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第9話 戻る場所

静かな夜の中のお話です。


白い光の中で、

ノアールは目を覚ました。


最初に視界に入ったのは、

天井でも、

機械でもなかった。


ブランシュだった。


白い光の中に立ち、

静かにこちらを見ている。


落ち着いた表情の奥で、

目だけが、

ほんの少し揺れていた。


――ああ、戻ってきたんだ。


そう思った、その時。


視界の端に、

やわらかな気配が差し込む。


ベッドのそば。

少し甘い香りのする、

あたたかな雰囲気。


ショコラが、

ノアールの手を握っていた。


祈るように、

ぎゅっと。


「……ノアール……?」


感情が溢れそうな声。


その声を聞いた瞬間、

ノアールの胸の奥が、

静かにほどけていった。


「……ごめん」


ノアールは、

かすれた声で言った。


「心配、かけた……」


ショコラは、

すぐに首を振る。


「いいの」


「もう、いいのよ」


ブランシュも、

一歩近づき、

小さく頷いた。


「ノアールが、

戻ってきてくれただけでいい」


その言葉に、

ノアールの目から、

涙がこぼれた。


「ねえ……」


少し間を置いて、

ノアールは言う。


「不思議な夢を、

見てたの」


二人は、

黙って耳を傾ける。


夢の中で、

ノアールは笑っていた。


ステージの上で、

姉たちと並んで。


昔みたいに、

何も考えず、

ただ歌って。


光が降って、

拍手が響く。


「……楽しかった」


ノアールは、

小さく笑った。


「それから……」


声が、

少し震える。


「知らない、

すごく綺麗な世界に

行ったの」


空も、

地面も、

色も。


この世界にはない、

やさしい場所。


「こっちにおいで、

って……」


誰かが、

呼んでいた。


「行こうか、

迷ったんだけど……」


ノアールは、

ショコラを見る。


「そのとき」


「金色と、

青い光が見えたの」


あたたかくて、

まぶしくなくて。


「それで……」


「お姉ちゃんたちの声が、

聞こえた」


「だから……

戻ってきた」


ノアールは、

少し照れたように笑う。


「昔みたいに、

輝きたかった」


「ちゃんと、

頑張りたかったの」


「でも……

うまくできなくて……」


ショコラは、

そっとノアールの手を包む。


「いいの」


「無理しなくていい」


「輝けなくても、

頑張れなくても」


「ノアールは、

ここにいていい」


ブランシュも、

静かに言った。


「……一緒にいる」


窓の外には、

欠けた月が浮かんでいた。


それでも、

夜はもう、

暗すぎなかった。


ノアールは、

その月を見ながら、

ゆっくり目を閉じる。


戻る場所は、

ちゃんと、

ここにあった。


※つづく

読んでいただきありがとうございます。

物語は、続いていきます。


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