく。
「うん」
「ノアール、すごかった」
凛は少し笑う。
「レンも」
少し間。
凛が小さく言う。
「私たちも」
「負けてられないね」
海斗は軽く笑った。
「そうだな」
少し離れた場所。
ソレイユとルミエールが立っている。
ソレイユはロビーのガラス越しに見える桜の装飾を見ていた。
「いいな」
小さく言う。
「好きな人とお芝居できて」
少し笑う。
「みんなに祝福されて」
「堂々と一緒にいられて」
それから、少し肩をすくめる。
「いいなあ」
少し沈黙。
ルミエールはスクリーンに映っていた桜の残像を見ていた。
それから静かに言う。
「綺麗だったね」
ソレイユが振り向く。
「映画?」
ルミエールは小さくうなずく。
「うん」
「ノアール」
そのとき。
ロビーの奥から人の流れが変わる。
ノアールとレンが出てきた。
まだフラッシュの余韻が残っている。
ノアールが二人に気づく。
「見てた?」
ソレイユが笑う。
「すごかった」
ノアールは少し照れたように笑った。
レンも軽くうなずく。
四人が自然に並ぶ。
子供の頃から変わらない距離。
でも、立場は少しずつ変わっていた。
桜の装飾の花びらが、ゆっくりと舞い落ちる。
春の夜。
その中心に、二組のカップルがいた。
桜の映画試写会。
ノアールとレン。
凛と海斗。
二組のカップルは、同じ場所でそれぞれの立場を見せていました。
一方、ソレイユは清純派として恋愛禁止。
同じ景色を見ながらも、
感じているものは少し違います。




