プロローグ
毎日、夜中の2時まで、パソコンの画面を睨んでいる。
睡眠不足はいけないが、そんなことは言っていられない。上司から命じられた仕事を終わらせるまでは、寝ることは許されないのだ。
そう、俺が務めている会社はブラック企業だ。退職できるのはごく僅かな社員だけ。ほとんどの人が、社長を恐れて言い出せずにいる。中には過労死したり、自殺する社員もいた。
働き方改革が進んでいる現在では、ニュースで取り上げられてもおかしくない。
だがこのことが白日の下に晒されるのは、何十年も後のことだろう。社長は名家のお坊ちゃまで、政府のコネをいくつも持っているのだ。
そのコネの力さえあれば、平社員の声などすぐにかき消される。真実も塗り替えられる。俺たちは社長に従うしかない。
自然と笑みがこぼれた。そうだ。そんな日々とも、今日でお別れなのだ。さらば、ブラック企業。さらば、くだらない俺の人生よ。
頭上には、アスファルトの道路が広がっている。下を見ると、ビルが見える。
間もなく俺は死ぬ。地面に叩きつけられて。
怖くはない。むしろ楽しみでさえある。呪われた人生から解放されるのだから。
グシャッ
何かが潰れるような音がした。全身に、今まで経験したことのない激痛が走る。
誰かの悲鳴が、変に遠く聞こえた。
ああ、ついに死ぬんだ。口角から血がつたう。
なんて素晴らしいんだろう。もう、社長のご機嫌取りもしなくていいんだ。俺は自由なんだ!
澄んだ春の青空が見える。まるで俺が解放されたことを、祝っているかのように、きれい、だ・・・
十倉政雄 享年36歳
不幸な人間にとって、死とは無期懲役の減刑である byアレクサンダー・チェイス
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