王様ゲームでケツにダイナマイトを入れたら、クラス一の美女である帰国子女と付き合うことが出来ました。
学校帰りのカラオケ店。三対三の合コンに頭合わせの為に呼ばれた俺は、その日初めて参加する合コン、そして対面に座る可愛い女子に圧倒されていた。
「いいな、お前は静かにコーラを飲んでろ。そしてポテチを食ってろ。コンソメパンチまでは許してやる」
その言葉の通り、俺は静かにペプシを飲んでいた。
「王様ゲーム、イェェェェイ!!」
唐突に始まった王様ゲーム。コイツら酒でもやってるのかと言いたくなる位にテンションが高い。男女共に謎のハイテンションについて行けない俺は、早く帰って星をみるひとの続きをやりたくなっていた。
「二番と~三番がポッキーゲーム!!」
「ウオォォォ!!」
「ちょっとやだぁ~!」
勿論王様ゲームでも俺の任務は変わらない。予め言われたとおり、傷の入った王様を引かない様にするだけ。
そしてこの後コイツらが大人の階段を登ってシンデレラと思い出いっぱいしやがると思うと、俺は盗んだバイクでコイツらを轢き殺してやりたい衝動が沸いてくる。
俺は薄塩味のポテチを口に入れ、目の前に座る女達を見た。
同じ国の人間なのか分からない位に金髪に染めたギャルと、場慣れしてそうな茶髪の女。そして真ん中に座る同じクラスの黒髪の女。丁度今、黒髪の女が王様を引いたところだ…………
「じゃあ──二番がお尻にダイナマイト!!」
騒がしいカラオケルームが一瞬にして静寂に包まれた。
「…………は?」
「…………え?」
「……ちょっと由香里何言ってるの?」
「由香里っちヤバたん?」
両脇の女達も首を傾げ黒髪の女の精神鑑定を始めようとしている。この女子は確か半年前に日本に戻ってきた帰国子女だった筈……一体どんなデタラメ知識を向こうで植え付けて来たんだ?
──因みに二番は俺。
「え? 日本ではやらないの? ケツダイナマイト……?」
「やらないやらない」
「やるわけない」
「止めて下さいお願いします」
手を振り首を振り全力で否定するメンバー達。俺は静かにポテチを貪るのみだ。
「すまん、飲み物が無くなったから取ってくる」
そう言って俺は速やかにエスケープしようとした。流石の俺もケツダイナマイトなんかゴメンだからな……
ドリンクバーへ向かう振りをしてトイレへと向かい、そのまま帰ろうとした。部屋の脇を通り過ぎないと出口へ行けないので、こっそり中を覗きつつ通り過ぎようとしたが……部屋には黒髪の女以外誰も居なかった。
(奴等め、しっぽりと逃げやがったな……!?)
その時、うっかり黒髪の女と目が合ってしまった……。
「ヤベッ……」
「待って!!」
後ろから声を掛けられ、俺は立ち止まった。
「何故か皆帰っちゃった……お願いだから置いていかないで……!!」
女が懇願するような声色を出した。俺の任務は静かにコーラとポテチを食うことだ。しかし奴等が消えたならここからは独断と偏見と欲望に身を任せても差し支えは無かろう?
「分かったよ」
俺はカラオケルームへと戻った。
「何でダイナマイトがあるんだぁ!?」
カラオケのマイクの隣にサラッと置かれたダイナマイト。いやいや、大人の階段を登るどころかいきなりテレポーターで最上段に『石の中にいる!』された気分だよ!!
「君が二番だよね? ね?」
「チガイマス」
「だよね?」
マッチを取り出し火を付けようとする女に恐れを成して「あ、はい……すみません」と言ってしまった俺はきっと来世もクソ雑魚ナメクジ野郎だろう。
「じゃあ……入れようか?」
「……え? ま、マジですか……?」
「私最近日本に戻ってきたんだけど、このゲーム、王様の命令は絶対だって言われたよ?」
た、確かに今回も最初に野郎共がエロ目当てで言っていたが…………。
「それに古のサムライボーイ、モハメドムサシが三本のケツにダイナマイトは折れなかったって有名な逸話があるくらいだから大丈夫だよ♪」
「混ざりすぎぃ!!!! それとケツとダイナマイトどっから出て来たの!?」
「有名なセンゴクボーイ、コバヤカワがケツにダイナマイトを入れたって逸話……知らない?」
「知らん!! 初耳にも程がある! 多分それ聞いたら林先生もキレるぞ!!」
「What's!? まぁ、ウサギの角的にも早く入れましょう! 時間無いデース!」
「急に怪しい外人風になりましたが何か……!?」
「もう……みずみずしいですね。私の事は馴れ馴れしく『由香里』と斬り捨てしてください。これから私達はダイナマイトな関係に陥るんですから……」
「……ツッコミが追い着かん」
「ささ、冷めないうちに入れて下さい」
初めて手にする妙な重量感に、思わず冷や汗が出てくる。
(……マジで本物なのか!?)
どう考えても本物に火を付けたらお互い無事で済むはずが無い。俺のケツはビッグバンを引き起こし死滅する。この女子──この際だから呼び捨てにさせて貰うが由香里も無事では済まないだろう。寧ろこのカラオケ店が訳あり物件と化す。
「これ、今まで誰かやったことは…………?」
「んーん、私に告白してきたダンシーに取引したら断られて逃げられました(笑)」
「当たり前だ……」
「日本男子の心意気とはそんなものデスカー?」
由香里の失笑に、俺はちょっとだけ日本男子をバカにされた気がしてムッとした。しかしそれがよくなかった。
「分かった、入れてやるよ。その代わり出来たら俺と付き合って貰う」
「ハハハ! 取らぬ狸の金玉算用デスねぇ?」
「女子が金玉とか言っちゃいかん……!」
俺は素早くズボンを下ろし、日本男子の心意気をその身に収めた。その間、無心である。いや、女子と付き合える欲望がちょっとだけあった。嘘ついてゴメン。
半分埋められたダイナマイト君が妙な感じで恥ずかしい。
「ど、どうだ……!!」
「ほほぅ、それじゃあ火を付けマース!」
由香里が可愛らしい仕草でマッチに火を付けた。普通に考えてカラオケ店で何やってんだ俺等は……。
「なぁ!? これ火を付けたらどうなるんだ!?」
「私が楽しいデース!」
「違うそうじゃない!!」
「大丈夫デース! 死にはしませーん……死には……」
「おい! 『死には』ってどう言う事だ!!」
──シュッ!
ケツのダイナマイトに火が着き、導火線が燃える音がケツから聞こえ始めた。マッチの付け方が可愛いのが何か腹立つ。
「うぉぉぉぉ!!!!」
俺は恐怖でその場でクルクルと回り出し、そして由香里の手を掴んだ。もしこれが本物でヤバい代物ならば、由香里も焦るはずだ!!
「ふぁぁ! 早速ダイナマイトな関係デスねぇ!!」
嬉しそうな由香里。死の恐怖に脅える俺、そしてケツのダイナマイト君。由香里の反応的に本物では無いだろうが、もしかしたら俺のケツはあの世行きかもしれない。
「!!」
導火線も残り僅かと言うとき、青天の霹靂とも言える悪魔的所業が俺の脳内に舞い降りた。何故今の今までそれに気が付かなかったのだろうか!
「普通に抜けばええやん!?」
俺はダイナマイト君を現世に解き放ち、由香里に向かって投げ付けた。因果応報アタックを食らえぃ!
「ワオ! ダイナマーイ!!」
由香里は活き活きとそれを受け取ると(よく触る気になったな)俺のペプシの中に導火線ごとぶち込んだ。そして火は消えた。
「…………おい」
「なぁに? ダーリン♡」
「火を消したって事は…………!?」
「…………♪」
途端に脚に力が入らなくなり、腰も抜け、その場にへたり込んでしまった。少なくてもこの場で点火したらマズい代物であると言う事実に思考が追い着いていかない。
(一体何を考えているんだコイツは……!!)
「ダーリン大丈夫!?」
由香里が力無く座り込む俺に抱き付いて、頻りに顔を擦り寄せてくる。……悪くない。寧ろ良い。頼むもっとやってくれ。
次の日、クラスに登校するなり由香里が俺に抱き付いてきた。なんだこの変わり様は?
「はぁ!?」
「どゆこと!?」
クラスの非モテ達が騒ぎ出した。
「お前昨日何したんだよ!?」
俺を捨てていった友達も慌てた様子で問い詰めようとする。その分だと昨日はダメだったみたいだな。
「なぁに、日本男子の心意気を見せただけだよ。な?」
「ダーリン愛してる♡」
俺は可愛いけど狂っている彼女が出来たが、出来れば二度とケツにダイナマイトは入れたくない。
読んで頂きましてありがとうございました!
他にも300以上の短編やら何やらを登校してますので、お時間があるときにでも宜しくお願い致します!
(*´д`*)