表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王は静かで平和な世界の夢を見る  作者: 柊司
魔王は理不尽で大変な冒険の夢を見る
12/12

ちょっとした立ち往生

 全身が重たい、動かせそうな体の部位が見当たらない、瞼すら開けられそうにもない、でも意識だけははっきりと目覚めている状況。気持ちが悪く吐き気もする、でも吐く動作も出来なさそうだ、気を失っていた分多少だが頭も回る、今のうちに対策を考えなければ旅に支障が出てしまう、私自身気分が優れないまま旅を続けるなんて事は避けたい、何より気持ちのいい旅にしたい出来る限り。

 魔力の操作をして見るがまるで水が詰まった排水溝の様に流れない、魔王の体故か魔力を抑制されると此処まで駄目になる物なのかと痛感してしまう、そも魔が付くものの根源たる存在とまで言われてるのが魔王だからそこを対策されると無害な存在になるのだろう。

ため息をつきたいけど付けないのすらストレスだ、取りあえずほんの少しでも動けるように頭の中で魔法陣を構築して見る、対魔拒絶空間に対抗するのなら新しい魔法を創造する他ない、第一魔王なのだからそう言ったデバフに耐性を持たせてくれても良いだろうとドラグさんへ文句が出てしまう。

 新しい魔法の創造何て行為できるのかすら分からないが出来なければ動けなさそうなのは明白だ。

適当だと思われる文字を円の周囲へ書いていく、発動してくれるだけでも嬉しいが今回のは少し特別性だ、その特徴も踏まえてくれると更にありがたい。

私が今何処でどのような感じになっているのか分からないのが問題点だが気にしてても埒が明かない、強制的に創造した魔法を行使して見る、名前はまだ無いが使ってみれば自然と思い浮かぶだろう。

重たい体が徐々に軽くなっていく、魔力の流れもいつも以上に簡単に操れる、ゆっくりと瞼を開けて見た。




 すると見知らぬ一室にて横になっていたようだ。ミーナが私の看病をしてくれていたようで目が覚めると嬉しそうに頭を撫でてくれた。

「目が覚めてたようで良かったです」

「心配おかけしました、アリスは?」

「そちらで寝てます」

ベットから降りて彼女を見ると明らかに苦しそうだった、毛布を退けて上着を軽く脱がしお腹を晒す、優しく下腹部へと手を置き先程自分へと付与した魔法を彼女にも掛ける、白い光が部屋の中を包み込むのと同時にアリスのへその下あたりに紋様が浮かび上がった。

最後の仕上げに人差し指に唾液を絡め方陣に対して円を描くように指で撫でる、すると無事に定着させることに成功した。

胸を撫で下ろしてベットに腰を掛ける、自分に使う分には犠牲が私だけでいいから何も考えずに済んだが、親友を相手に創造し出来たばかりの構築も曖昧な魔法を掛けるのは緊張してしまう。

「アリスに何をしたんです?」

「この国、多分なんだけど対魔拒絶空間が国全体に張られている感じがしてて、その対策として私がつい今作り上げた強化魔法を付与して見たんだけど、名前どうしようかな?無事にアリス目が覚めたら一緒に考えて貰お」

ミーナは驚きつつも何かに気付いたのか瞳の奥に何か変な企みが見え隠れしていた、絶対にロクな事を考えていない目だよそれ。

そのロクでもない相談事をしているとアリスがゆっくりと頭を抑えながら起きて来た、どうやら魔族の血が入っている分アリスにもそれなりに負担が出ていたようだ。

「んーぁ、久々にふかふかなベットで眠った気がしますわ、それに体が嫌に軽いですし…お腹に何か変な魔法陣がありますし一体何なんですのこれ?」

「元気そうで何より、それとミーナありがとね、二人とも看病して貰っちゃって」

「いえいえ、大切な仲間ですから当然です」

「ちょっと!?私の話はスルーですの?傷つきますわよ?説明してください!」

急に暴れはじめたのでミーナと一緒に抑え込みどうにか落ち着かせてから説明してあげた、取りあえずこの新しい魔法の名前は「静整魔強流動(シーマジックバフ)」で決まり、シーの部分を突っ込まれたが人差し指を立て口元に当てるジェスチャーで教えてあげると納得してくれた。

 短く説明すると略式で本来の力を発揮でき自身や他者に能力を向上させる効果を持つ魔法を付与できる物だ、体に魔法陣か紋様を残すのにはデバフの効果を抑制するといった効果もある、そしてこの魔法は術者ではなく付与された自身の魔力を微量消費し続け常時発動する、魔力が一定以下になると自動で消える仕組み、それに加えてバレにくいのが特徴だ。

我ながら天才的な構築になってくれた様で良かった、正直数ヵ所ミスった気がするが動いているのでヨシ。

 話は今現在いる所についてへと移った、馬車の方々が向かってくれたのはあの聖騎士たちから聞いていた近くのリリ村という名前の村だった。領地の端に位置しているが窓の外から見る夜の村の姿は立派だった、故郷である町ルインの発展にも負けていない気がする。

 でも、何処か静かだ、あの町が異様に五月蠅かったせいもあるが異様に静かすぎる気がする。ミーナが先に町の人に話を聞いてみた所、夜の活動制限があるらしく村であれば村長かその村在住の聖騎士への届け出が無ければ夜間の外出は禁止となっていた。

「厳しいね、色々と」

「確かにそうですね」

「でも日が昇っている間に動けば良いだけの事ですわ、それに今だったら私何でも出来そうですもの」

最高にハイって感じにアリスは高笑いをしていた、正直酔っ払いか何かの対応をしているようで気が重たくなる。取りあえずは新しい魔法の創造は出来た、もう少しで完全に自分の能力に出来そうな気がする、ベットに寝転がって天井を眺める。

「夜だしもう寝よう」

「そうですね、私もやっと眠れそうです」

「えぇ、私眠たくありませんが…」

「バフ解除しておこっか?」

「いえ、それは結構、そのまま寝ますわ」

パジャマに着替えてベットに入り直し目を瞑る、明日の朝には更に情報収集をし出来次第、首都シンを目指して移動できることを祈るばかりだ。



 瞼を閉じて見る、でもバフのせいか眠気が来ない、そもそも先程まで半強制的に眠らされていたのだから睡魔など襲って来ても秒で返り討ちに出来てしまうだろう、どうしよう困ったぁ。

だからといってバフを切れば体を動かせなくなる、瞼を開けてアリスの寝ている方を見るがもぞもぞ動いており寝ていない、ミーナはというともう既に爆睡と言った感じに一定間隔で小さな寝息を立てている。

 いつも寝る時どうしていたかを思い出すが、大体が疲れておりそのおかげで一瞬で眠れていたというエピソードばかり、全くもって参考にもならず思い出に蓋をした。

もう既に魔法の蝋燭からは火を消してしまい部屋は真っ暗、本を読もうにも火を付けてしまえばミーナにもアリスにも迷惑が掛かる、猫目を使うかとも思ったが目に魔力を集めると魔眼が勝手に出てきてしまう、まだまだ使いこなせない力ばかりで難儀だ、めっちゃくちゃ腹たつぅ。

 枕に頭を沈め創造で耳栓とアイマスクを作り装備し目を瞑る、無理やりにでも寝てやるんだから。








 一切眠れなかった、朝日が既に窓から少し差し込んでいる、今更ながらに眠たくなってきた目でアリスの方を見ると爆睡していた、どうやって眠ったのか起きたら教えて貰うとしてミーナは寝返りは数回したのか若干乱れた毛布をぎゅっと掴み可愛らしく眠っていた。

限界だ、死んだように眠るんだと瞼を閉じて意識を夢の中へと溶かして行く、最高の気分のままどこか遠くへ行くように水にように流れて行った。




 良い夢を見ていたんだ、でももう思い出せない、それに頭がガンガンする、頭をぶつけた訳じゃないそしてベットから転げ落ちた訳じゃない、アリスとミーナに叩き起こされた結果として頭が痛いのだ。

無理やり毛布をひっぺ返し耳元で叫ばれれば誰だって頭の一つや二つ痛くなる、気分は二日酔い、水を飲んでも楽になれないタイプの奴。二人が意気揚々に町の人へ聞き込み、私はその後ろを必死について行く、馬車の方々の出発に合わせて行くのでまだちょっと時間がある為観光がてらに情報収集というのは良いのだけどお腹が空いた。

 辺りを見渡して見ると美味しそうなお店が結構見当たる、涎が口の中一杯に溢れて来るのを頑張って押し留めながらお店の近くへと誘われるように足を向けると更に美味しそうな焼きたてのパンの匂いが鼻腔をくすぐってくる、まるで早く私に食べて欲しいと言っているかのようで自然とお店の扉を開けて中へと入った。

「いらっしゃい、おや?旅の方だね、奥へどうぞ」

気前の良さそうな店主らしき人物にお店のあいている席へと案内して貰った、椅子に座りメニューの書かれた紙を貰う、そこに描かれている物全て美味しそうで腹の虫が騒ぎ立て始める。アリスとミーナを置いてきたがそのうち見つけに来るだろう、多分。

 ひときわ目立つ文字でおすすめと書かれた朝食のセットを頼むことにした、飲み物は勿論ブラックコーヒーに限る、コーヒーに関しては世界共通で出回ってる嗜好品らしく国によって味も違うと言う、非常に楽しみだ。

 運ばれてきたコーヒーカップを手に取り香りを楽しみつつ一口飲む、苦さがルインで味わった苦さと大分違う、それに酸味が薄く苦さは濃い、一番好きな味だ。

そんな事をしていると入口からアリスとミーナが不機嫌そうに入ってきた、見事にバレた、どうして私がこのお店に入ったのを見破ったのかという疑問は持たない、親友故にわかったというにしておく。

「イアスさん、何優雅にコーヒーを飲んでいるんですの?」

「いやぁお腹空いちゃって、駄目だった?」

「それならそうと言って欲しいですね、私たちもお腹空いていたんですから」

ちゃっかり席に来るまでに同じものを頼んでいたのを見過ごさなかった、村での情報も大事だろうが結局は首都に行ければ情報屋で欲しい情報を手に入れられるかもしれないのだから大丈夫だろう。

 心配事があるとすればミーナが聞いていた切り裂き魔ぐらいだ、最近首都に出没し始めた大量殺人者、夜な夜な出歩く人をすれ違いざまに一瞬で切り裂く姿が幾度となく目撃され懸賞金が初めて聖王国シンギュラル内で付けられた存在、聖騎士ですら数人殺されており危惧されているらしい。

だとしても行動するのは朝、出会う事も無いだろう、そんな事を考えていると運ばれてきたのはサンドイッチ、野菜と肉がはみ出たそれはいかにも朝の食卓に相応しい物だ、手に持ち一気に食いつくと口一杯に広がるのはフレッシュな野菜の味に加えて味わった事の無いソースに肉のこんがり触感、堪らない。

 美味しそうに堪能していると二人の視線が刺さる、それでも臆せず頬張っていくと二人の分も届き食べて行く、私同様の反応をしつつ勢いよく食べて行く姿は見ていて飽きない。

最高の朝食とコーヒーを味わい尽くしお店を後にした、絶対にまた来るリストに入れておく、そんな事をしていたら馬車の方々と丁度ばったりと出くわした、朝食を取っていたらしくもうすぐ出発らしい、宿屋に荷物を取りに戻り次第向かうと伝えて別れた。

 パパッと情報屋から前魔王の力や能力などを教えて貰う、それが出来なければ前魔王を倒した勇者の居場所、取りあえず首都シンへ、レッツゴー。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ