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ギャレック領ではよくあること ③


 さすがにその後は眠る気にもなれず、私はゾイとともに話をしながら夜が明けるのを待ちました。

 とはいっても、地下なので夜が明けたかどうかもわかりません。

 それに朝になったからといって戦いが終わるわけでもありませんし、連絡が来るまではこの場所で待機なのですけどね。


 そろそろ朝かな? という頃、ゾイが地下避難所にある物資庫に行って食事を持ってきてくれました。朝食ですね!

 野外で使う用の魔道コンロでお湯を沸かし、パンと熱々のスープをいただくことができました。もちろんゾイも一緒に食べました。

 最初は渋っていたのですけどね。私が一人で食べるのは心苦しいと言って半ば無理矢理一緒に食べました。


 だって! ただでさえ一人でぐーすか寝ていたのに、食事も一人でもりもり食べるなんて気が引けるじゃないですか!

 わかっていますよ、これはただの気持ちの問題だって。でもそれで落ち着くならそうさせてもらうのです。セルフケアですよ、セルフメンタルケア。


「さて、気になっているだろうことをこれから報告させてもらうよ」

「え、外の様子がわかるのですか?」

「念話で報告がくるのさ。エドウィン様からはしつこいくらいにハナ様の様子を聞かれてちょいと辟易としているがね」

「ええっ、エドウィン様とお話ししているのですか、ゾイ!? 羨ましいですぅ!!」

「ああ、もう。だから言いたくなかったんだ。エドウィン様と同じ内容で文句を言うのはやめとくれ!」


 うっ、それはごめんなさい。でも羨ましいものは仕方がないのです。不安ですし、心配ですし、今すぐ会いたい人ですから、つい。


 本当はずっと戦況もわかっていたそうなのですが、事細かに報告すると私を余計に怖がらせるかもしれないと黙っていてくれたのですって。


 ありがたい配慮です……! 知りたい気持ちはありますが、すべてが解決してから事後報告で聞きたいですね。私は確実に怖がる自信があります。


「で、状況が落ち着いたからそろそろ報告しようと思ってね」

「戦いは終わったのですか!?」

「まぁ、そう急かすんじゃないよ。でも気になるのはそこだね? 戦いは終わったよ。もちろんこちらの勝利だ。軽傷はいるが死者も重傷者もいない」

「よ、よ、よかったのです~……」


 安心して思わず力が抜けてしまいました。ああ、本当によかった! 信じてはいても、こうして聞かされるとやっぱり違います。


 ちなみに、戦いが終わった後もこの場所に誰もこないのは後処理に手間取っているからだそうです。

 町の被害が少々厄介らしく、地上に戻るのはもう少し待ったほうがよいとのこと。


「そんなに被害が……復興に時間がかかりそうですね」

「あー、まぁ、そうだね。急がないとじわじわと浸食していくから……」

「? どういうことです?」

「やっかいな植物に侵食されてるのさ。王都のほうでは見かけないって聞いたことがあるね」


 植物? ますますよくわからず首を傾げていると、ゾイがごめんごめんと言いながら説明してくれました。

 なんでも、隣国がよくしかけてくる攻撃手段だそうで、ギャレック領ではもはやお馴染みの厄介な植物があるのだそうです。


 種を撒くと魔力を吸収して急速に成長し続けるんですって。そこに魔力があれば永遠に増殖し続けるのだとか。ひえぇ、厄介な雑草ですぅ!


 もっと厄介なのは、その植物が酸を撒き散らすことなのだそうです。すでにこの町は慣れたものなので酸にも強い素材で建物も建てているそうなのですが、それでも傷みはするし、植物を完全に除去するのに手間と時間がものすごくかかるらしく……うっ、想像だけで恐ろしい。


「一株ずつ根元から引っこ抜いて魔道具で魔力を吸い取るんだが、魔力を抑える魔道具を使っていても空気中のわずかな魔力を吸ってじわじわ増えるし本当に面倒なんだよ。もはや隣国はこの種を嫌がらせ目的で撒いてるとしか思えないね。この領内で魔力が消えることなんてないから余計に大変ってわけさ」


 ギャレック領は空気中の魔力が多いって聞いたことがありますからね……。増えるスピードよりも速く枯らさないといけないというのは大変そうです。そりゃあ人員も割きますよね。


「魔力を吸い取ることで植物が枯れるんですか?」

「そうさね。ほんっと、この領で一番厄介な植物さ! 一つでも種が残ってたら次の日には町が植物で覆い尽くされてるよ」

「わぁ……」


 ちなみに、隣国はギャレック領を攻略するためにこの植物を改良したのだとか。すごい執念ですね……?

 それが今や単なる嫌がらせにしかなっていないというのはどんな気持ちなのでしょう。これ、お互いに相手に対する憎しみだけが募っていきません?


 まぁそれは置いておきましょう。それ以上に私には気になることがあります。


「ゾイ」

「ん? あ、手伝いに行くってのはなしだよ。植物が撒く酸は強力だからね。対処できない者たちはまだ立ち入り禁止さね」

「いえ、そうではなく。あの……」


 その植物は、魔力が栄養なのですよね? 魔力がなくなればいいのですよね?


「私がその植物に触れば、魔力は一瞬で消えると思うんですがどうでしょう?」


 以前、ミシュアルが言っていた気がします。繋がっていれば全部魔力が消えてしまうって。


「あ」


 断固として私をここから出さないといった様子をゾイでしたが、私の言いたいことを理解した途端口をぽかんと開けて目を丸くしてしまいました。


 あれ、おかしなことを言ってしまいましたかね? でも、そうですよね? ね?

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― 新着の感想 ―
絶対枯らすマン颯爽登場! 『厄介な雑草は根こそぎよっ!』 (マンじゃないし、危ないんだけど、張り切ってるハナ様のお気持ちを大事にしたいけども…。エドウィン様、どうしましょう) (いのちだいじに)
ぜ…全身幻想殺し……!
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