第6章
開始
曖昧な気待ちを、タイルとタイルの間に挟んだまま、日々は過ぎていった。取り敢えず、持ち前の画力や発想力を駆使して家を建て替える。ボロ屋では飯を食うのも、寝るのもままならなかった。お隣に事情を話して、リフォームの時は泊めさせてもらうということにした。
僕らは隣町のホームセンターに行って必要な道具を揃えた。今まで、見てきた地獄の世界と変わりすぎて、状況にまだ追いつけなかった。人を疑いすぎるのは良くないが、今までの事があって疑心暗鬼にはなってしまうものだ。羽織の早すぎる行動を見届けたまま、買い物は済んでいく。
買い物がおわって、僕らはボロ屋に帰った。
リフォームなんてよくわからなかったけど、ネットやら本やらいろんな物で調べながらやると、割りとサクサク進んだ。
羽織とリフォームを始めて2週間。ようやく、家はボロ家から古民家へと昇格した。
「まぁまぁ、住めるぐらいにはなったな」
「うん」
疲れたけれど、やることも特にないなか、羽織と二人で何かをやるというのは楽しい限りであった。
「それにしても滅茶苦茶疲れたね」
「まあな、お前が俺を見つけて町を出てこっちに来て家を直して、いろいろありすぎだよなぁ」
僕は今まで聞かずにいたあの事を聞けるチャンスが来たと思った。
「ねえ、こっちに来てからさなんでこんなに急いで家の修理に取り掛かったの?いくらやることないからってこんなに急ぐことだったの?」
ずっと気になっていたせいか、一気に色んなことを盛り込んでいってしまった。
「あ…えっと、い、嫌だったのか?」
羽織が困った顔をした。それを見て、僕は我に返った。
「ごめん、いろいろ言いすぎた。でも、嫌じゃないよ。むしろ楽しかったし」
「それならよかった…」
でもやはり気になった。
「あの、じゃあなんでこんなに急いだの?」
「いや、まだあいつらに見張られてるかもしれないと思うと怖くて何かをしていないと不安だったからさ…」
笑って見せていた、羽織だがその肩は震えていたあぁ…。僕のせいで羽織は一生治らないかもしれない心の傷を負ってしまったのか。とても申し訳ないという気持ちがこみあげて、羽織を直視できなかった。
「別にお前のせいじゃないって」
「っ…。ごめん」
「俺が勝手にやったことなんだからさ、そんなに気に病まないでくれ。」
そういわれて、顔を上げると羽織は小さく微笑んでいた。