始まり
僕は、ずっと消えたいと思っていた。
この世界に実在する限り責任と未来への漠然とした恐怖が襲い続ける。
「いっそのことこの世界が創作の世界だったらいいのにな」
僕は一翔、明日二十歳になる一人の専門学生。
しかし専門学校生活を重ねるたびに人と話すのが怖くなって今では引きこもり生活中
(はぁ、二十歳になるけど二十歳らしいことは何もできないな。年齢に縛られたくない生き方をしてるとはいえ、実際に年齢が上がっていくのは事実。周りからの僕に対する視線は大人に向けられる視線、創作の世界なら歳を取らずに成長できるのに.....)
僕は大人になることに対する漠然とした不安が心の中をグルグルしていた。
布団の横には僕が幼い時から大切にしている白熊のぬいぐるみ、シロがいる。
首元のリボンが特徴の、ずんぐりむっくりとしたぬいぐるみだ。
不安を考えながら僕はシロを抱いた。
シロを抱くと、なぜか安心感を覚える。それと同時に自分の子供らしさに対して自己嫌悪を少し覚えた
(こんな歳になって、ぬいぐるみを抱いて寝るなんてガキくさいよな......)
そんなことを考えていたらいつの間にか僕は寝落ちしていた。
「かーずと、かずとってば!」
どこかから女性の声が聞こえる。
「目を開けて、かずと!」
(なんだ、夢か?夢なのか?僕に女友達も彼女もいないしこれは夢に違いない!)
困惑する僕は恐る恐る目を開ける
目の前には小柄な白髪の女の子がいた。
(中学生くらいか...?)
気のせいかもしれないが、どこか安心感を覚える匂いがする。
「かずと!やっと目を開けてくれた!」
「ど、どちら様ですか!?」
僕は白髪の少女に動揺しながら問いかける。
「え~、こんなに一緒にいたのに私のこと分からないの~??」
身に覚えがない。僕は彼女はおろか異性とまともに交流したことがない。
「ほ、本当に誰ですか........?」
「まあ姿も変わったし分からないのも無理もないか、私はシロ!いつもかずとの隣で一緒に寝てた白熊のぬいぐるみのシロ!」
「へ??」
動揺が加速する僕、真夏の晴天の太陽を思い出すまぶしい笑顔で僕を見つけるシロをの名乗る少女。
意識がフェードアウトしていくが彼女の笑顔は脳裏に焼き付いた.........
目覚めた。
(一体何だったんだあの夢は....シロが人間に?どういうことだってばよ)
しかし眠気が吹き飛ぶほどの出来事が起こる。布団の中に絶対にあるはずのない何かがある(しかも温かい)
僕は布団が吹っ飛んだと言うギャグはこんな時のためにあるんだなというくらいの勢いで布団めくる。
スーー....スーーー....
布団の中では昨日夢で会ったシロを名乗る少女が寝ていた。しかし僕は今日で二十歳、脳内でパトカーのサイレンが鳴り響く!
「まずい!隠れて!!」
僕の大声でシロを名乗る少女は飛び起きた。
「なになになに!?火事!?地震!?それともカメムシ!?」
僕は急いで少女をクローゼットに隠した。
「かずと!?一体何事!?!?」
過干渉な母親が勢いよく部屋に突撃してくる。
「なにもないなにもない!!起きたら鼻にカメムシがくっついてただけ!!」
クソ適当な理由を付けて母親を追い出した。
僕はこれから一体どうなってしまうのだろうか.......