第19話:再会は囲炉裏のそばで♡ 魔物調査の助っ人ですか!?
朝露の匂いで、目が覚める。
鳥の声がチチチと近くで響き、差し込む日差しが木枠の窓から部屋を優しく照らす。
「ふぁ……おはようございますっ!」
私は毛布をはねのけ、勢いよく起き上がった。
昨日までの野宿と比べて、格段にぐっすり眠れた。
体が軽い!今日も一日、頑張る準備は万端です!
「皆さん、起きてください!調査日和ですよーっ!」
勢いよく掛け声をかける。
が、返ってきたのは――。
「……無理……」
「……うぅ……」
「もうちょっと……」
うめき声だけ。
ピクリともしないユートさん、目をぎゅっとつむるマチル、布団の中に潜り込む兄さん。
まったく、仕方ありませんね!
私は気合いを入れて皆を引っ張り起こし、なんとか全員を居間――囲炉裏のある部屋へと引きずる。
居間に入ると、だしの香りがふわりと鼻に届く。炊かれたご飯の湯気、焼き魚のかすかな煙。
「フイさん?おはようございます!昨晩はありがとうございました!よく眠れました!もしかして、このご飯って――」
私はフイさんに声をかける。
しかし、湯気の後ろにいたのは。
フイさんじゃない。
湯呑をすする、金髪の女性。
見覚えがある。この人は――。
「――ハニー、さん」
私たちのレモン村の、金貸し。
ポンズでルクシマルの噂を教えてくれた人。
「え、ハニーさん?なんでここに!?」
私の驚愕の声に、ハニーさんは空になった湯呑をくるくると回しながら、にっこりと笑う。
「え?うわ~!レリィじゃん!久しぶりぃ♡!えへっ、とうとうあたしに興味を持ってくれたの?嬉し~♡!」
「いや、違っ……!じゃなくて、なんでここに!?どういうことですか!?」
ハニーさんは笑ったまま、軽く頬杖をつく。
「まあ……このおばあちゃんが、山に“宝物”を隠してるから……それだけ」
「宝物……?」
何でしょう、それは。
「……そ。あとは、おばあちゃんのごはん、おいしいし、村の人が置いてったお酒もあるし♡」
ハニーさんは一升瓶に頬ずりをし、そこからトクトクと湯呑にお酒を注ぐ。
「あ、朝からそんなに……!」
すると、部屋の端の椅子に座るフイさんがにこやかに言った。
「この人、毎日ご飯をくれたりしてねえ。来てくれてから、いろいろと助かってるんだよ」
ハニーさんがお酒をあおる。
「あたし、おばあちゃんと仲良しなんだ♡ ほら、見て。このお魚、あたしの持ち込みです♡」
くすくすと笑うハニーさん。
なるほど、フイさんとハニーさんは仲良しなんですね。
――なら。
私は前に出て、真剣な目で彼女を見据える。
「ハニーさん……。一緒に、魔物――キャヴィを倒しましょう!フイさんを、守るんです!」
「やだ♡」
即答だった。
「どうしてですか!」
「ん~……。お金、払ってくれるのかな?1日50万シル♡」
「たっか!」
思わず叫ぶ。
後ろで半分寝ていたユートさんたちが、口を出す。
「当然だな……めんどくせえもん、魔物倒すなんて……。俺もやりたくないし」
「やりたくないだけですよ、ハニーさんは」
「いいじゃん、コイツのことは。さっさと次の街行こうぜ」
もうっ!人手が増えたほうが効率良いじゃないですか!
「あはっ、そういうことみたいだし、レリィたちも今日は一緒にダラダラしない?」
ハニーさんは茶碗を置いて、にっこり微笑む。
「ダメです!!!」
私はぴしっと指を立てる。
「ハニーさんが来ないのはわかりました。ならば私たちでやるだけ!行きましょう、皆さん!打倒魔王パーティ、出動です!」
「ダル……」
「さっすがレリィ、そういうところ大好き♡ でも、別にキャヴィは倒さなくてもよくない?こんな田舎の魔物なんてさ♡」
ハニーさんは、じぃっと私の目を見た。
な、なんですかその目は!
「私たちは、負けないんです!」
私は胸を張って、その視線をはねのける。
そして、皆を振り返る。
「行きましょう、皆さん!出発です!調査開始です!善は急げ!!!」
「え……朝飯は?」
「こんな朝から行くのかよ……」
「動きたくない……終わり」
「フイさん!これ、もらっていきますね!」
私は囲炉裏のわきに用意してあった、竹皮に包まれた人数分のおにぎりを拾う。
フイさんは、こっくりとうなずいた。
ドアを開ける。
うん、今日も朝日が気持ちいい。
朝露が私たちを応援している。
息を吸う。爽やかな空気が胸を満たす。
「さあ皆さん――調査、開始です!!!」
次回→第20話:オロシ村の脅威!魔物キャヴィとレリィの決意!
6月27日(金)夕方更新!




