第4章
強い意志
2人で迎えあた朝は、昨日の事がまるで夢とか、嘘っぱちとか、ドッキリだったのかというくらい快晴で、小鳥達の可愛い囀りも聞こえてきた。とりあえず、朝の身支度をしチェックアウトをした。
外に出ると、快晴とは裏腹に、とても静かだった。鳥の鳴き声、車の音、風の囁き。周りの音が何よりも鮮明に僕の心に残される。
僕達は、一部の人しか知らない、穴場スポットのような朝から開いている「ばいどず」というミニカフェに入った。僕らは、いじめっ子から逃げるためにここによく逃げ込んで、ご飯をもらっていた。だから、てんちょーとも仲がいい。(普段はますたぁと言っている)ちなみに、「ばいどず」というのは、ドイツ語で、「共に」という意味だそうだ。
カランカラ-ン
「いらっしゃい、羽織ちゃんに、風斗ちゃんじゃなぁい」
「お久しぶりです。ますたぁ、朝早くにすみません…、ちょっと色々あって、昨日夕飯食べてないんですよ。」
「あらあら、それはダメじゃない。じゃあ、サービスね、久しぶりの常連様のご来店だし」
これを断ると、男の作った料理は食べたくないのかって落ち込むので、何時も有難く頂いてしまっている。本当はお代ぐらい払いたいのだが。
「最近あってなかったけど、相も変わらずオネェだね、」
ますたぁはオネェだけどすごくいい人。
「ん、誰がオネェですって?ふ う と ちゃ ん ♡ ?」
「いやいや、ますたぁは、れっきとした乙女ですよ!」
「ちょっと待っててね、今作ってくるから」
「「はーーい」」
「羽織、本当にいいの?」
「ああ、母さん達が心配しないように、ますたぁに頼もう。俺達は普通に楽しく大学に行っていますってさ」
「それはいいんだけどさ、お金とかどうするの」
「2人で店でも出すかっニカッ」
「それもいいねー、あはは」
昨日のことは嘘なのかとまたもや思ってしまうくらい、羽織は元気に笑う。
「羽織……」
「どした。ここにいたいか?なら俺もここに残るぞ」
「いや、それはここには居たくないなあ。でも、羽織僕のために無理しなくていいよ。」
「心配すんなや、無理なんてしてねえからさ」
其の笑った顔は、本心だと僕にはわかった。
しばらくして、ますたあが戻ってきた。
「あらあら、仲良く何を話しているのかしら。私も混ぜて混ぜて~」
「それより先に、ご飯を」
「あ〜そうね、はい」
「ありがとうございます。」
僕達は美味しい、ロールキャベツに手をつけ食べていた。が、本来ここに来た意味を忘れてはいなかった。
「ところでますたあ~」
「なあに?」
「俺達、明日からここを離れる。だから、母さん達に大学に行ってるよーって嘘言っといてくれないか、聞かれた時だけでいいから。大学のうちだけ、卒業する年になったら、本当の事言ってもいいから。」
ますたあは、どうして?とかそうねえとか、色々相槌を打つタイプの人だけれど、今は、何も言わずに聞いてくれた。
「そうねえ…いいんだけれど、どこに行くの?」
「遠く、ごめん詳しくは言えないや」
「わかったわ、任せなさい☆」
「「ありがとうございます!」」
ますたあに深々とお礼をしてから、ささっとご飯を食べ店を出た。出発は明日。2人は急いで家に帰り、荷物をまとめた。