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第12話:爆釣注意!?晴れた日の釣りはやっぱり最高です!……よね?

青空。雲ひとつない快晴。


「いや~昨日までちょっと天気が悪かったですけど、すっかりいい天気ですね!!ルクシマルを倒したおかげでしょうか!!」


「関係ねえだろ……ちょっと暑いし」


「天気まで私たちを祝福しているなんて、幸先いいですね!」


「聞いてないなコイツ……」


ポンズを出て、魔王城へと歩みを進める私たち。魔王城まではまだいくつもの町を越える必要がありますが、着実に近づいていますよ!

ですが、次の村――オロシ村までは、まだちょっとかかりそうです。


「はいっ!というわけで、今日はここまでにしましょう!」


私は勢いよく指をさす。指先には、小さな池とそれを見下ろす小高い丘。

草は柔らかく、風も心地よく、それに――夕日までにはまだ時間がある。


「ここで釣った魚を強の夕食にしましょう!ちょうどいい池がありますよ!!!」


「え……ダルいんだけど……」


ユートさんは、あいかわらずのけだるげな声。でも、池の近くに置いてあった竿を渡したら受け取ってくれました。

まんざらでもないってことですね!


「日光……無理……だし……そんなところに野ざらしの竿……触りたくない……」


マチルさんは、すでにフードを深くかぶって木陰にしゃがんでいます。

草むらの中で何かぶつぶつ言ってましたが、たまにはお日様も気持ちいいですよ!って言ったらついてきてくれました!


「働きたくねえ……って言っても聞かねえだろ、お前。いや、やるってば、やるよ!」


兄さんは何か言ってますが、竿を拾いました。


全員やる気ばっちりですね!

そんな感じで打倒魔王パーティは本日、釣り大会です!


***


「やったああああ!!釣れました!!!」


私がグイっと引き上げた糸の先には、ピチピチ跳ねる銀色の魚。

小ぶりだけど、見るからに新鮮でおいしそう!


「うっわ……何だよその魚。この世界の魚ってこんななの……?」


「……いいえ……変な魚……でも、何かで見たような……」


ユートさんとマチルがのぞきこむ。

まあ、確かにちょっと独特だしトゲトゲしてるけど、目玉模様がチャーミングですよ!


「小さいのが続いてるな……そろそろ流れが来るってことか……?」


うんうん、兄さんもちゃんと釣りしてます。

今日は良い夕飯が食べられそうですね!


それにしても、釣りなんてひさしぶりにしましたが……。


「楽しいです……!」


私は竿を両手でぎゅっと構え、腰を低くして水面を見つめる。

いつの間にか、風が夕暮れの匂いを運んできた。釣り日和だ。


「おっしゃ!きたきたきた!!!また釣れたぁッ!!!」


兄さんが地面に置いた入れ物に5匹目の銀色の魚を放り込む。


「ほら見ろ!流れ着てるって!このまま回せばもっと来る、マジで!うおおお!!熱い!!!」


「すごい……魚が……命を燃やして跳ねてる……ッ!」


マチルは兄さんの釣った魚を並べて、一匹一匹の目をじっと見つめていた。


「これ……飾りましょう……命の最後の輝きです……フフフフフ……ッ!」


「お前らほんっとバカだな……」


ユートさんは呆れたように言いながらも、ちゃっかり餌を付けなおしています。


むっ!私の竿……再びビビビっときましたよ!!!


「来ましたッ!!!やった、また釣れました!!!」


「レリィさん……!連続ヒット、じゃないですか……!」


銀色の鱗が日光を反射する。

私は釣りの天才に違いありません!


「やるしかないです!」


私は竿をもう1本拾う。


「両手で釣れば効率二倍!最強の釣り師レリィの真価、お見せしましょう!」


「レリィさん……!」


「うおおおおお!俺も負けてらんねえぜ!」


「どう見てもバカ……」


私は釣り糸を遠くへ投げる。

二つの餌がぽちゃりと池に落ちる。

これは……来る予感!


その時。


ピン……と、わずかに糸が張る。


「きたああああああああああッッ!!!!」


次の瞬間――私は、空を飛んでいた。

いや、正確には――池の方へと、飛ばされていた。


「え、え、えええええええええええええええっ!?!?!?」


二つの竿が、信じられないほどの力で引っ張られる。

腕が一瞬引きちぎれそうになり、その後、ふわりと水面へ――。


「レ、レリィさんっ!!」


マチルの大声が聞こえる。


私は――。


「流れを越えし水の精霊よ、優しき揺らぎに包まれゆく我らを守りたまえ――”ハイドロ・シェル”ッ!」


バシャアアアアアアアアアアッッッ!!!!!


私は足を水面に付け、魚に引っ張られたまま水面を滑走する!!


「っあああああああああああッッ!!!」


すごい風!すごい水しぶき!!

ていうか魚でっか!!私が二人並んだくらいの大きさ!


で、でも――これ気持ちいい!!!


「レリィィィッ!!!」


兄さんが叫ぶ。

次の瞬間、兄さんの槍がうなりを上げて空を裂いた。

そしてズドンと、私を引っ張っている魚の片方に刺さる!


「おいバカっ!飛び込んだって魚に食われるだけだろ!」


ユートさんが湖岸で何か言ってる。

二本の糸は絡み合い、魚はなおも私を引っ張っていく。


私は、沈むまいと必死に竿を掴み足元の魔法を制御する。

ぐんぐんユートさんたちが小さくなっていく。


そして、目の前に見えたのは。


――木。

この池、森に続いてる。

これ、ぶつかったら――!


その時。


魚が、ぴたりと止まって。

違う!

めちゃめちゃ後ろに引っ張られてる!!!


そのままどんどん後ろ側へ、私は水面を滑走していきます!


「ああああああああああああっっっ!!!」


はっ!ちょうどよく木!!!!

ちょうど私の頭よりちょっと高い位置に、木の枝が飛び出しています!


私は竿を離し――枝をつかむ!!!


やった!池の上の枝にぶら下がる私、そして疾走している魚――。


湖岸には、兄さんが走ってきます。

ユートさんとマチルもついてきています。


「ど……どういうことでしょう……?」


***


「それで……つまり、ユートさんが排水ゲートを開けたから、池の水が一気に流れて……それに巻き込まれて魚が逆方向に引っ張られた、ってことですね!」


私は岸に上がって、水しぶきでびしゃびしゃになったスカートのすそを軽く絞る。


「ユートさん、ありがとうございます!最近の雨続きがまさかこんなとこで役立つとは!やっぱり世界は繋がってますね!」


「は……お前何言ってんの」


私が感動している間に、兄さんが排水ゲートに引っかかっていた2匹の巨大魚を引き上げる。


「おい見ろ、コイツ!俺の槍がまだ刺さったままだぜ!」


「やりましたね、兄さん!今日の夕飯は魚祭りです!」


「……これ……」


ぽつりと、マチルが魚を見つめながら呟く。


「ダークネスバス……。人間を水に引きずり込んで……遊ぶ魚……」


「えっ!そんな危険な魚だったんですか……!?」


私は周りを見渡す。たしかに、湖岸に竿がこんなに置いてあるのは……誰か親切な人のものだろうと思っていたけど……不自然、だったのかもしれません。


「でも、まあ……助かったのでOKです!私たちの方が強かったってことですね!さ、お待ちかねの料理タイムですよ!」


と、何か言いたげな目でこちらを見つめているマチルの方を向く。


「たしかに、ダークネスバスは一応食用です……が……毒があります。素人の調理は不可です……。それに……今日釣った魚、今思えば……みんな、ダークネスバスの稚魚……ですね」


「ええっ!?」


そんな、せっかく釣ったのに……!

でも、こんなところで落ち込んでいる私じゃありません!


「き……切り替えましょう!次の村で調理してもらえばいいだけです!」


「で、でもレリィ……今日の晩飯は……?」


兄さんが悲しそうに腹を押さえる。


「……」


ユートさんはあきれ顔。


でもご心配なく!私はちゃんと代替策も歩きながら用意していたのですよ……!


「……ああレリィさん、その草はまさか……」


マチルが私の後ろに視線をやる。

私は、にっこり笑って振り返る。


「はい!今日の夕食は――野草鍋です!!」


「どこからとってきたんだよそれ!」


夕暮れの丘で、私たちの野草鍋パーティが始まった。


「うっ……!これは……!」


「絶対良薬じゃないタイプの苦さ……!」


うっすらと出てきた月と、月光を反射する大量のダークネスバス。

一体どんな味がするのでしょうか?楽しみです!

次回→第13話:絶品バス鍋いただきます!こんな小さな食堂が怪しいはずありません!

6月11日(水)夜更新!

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