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世界一かわいくてかっこいい婚約者様 ④


 呆然とする両親とパメラをどうにか応接室へ連れて行き、ソファーに座ってもらい、どこまで話を聞いているのかわからない状態ではありましたが、私とエドウィン様は説明を始めました。


 私は最初にお会いした時にお顔を見せていただけたこと、体質によって彼の魔圧の影響を受けないこと、本当は私が魔力を消してしまう体質だったこと。


 そのおかげでエドウィン様に触れていれば彼の漏れ出てしまう魔圧を消すことができること。


 だから手を繋いだままなのです、と説明するのはなんだか恥ずかしかったですね……! まるで両親の前でいちゃついているみたいな図ですしっ!


 と、恥ずかしがっている場合ではありません。

 家族は目の前の美青年がまだ髑髏領主様だと結びつかなかったようなので、一瞬だけ手を離しました。

 次の瞬間、家族が全員ザッと顔を蒼褪めさせたので本当に一瞬でしたけれど。


「大丈夫ですか?」


 心臓を押さえるようにして息を整える家族を心配して声をかけると、三人ともすぐに顔を上げて頷いてくれました。

 どうやらようやく、この超絶かわいいエドウィン様が領主様だと納得してくれたようです。


「……お見苦しいところをお見せしてすみませんでした」

「すみませんでした」


 それから少しして、お父様とお母様が同時に頭を下げて謝罪の言葉を口にしました。パメラも両親の後ろで頭を下げています。

 まだ少しだけ声が震えていましたが、表情からはどことなく吹っ切れたような様子が窺えました。


「実は、ずっと謝らなければと思っていたのです。我々は初めてお会いした時からずっと怖がってばかりで」


 お父様、そんな風に思っていたのですね……。私が密かに感動していると、エドウィン様が首を軽く振りながら答えてくださいました。


「それは、こちらに原因があることでしたから」

「それでも、わざわざ出向いてくださったのにあまりにも失礼な態度だったと」

「い、いえ、それも仕方のないことですので」

「いえいえ……」


 なんだか謝罪合戦が続いていますね。どちらの言い分もわかりますが、自分が悪いと互いに譲らないのはなんだか奇妙に見えてきました。


「誰も悪くありませんでした! お互いに理解し合う時間がなかっただけですよ! だから今こうして場を設けているのです。ね?」


 このままでは収拾がつかないと思いましたので、私が間に割って入っちゃいました。

 家族もエドウィン様もぽかんとした顔をしていましたが、にっこりと笑顔で返します。


 数秒後、ようやくみんながクスッと笑ってくれました。肩の力も抜けたみたいでひと安心ですね。


 お父様が困ったように微笑みながら話を続けます。


「ハナからの手紙で、本当は彼女が心から幸せなのだとわかっていました。それでも私たちは恐怖に囚われ、ずっと信じまいとしていたのです」

「魔圧の影響のない中でお話させていただけてようやくエドウィン様のお人柄がよくわかりました。ここまでしないと理解できない人間で申し訳ありません」

「お父様、お母様……」


 そっか、そうだったのですね。ちゃんと私の気持ちは伝わっていたのですね。

 それでも恐怖が拭えなかったのでしょう。娘の私を大事に思うからこそ、頑なだったのだとわかって胸がじんとしました。


 その上で、こうして向き合ってくれたことが何よりも嬉しい。


「安心して、娘を送り出せます」


 お父様が笑ってそんなことを言うので、もう涙が流れるのを我慢できませんでした。

 うう、最近の私はいつも以上に泣き虫になってしまったかもしれません。


「ハナは、小さい頃から底抜けに元気で、前向きで。魔力がないことできっとすごく落ち込んだでしょうに、次の日にはけろっと笑っているような強くて健気な子なのです」

「ええ……わかります」

「その場にいるだけで周囲の者たちは自然と笑顔になります。これといって飛び抜けた能力はありませんが、ハナは人を幸せにする力を持っていると思うんです」


 もうっ、やめてくださいよぉ。そんな、娘を嫁に出す父親みたいなことを言うのはっ! 娘を嫁に出す父親ですけど!


 うぅ、涙が止まりません。側に控えていたゾイがそっとハンカチを渡してくれました。ありがとうございますぅ……ずびびっ!


「だからきっと、エドウィン様やギャレック領の皆さんを笑顔にできると信じています」

「お、お父様ぁっ、うわぁぁぁん」

「こらこら、ハナ。まったく仕方のない娘だな。そういうところは昔から変わらないんだから」


 泣きたい時には泣く、これは大人になったからといって変わりませんよ!

 もはや号泣する私を、家族はもちろんエドウィン様もゾイも生暖かく見守ってくれていました。泣き虫でごめんなさい。


「エドウィン様。改めてハナを、娘をよろしくお願いします」

「っ、はい。何があろうと、今後一生彼女の笑顔を守ります」


 両親とパメラが深々と頭を下げたのを見て、エドウィン様も同じくらいしっかり頭を下げてくださっています。

 ここは私も泣いている場合ではありませんね。一緒になってガバッと頭を下げました。


 ああ、本当に。

 家族にもわかってもらえてよかった。よかったよぉ……!


 これで、胸を張って結婚式の当日を迎えられそうです。

 でもまずは、この泣き腫らした顔をどうにかしてもらわないとですね。ゾイ、頼みました~!

次回、完結となります!

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