表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

第5章


次の日、日の出と共に二人は歩き出す。最寄りで乗ると、知り合いに会うかもしれない。歩いて、3つ先の駅から電車に乗った。

僕らにお金はあった。バイトやら、貯金やら、なんやら。けれども、ずっとそれだけで暮らせるわけはない。だから稼がなければ。

ちなみに羽織の家は裕福だ。神社の中でも上の上。物凄い金持ち。だから、自分の土地をもう持っていた。まあ、いずれ別荘でも立てろ、と言っているようなかんじだ。取り敢えずそこに行くことにした。




出発から2時間、他愛のない話をしているうちに舞台は静岡へと向かう。羽織の別荘は、静岡の小さな港町。人も少ないし、行ったこともないそうだ。

駅についた。

駅からバスに揺られて30分、そこから10分歩く。これが最短距離。

新天地に足をつけると、ふわっと潮の匂いが優しく僕らを出迎えてくれる。本当に小さな、町だ。町というより、村……?

そこには、1階建ての、ものすごくボロい、本当にぼろい、和式の家があった。ドアは、力ず良く開けないとあかない。かといって、強すぎるよ壊れそうだ。中は、木の優しい香りに包まれていたけれど、今にも壊れそう。

僕らは取り敢えず、近所へとの挨拶へ行った。

まずはお隣。

「どうも、今日隣の家に引っ越してきた、神々と夜神月です。どうぞよろしくお願いします」

と、羽織が挨拶し僕が菓子を渡した。

「あらぁ、珍しいわねえこんな若い子がこの家の持ち主で、ここに住むなんて。みんな出ていっちゃうばっかだったのよ。嬉しいわ、私は、近藤よ。そこの青果店やってるのよろしくね」

「そうなんですか~こちらこそよろしくお願いします!」

と羽織が元気に応えた。

「よ、よろしくお願いします…」

僕は、かなりの人見知りなので、羽織のようには応えられない。

「そっちの子は彼女?」

「あ、えっと……その、違います」

「ああ~、近藤さん…こいつは、男なんです」

「え?」

近藤さんはとても驚いていた。

「性同一性障がい、なんです…」

「ああ、そういう事ね。中は男の子なのね、間違ってごめんなさいね」

近藤さんは、にっこりと笑っていた。僕を嫌がる素振りなんて一つもなかった。

「ありがとうございますっ」

僕は反射的に大きな声を出してしまった。

「あらら、元気な子なのね。みんなに今連絡するわね、2人の歓迎会しなくちゃ!!!!!」

「えっありがとうございます」



ぱあてぃ


その日の夜、集まれる人を集めていただきボクらの歓迎会をしてもらった。皆さんの話によると、この村は97人しか居ないそうだ。駅のある街と合わせても、500人に行くか行かないかぐらいらしい。今日、集まったのは、43人だ。半分くらいの人が集まったという事だ。


歓迎会というより、街の寄り合い会で新しく来た人を紹介する。という形にしか見えないと、始まってから思う。

女物の服しか体に合わないので説明が少し大変だったが、いる人に挨拶と、菓子折りを渡し、自分が男であることを説明した。



暮らす


歓迎会が終わって、新しい朝を迎える。

「おはよー、羽織」

「うん。ところで……この家ミシミシ言いすぎじゃね?」

「確かに……」

「直そう!」

「えっっ?」

「どうせ、やることもないんだし、さ」

いきなりの提案で、なにもリアクションを取れない。

「ま、まぁいいけど」

こんなにあっさりと決まっていいのか、展開が早すぎるのでないかと思った。この理由をその時の僕は知る由もなかったのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ