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第8話:到着!城塞都市ポンズ!魔物の噂とまさかの罠!

高く厚く広がる灰色の城壁。

城塞都市ポンズ。

魔王城への通過地点の一つに過ぎない、でも。


「ついに着きました!私たちの第一歩が!ここに始まったのです!!」


「うるさ……」


門をくぐると、私たちの村――レモン村とは、明らかに違う。


活気、光、音、匂い。


「うわぁ、すっごいですね……!!!」


屋台が並び、酒場からは陽気な笑い声。

見たこともない服を着た人、珍しい果物や香辛料の香り、そしてきらびやかな看板が立ち並ぶ通り。

これが城塞都市――!!!


「フッ、久しぶりだな。俺の聖地……!!」


「人が多すぎる……絶望……ゴミ……空気が汚れる……みんな消えればいいのに……」


皆さんもテンションが上がっているようですよ!


「この街は魔王城への通過地点にすぎません……ですが!きっと、この街にも困っている人がいるはずです!魔王の影響は強まってきているんですからね!!よし、がんばりましょう!!!まずは聞き込みから!!!」


私は気合を入れて手を叩く。


「……あのさあ……」


ん?何ですか、ユートさん。


「もう歩きたくねえんだけど」


「ええっ!?せっかく着いたんですよ、張り切っていかないと!!」


「無理……動けない……いや、寝れば動ける。だから寝る」


「……。仕方ありませんね。わかりました!あそこのホテルに行きましょう!見てください、最高級のフワルン羊毛使用ですって!ここで寝ればユートさんも回復しますよね!!」


私は大きな通りの突き当りにある大きな建物を指さす。


〈ポンズグランドホテル雅〉


白亜の壁に金色の装飾。

屋根には王家の紋章も掲げられている。「王様のお墨付き」ってことでしょうか。


「まあ……いいんじゃね」

「……ええ……こんなところ……無理……」

「どこでもいいぜ」


ふふん!決定です!

噴水を中央に称え色とりどりの花を両脇に携える素敵な庭園を抜け、大理石の扉を開ける。


ボーイさんに運ばれていくリュックを見送りながらチェックインを済ませる。

ここに泊まれば皆も元気ばっちりです!!


「レリィさん……本当にこんなところ……大丈夫なんですか……」


「うん、大丈夫ですよ!ふふ、さっきお金をもらったおかげでちょっと余裕があるので……ここで英気を養うのです!!」


「……」


さて!では気を取り直して!街の人に困ったことが無いか、調査開始です!!!


***


「やあお嬢ちゃん!元気だね、串カツ食べる?」


ホテルの前で屋台を出していたおじさんに、声を掛けられる。


「こんにちは!元気が一番ですから!そうですね、串カツもいただきます!」


私はお金を払って串カツを受け取る。

ジューシーでおいしい!衣は揚げたてでちょっと甘くて、スパイシーなソースもお肉によくあってる!

皆さんも来ればよかったのに。

ユートさんとマチルさんはホテルのお部屋だし(たぶん)、兄さんはどっかいったし……。

まあ、明日にはきっとやる気もみなぎってくるはず!

今日はとりあえず、私だけで聞き込みして情報を集めましょう!


「おじさん!何か最近、困ったこととかありませんか?世界が魔王の脅威にさらされている今――世の中は大変なことになりつつあると、私思うんです!」


「魔王の脅威……?はは、うーん、そうだなあ……。ああ、そういえば僕が困っているわけじゃないんだが……。この都市の裏に森があるだろ?あそこの森の魔物が最近増えているらしいって聞いたなあ」


「魔物、ですか――!」


魔物。間違いない、魔王の影響だ!

これは打倒魔王パーティ、出動の時ですよ!


「ありがとうございます、おじさん!その困りごと、私たちが必ず解決しますね!!!」


その後も聞き込みを進めていきます。


「あら、あなた王様の『勇者ガチャ』を引いたの?」

「へえ、魔王討伐を目指してるんだ、すごいねえ」

「そういえばどこかの村でドラゴンが倒されたっていう噂を聞いたわ、本当だったのね」


ふふふ、そうでしょうそうでしょう。私たちはすごいんです!


町の人たちから話を聞き続けること2時間半、どうやらポンズの裏の森――通称「ポンポン森」で魔物が増えているということは、間違いなさそうです。

私は建物の影からちらちら見える夕日を見上げました。


「私たちが、ビシッと解決します!!!」


***


「……!?」


まさか。そんな、うそだ、まさか。

夢?ほっぺをつねってみる。痛い。夢じゃない。


「な、なんで……?……うそ、なんで!?どういうことですか!?」


「……レリィさん……?朝から……何なんですか……」


後ろから、マチルの声。ベッドの中から覗いている。


「マチル……あの、あの、お金が……」


「足りない、ですか……?」


「はい……」


「……知りませんよ、わたし……。昨日の夜ごはん……二人で行ったあの店……悪質、でしたよね。やっぱり払ったのが間違いだったんじゃ……」


「で、でも!たしかにあの店ちょっと高かったですけど!それでも全然余裕の計算でした!このホテルも高いけど、全然払える計算でした!!!」


「じゃあ……盗まれたんじゃないですか……いるじゃないですか……盗みそうなヤツ……私たちの中にも」


え!?マチル!?何を言ってるんですか!?


「あなたのお兄さん……ドルトさん……、だと思いますよ……私は昨日、夜ご飯の時以外ずっとここにいたので……その時に入ってきたんじゃないですか……」


「そ、そんな……!まさか兄さんがそんなこと……!!!」


「全然『まさか』じゃないです……」


いや、兄さんがそんなことするはずない!

でも確かに、何かを知っている可能性はある。

ユートさんと兄さんの部屋に行き、ドアを叩く。


「ユートさん!兄さん!起きてください!!!大変です、大問題発生です!!!」


ドアを開けたのは、兄さん。


「あ、ああ、レリィ。おはよう。うん。どうしたんだ、問題って」


ユートさんは……まだベッドの中。そういえば、兄さんが朝から起きてるなんて珍しい。


「ドルトさん……昨日は……勝てましたか」


マチルが私の後ろから呟く。


「え!?昨日!?昨日は……ええと……勝てたとは言えないけど……でも絶対あと1000シルあったら当たってたから実質負けてないというか……」


「勝てるまでやったら勝ち理論で引き際が分からなくなったんだろ……典型的なバカ」


奥のベッドの中から、ユートさんの声が聞こえた。


「……で、お金……とったんですか……」


後ろから、マチルの声。


「それは……」


ハッキリしない兄さん。

嘘、ですよね……?


「ごめんレリィ、皆!!!でもさあ、絶対勝てるところだったんだよ!ちょっと足りなかっただけで!!なあ!!!もし今日行ったら絶対取り返せるって!!!」


「ゴミじゃん……」


「カス……終わってる……」


「……ごめんなさい……」


し、信じられない……。嘘ですよね、兄さん……?

声も出ませんでした。


その時。


「あっれ~?レリィじゃん!!なになに、どしたの???」


後ろから、やけに明るい、うっすら聞き覚えのある声。

振り向くと、金髪をポニーテールで盛りに盛った派手なミニスカートの女。


「ハニーさん……!」


「わ~♡!久しぶりだねレリィ~♡!!!え~?なんか困ってる風じゃん、ん~??」


そう言うと、ハニーさんは観察しているかのように私や皆を見る。


「あ!わかった!バカな兄貴がお金溶かしちゃってホテル代払えなかったんだ!ふっふ~ん、でしょ?ドルト?」


「あー……うん」


認めた。兄さんが認めた。


「じゃあさ!あたし、レリィに特別なプレゼント、しちゃおうかな!!」


ハニーさんが私の方を見てニッと笑う。


――ハニー・グリズリー。

私たちの出身レモン村の大きいお家の一人娘で――。


「衝撃の低金利3%で、貸したげる♡!お・か・ね♡」


――金貸し。


お読みいただきありがとうございました!


次回→第9話:ポンポン森に潜む魔物掃討作戦!お金のためじゃありません!正義のためなんです!

6月1日(日)夕方更新!

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