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世界一かわいくてかっこいい婚約者様 ⑤


 真っ白な雲が青々とした空によく映える晴天。

 風もほとんどなく、絶好の結婚式日和となりました。


「ああ、ハナ様。とてもお綺麗だ」

「えへへ、ありがとうございます、ゾイ」


 真っ白なウエディングドレスを身に纏い、最後の調整をしているところでぽつりとゾイが褒め言葉を溢してくれました。

 どことなく目が潤んでいて、声も涙声です。そんな珍しいゾイの姿に、私はもらい泣きして……。


「ハナ様はまだ泣くんじゃないよ! 化粧が崩れるだろう!」

「はわ、うぅぅっ、が、我慢、しますぅ」

「よし」


 泣き虫な私にとってはなかなかの試練ですよ、これは! うぅ、うっかり泣きそう。

 でもせっかく綺麗にしてくれたのですから、式が終わるまでは耐えなければ。


 そうこうしている間に準備を終え、私はゾイと、それからたくさんのメイドさんたちとともに式場へと移動しました。


 ◇


 教会の扉の前にお父様が待っています。あっ、やめて、泣き顔を見せないでください、お父様っ!


「とうとうこの日がやってきたんだな」

「お、お父様ぁ……」

「やれやれ。ハナ様、少し涙を拭きますよ」


 ゾイがヴェールの下から手を入れてそっと目元を拭ってくれます。化粧が落ちないようにそーっと。

 これで泣くなというほうが無理な状況ですからね! ゾイだって涙ぐみながら拭ってくれていますし、気持ちはわかってくれたでしょう。


「ハナ、結婚おめでとう。幸せに暮らすんだよ」

「はい。エドウィン様を幸せにしてみせます!」

「それは普通、新郎が言うセリフじゃないか……?」


 何を言いますか! 新婦が言ったっていいではないですか!

 私はエドウィン様のお側にいられるだけで幸せになれるお手軽な女ですから、いつでもハッピーな私がエドウィン様を幸せにすべきなのです。ふふん。


 ほどよく肩の力が抜けたところで、いよいよ扉が開く時間となりました。


 まず目に入ってきたのは、参列者のみなさん。

 私の手が触れるまではエドウィン様の魔圧にさらされるため、それに耐えられる髑髏師団を中心とした方々です。思っていた以上にたくさんいて驚きました。


 ギィ、とゆっくり開けられた扉。

 目の前に伸びる大理石のバージンロード。

 飾られた白や黄色とピンクの花。


 そして、バージンロードの先にたたずむ私の愛する婚約者様。


 ああっ、エドウィン様がかっこいいっ!!

 大きなステンドグラスの窓を背景に立つそのお姿が素敵すぎて鼻血が出そうです!


 しかし、今日ばかりは倒れるわけにも鼻血を出すわけにもいきません。いざ、ゆかん!


 ゆっくり歩を進め、お父様が魔圧に耐えられるギリギリまで近付いた後はゾイが手を取ってくれました。

 近づくごとに手が震えていたお父様。それでもどうしても娘とバージンロードを歩きたいからと何度も練習をしてくれました。


 愛ですよ。父の愛です。もう感謝しかありませんね。


 そしてゾイからエドウィン様へと手が渡ります。

 私の手がエドウィン様に触れた瞬間、ほっと教会内の空気が緩んだ気配を感じました。ご安心を、もう放しませんからねっ! ぎゅうっ!


「ハナ……とても、綺麗だ」


 ひぃ、はにかんだ笑顔がかわいすぎます。それでいて視線は熱く私を見つめてくるのです。


 正気を保っているのが奇跡ですよ、これは。


「エドウィン様もお美しいですぅ!!」

「ハナ、できれば美しいはやめてくれ……」


 あれっ、かわいいを避けた結果「美しい」にしたのですがダメでしたでしょうか?

 ほんの少しだけ拗ねたように口を尖らせるお顔もやばいくらいかわいいですよ、エドウィン様。言いませんが。


「とても美しくて、誰よりもかっこいいです。こんなに素敵な方が旦那様だなんて、信じられません」


 とはいえ、美しいものは美しいですからね。改めて言い直してみると、エドウィン様は困ったように微笑みました。


「それは俺のセリフだ。こんなにもかわいくて愛おしいハナを妻にできるなんて、一生分の運を使い果たしたと思う」

「い、言いすぎですよぅ」

「言いすぎじゃない。足りないくらいだ」


 あ、甘い。エドウィン様が甘すぎます。今日は特別な日ですから、サービスも多めなのかもしれません。

 そう思うようにしないと溶けてしまいそうなのでそう思うようにするのです。


 神父様のお話を二人で並んで聞き、誓いの言葉を言い合います。


「……では、誓いのキスを」


 そして、今日一番の緊張の瞬間がやってきました。


 エドウィン様が片手でゆっくりと私のヴェールを上げ、もう片方の手はギュッと私の手を握ります。

 心音が教会中に響くのではないかというほど、どくんどくんと鳴っている気がしました。


「……愛してる、ハナ」

「わ、私もです……エドウィン様」


 いっぱいいっぱいな私のことなどお見通しなのでしょう。クスッと微笑んだエドウィン様は私の頬に手をあて、そっと口づけを落としてくださいました。

 盛大な拍手が響き、私たちは唇が離れるとともに見つめ合い、互いに照れ笑いを浮かべます。


 あれほど緊張していたというのに、いざその瞬間を迎えてみると多幸感しか残りませんでした。


「さぁ、領民に幸せを見せつけてやろう」

「ふふっ、はい。幸せをおすそ分けしてきましょう!」


 エドウィン様に手を引かれ、私たちはパレードのために飾られた馬車へと移動しました。


「わぁ、たくさんの人が待っていてくださったのですね!」

「そうだな。俺もこんなにもたくさんの領民に囲まれるのは初めてだ」


 どうしても恐怖心を植え付けてしまいますからね。

 でもこうして一緒に初めての体験をしてもらえて、私も嬉しいです。


 ゆっくりと動き出した馬車の上から、エドウィン様と手を繋いだまま領民のみなさんに手を振ります。

 みなさんとてもいい笑顔で、私のほうがさらなる幸せを贈られているような気持ちになりました。


 なかには見知った顔もチラホラと見えて、嬉しさも倍増です。ここ最近でたくさんの領民の方々と触れ合ってきましたからね。


「ハナ様ーっ!」

「きゃー、とっても綺麗ですよー!」


 あっ、あれはリタさんとコレットさん!


「エドウィン様、ハナ様、おめでとうございます!!」

「おめでとう、ございます」


 モルトさんとローランドさんもお祝いの言葉を叫んでくださっていますね! それに応えるように私は大きく手を振りました。


「ハナ、身を乗り出すと危ない」

「あっ、ごめんなさい。つい」

「まぁ、俺が隣にいるんだから、ハナを落としたりするわけないけど」


 はぅん! かっこいい! 頼もしい! 素敵っ!


「エドウィン様がかっこよすぎます」

「っ、そ、それは嬉しい褒め言葉だ」


 かわいいや美しいって言われて拗ねるエドウィン様ですが、こうして真正面からかっこいいと褒めると照れるのです。


 ああ、かわいいです。胸のきゅんきゅんが止まりません。


「世界で一番素敵な婚約者様です!」


 思わずぎゅっと腕に抱きつきながらそう言うと、エドウィン様はそれを否定しました。


「違うぞ、ハナ。もう婚約者ではないのだから」

「あっ、そうでした!」


 これからはもう違う呼び方がありますものね。うっかりしておりましたよ!


「エドウィン様は、世界で一番素敵な旦那様です!」

「そうあれるように努力する。ハナは世界で一番愛らしい俺の妻だ」


 あっ、言われるほうは照れますね? でも、今日という日に愛を伝えないでどうするというのでしょう。


 領民のみなさんに祝福されながら、私たちはずっとお互いを褒め合いました。


 危険も多いギャレック領ですが、頼もしい領民のみなさんや心強い使用人や髑髏師団の方々。

 なにより、世界で一番かわいくてかっこいい旦那様がいればどんなことでも乗り越えられるでしょう。


 私は、世界で一番の幸せ者です!!

これにて完結です!

お読みいただきありがとうございましたー!


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