言の葉(短編小説)「街灯」
街灯
私は、人間からは、街灯という名の、仕事をしている。
主には、人を照らし「危ない」「怖い」を軽減させる仕事だ。
若い頃は、私の周りにはたくさんの人間たちが集まったもんだ。
賑やかだった街も、人が減り、今では私が照らすのは、地面と虫達くらいだろうな。
しかも私は、木で出来た街灯だ。木での街灯は、私くらいだろう。
歳はとりたくない。
こんな愚痴を吐く歳まで働いたのか。
あー。そろそろ引退時だな。
あちらこちらが、ガタがきてるし、立っているのもやっとだし、野良猫や野良犬たちの粗相で足元は腐ってきた。
そんな文句を言っていると、久しぶりに人間がきた。こんな田舎に来るような格好では無い。
どこかで見たことあるような…。
私の下にたつと、私を見上げ、にっこり笑う。
「ただいま!」
まさか、私に声を?
「いつもありがとう」
涙が溢れた。こんな老いぼれ街灯に声をかけてくれるなんて。子供の頃、この近くに住んでいたという女性は、帰省というものをして来たと言う。
老いぼれ街灯
もう少し頑張るかな。
私を必要としてくれる全ての生き物のため。
了