素顔の婚約者様②
大好きすぎるかわいいエドウィン様の至高のお顔に見守られながらの夕食を終え、現在私はエドウィン様の私室で彼と二人、ソファーに腰かけています。
ちょっと顔を上げただけで麗しいご尊顔が視界に入る夕食時も大変でしたが、あまりにも距離が近い状態というのもなかなかに心臓の動きを加速させますね……?
「ハナ、俺が近くにいるのは嫌か?」
「そんなことはありません! あるわけがないですっ」
「それならよかった。……触れていてもいいか? 手を繋いでいたい」
「は、はい」
エドウィン様の言う「触れたい」は恐らく魔力の放出を抑えたいという意味ですよね。わかっていますとも。勘違いはいたしませんっ。
けれどそんな私の思考を読むかのようにエドウィン様は言葉を続けました。
「魔力を抑えるのもそうだが、ただハナに触れていたいんだ」
「ひぇ」
エドウィン様の猛攻が留まることを知りません。つまり、勘違いしていてもいいということですね……? ああ、甘すぎて頭が沸騰しそうです。
ドキドキしっぱなしの状態ですが、ちゃんとお話も聞くことができましたよ!
エドウィン様は、どうして仮面を捨てることにしたのか、その理由を教えてくださいました。
まさか、私のためだとは思いもよらず驚いてしまいます。
「ずっとどうにかしたいと思うだけで、何も行動してこなかったことだから……きっかけをくれたハナには感謝しているんだ。本当にありがとう」
「そ、そんな! エドウィン様がご自身で勇気を出したからですよ! 私は、何も」
「いや。ハナがいなければ仮面を外そうとも思わなかった」
真剣な目でそんな風に言われたらこれ以上の謙遜はよくないですよね。
なんだか照れてしまいますが、私もこれ以上は否定せずにいようと思います。
「そう言っていただけて嬉しいです。いつでもお顔を見てお話できるのも」
「ああ、そうだな。……ハナ、改めて君に求婚をしたい。いいか?」
「えっ」
エドウィン様はそう言うと、ソファから立ち上がって私の前に跪きました。
真剣な眼差しで私を見上げてくる彼の水色の瞳から目が離せません。
ドキドキと心臓がうるさいです。ええい、今くらいは静かにしてほしいのに!
エドウィン様からの求婚のお言葉、絶対に聞き漏らせませんから!
「俺は、初めてハナに会った時からずっと君を意識していた。今ならハッキリ言える」
そっと左手を取られ、エドウィン様が指先にキスをしました。
む、胸がきゅんきゅんします。幸せの波がわっと押し寄せてきて、飲みこまれてしまいそう。
「俺と結婚してほしい」
「……はい。私で、よければ」
「ハナが、いいんだ」
もう、涙を我慢することはできませんでした。
夢のようなプロポーズです。まさか私にこんな日が来るなんて。
エドウィン様が立ち上がりながら私の手を引いてくださったので、私も一緒に立ち上がります。
その瞬間ぐいっと引き寄せられたかと思うと、気づけば彼の腕の中にいました。
どくんどくんと聞こえてくるのはきっとエドウィン様の心臓の音。
温かくて、とても心地がいいです。
「愛している」
「っ、私も、ですっ」
愛の言葉を告げられ、いっぱいいっぱいになりながらもお答えすると、エドウィン様に顎を持ち上げられて……こ、これは! き、キスされてしまうやつでは!?
まずいです! これは倒れるやつです! でも人生で最高に幸せな瞬間に気を失うわけにはいきません!
ちょっとだけもったいない気もしましたが、私は両手を前に出して慌てて止めました。
「ま、まままま待ってくださいぃ……」
「っ、すまない。急ぎすぎた」
「い、いえ。ごめんなさい、あの。幸せすぎて、破裂しそうなので……決して嫌というわけではなく!」
「破裂されては困るな」
クスッと喉の奥で笑うエドウィン様からは、大人の男性を感じます。色気がやばいです。こんなにかわいいのに反則です。うぅ……。
キスを寸前で止めてしまったというのに、エドウィン様は機嫌を損ねることもなく私が落ち着くまでそっと背中を撫で続けてくださいました。
なんだか、私って子どもですよね。おこちゃまです。
でも、エドウィン様は私を撫でながら「無理しなくていい」「焦らなくていい」と言ってくださいました。
この間は了承も得ずにキスしてしまったから、という反省のお言葉も。くっ、かわいい……!
「そ、そういえば。結婚式でエドウィン様のお顔を知られるようになったら、町でのデートができなくなっちゃいますね。それだけはちょっと残念です」
「お忍びなら、変装すれば解決だ」
「えっ、結婚式後もお忍びデートをしてくださるのですか?」
「ハナが望むなら時間を作るさ」
これはいいことを聞きました。
それとエドウィン様がずっと甘いです。そろそろ私は溶けてしまうかもしれません。
「近いうちに休みを取る。式の前に、このままの姿でまた町に行こう」
「いいのですか!?」
「もちろん」
ああっ、与えられてばかりですね、私。
えへへ、嬉しいです。また楽しみが増えました!