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外道が往く!  作者: 論田リスト
ファルシ攻略編!
4/29

友達を作ろう!


「坊や。お兄さんと遊ぼうか」

「え? お姉ちゃんは女の人じゃないの?」


「くくく……よく言われるがこれでも男なんだ。だが大した違いじゃないよ。

俺が産まれた国では、男も女も平等だったからね。些細な違いさ」

「はぇ~すっごい……」


 少年は伊月の話を聴くと、尊敬の眼差しを送る。この様子では、草原の外にも出たことがないのだろう。典型的な田舎者だ。


「自己紹介をしようか、俺は伊月というんだ。君の名前は?」

「僕はフルダ。お兄ちゃんはどこから来たの?」


言われて、少し考えるとそのまま答える。


「京都だよ。でも最近は大阪に入り浸っていたかな、仕事の都合でね」

「キョート……オオサカ……。聞いたことないけど、すごいね!」


凄くねえよ。


「ところでフルダくん。二人で話せるような場所に行かないか? ここで話すのも何だし」

「うん! 向こうに洞窟が在るんだ! そこに行こうよ!」


 ───やはり子供を騙くらかす位は訳無いな。チョロいどすえ。


 伊月は低い声でくつくつと笑うと、優しげな表情を覗かせて、フルダの案内に従って移動を開始する。集落から3.4km北へ、歩いて向かった。


 そこは草原とは違い、険しい山岳地帯のエリアが広がっていた。大小様々な岩が転がり、一部崖のように切り立った垂直な場所もある。


「着いたよ! あそこだ!」

「長かったね……」


 正直げんなりし始めていた伊月だが、目的達成のためには多少の労力は仕方ないと割り切って、フルダの言葉に従った。そしていよいよ、人のいない“二人きり”の場所に辿り着いた。


 しかし、そこへ突然「ぎぃぃ!!」という奇妙な叫び声が聞こえ伊月は警戒体制をとった。


 ───ちっ! なんかいるじゃねえか!


 心の中で悪態を吐くも、後ろ手にはエジンの持っていたナイフを持ち、何時でも戦えるように厳戒体制をとる。


「あっ、エルギィだ」

「エルギィ……?」


 言われて岩場の方を覗いてみると、毛むくじゃらの猿のような生物がこちらを見て跳び跳ねている。


「なんだあれ……」

「ぎぃぎぃ鳴くからエルギィっていうんだ。でも僕、あんまり好きじゃないんだよね。あの肉不味いから……」


 ───不味いのかよ。そんなものをエジンは俺に勧めていたのか。原始人めが。


 エルギィは襲ってくるわけでもなく、一定の距離から伊月たちを観察し、何をするわけでもなく、ただ鳴いている。恐らくは、縄張りに侵入した者に対する威嚇行動だろうか。鳴いて敵が去れば儲けもの、そういうスタンスなのだ。


しかし、


(うるせえ……)


 常に捕食者であった伊月にとって、被食者の声など聞くに耐えない騒音だ。苛ついた伊月が少しだけ殺意を漏らすと、エルギィは岩場の奥へと隠れていく。


 どんな世界であろうと、弱肉強食の原理は変わらないようで、エルギィは伊月を格上として理解し、縄張りを明け渡したようだ。


「さてと、フルダくん」

「なに?」


「もう一度聞きたいんだが、ここは俺たち意外誰もいないのか?」

「うん! 誰もいないよ!」


「そうか」


 その言葉を言った瞬間、伊月の手がフルダの首を絞め付ける。そのまま後ろへと回ると、腕を使ってフルダの首を圧迫する。


「う、うもぅっ……!?」


 人の首を絞めて殺すには、最低でも十分は掛かるため長期戦になるだろう。エジンから奪ったナイフで殺さないのは、同情心からではなく、単に遺体(そざい)を傷付けたくなかったからだ。


 伊月は容赦なく首を絞め続け、フルダの呼吸を塞ぐ。フルダは足をジタバタとさせて抵抗するが、子供の力だ。貧弱とはいえ、大人の力に敵う筈もない。


 段々と脳の酸素が枯渇していき、やがては酸欠となり、意識を失う。十三分と三十秒後、フルダは息が止まり死んだ。


伊月が手を離すと、前のめりになって地面に崩れる。


「ふう……やはり、人を殺すのは大変だな。骨が折れる作業だ」


 言いながら、フルダの遺体を仰向けに転ばせると、素早く次の工程に移る。もしも人間を素材に使えばどうなるのか、その実験を行うのだ。


「創造召喚」


 スキルの使用を行い、フルダの周りをオーラが覆っていく。するとフルダの遺体に変化があった。


 遺体の全身がブクブクと肥大化していき、あっという間に元の三倍以上の大きさに変わっていく。


 そして、腕や足の関節部分が裂けていくと、肉の表面が露になり、身体の中央は一直線に開かられた。


 そこから内臓や骨が飛び出して、途端に周囲に異臭が立ち込める。生ゴミが腐ったような腐敗臭だ。フルダはそのまま立ち上がると、謎の液体を垂れ流しながら伊月の前に立ち尽くす。


 そのあまりに醜悪な外見に、伊月は思わず叫んだ。


「酷え! なんだよこれ、気持ち悪ぃ!」


 まさかこうなるとは予想していなかった。折角遺体を綺麗なままで残しておいたのに、これではまるで意味がない。鼻をひん曲げるような悪臭に顔をしかめて距離を取ろうとすると、フルダの顔が身体と同じように裂けて口のようなものが動いた。


「オニイチャン、アソボ」

「黙れ! その外見で喋るな!」


「ウウゥゥゥゥ……」


 フルダだったものは低い声で唸り、退屈そうに頭をふらふらとさせる。伊月はなるべく離れてからスキル『鑑定』を行った。


名前: なし

種族: 腐肉達磨(ミート・ダン)

Lv: 1(0/100)

HP: 45/45

MP: 20/20


固有スキル:なし

スキル:『魔言語』Lv1『腐食感染』Lv1『裂傷』Lv1


魔法:なし

耐性:なし

状態:従属 (ゲドウ イツキ)


「うわあ……」


 何とも言い難い。これが強いのか弱いのかもいまいち分からないが、近くに居て欲しくない。それだけはハッキリとしている。


なので、この謎の妖怪に命令を下して、エルギィを狩ることにした。


「エルギィだ。エルギィをやれ。倒したら遺体を持ってこい」

「アイ! オニイチャン!」


 お兄ちゃんって呼ぶな。


 妖怪フルダはズカズカと歩きだし、岩場の方へと突っ込んでいく。エルギィからすれば失禁ものだろう。


 遠くのほうで「ぎいいぃぃぃ!!?」という絶叫が聞こえ、それから数分後のこと。妖怪人間フルダは、再びズカズカと歩いて岩場を登ってくる。


その口にはエルギィを抱えて。


「やめろ! それ以上近寄るな!」

「ウウゥゥ……」


 岩場を登り切った瞬間、制止をかけて怪物フルダを下がらせる。頂上にエルギィだけを残させて、伊月はそこに足を運んだ。


「うわっ、臭い移ってるじゃねえか……創造召喚……」


 今度はエルギィを素材にして、創造召喚を行う。今度はマトモな兵隊になることを期待して、オーラを飛ばした。


「頼むぞ……」


 エルギィの毛むくじゃらの身体から、毛がごっそりと抜け落ちていく。見た目で言えば無毛猫(スフィンクス)のようだったが、それもすぐに変化する。


 皮膚は薄灰色から真っ黒に染まっていき、元々ガリガリだった身体がミイラのようにスカスカになっていく。全身から水分が抜けているようだ。


「さっきよりはマシだな。鑑定……」


名前: なし

種族: 骸骨猿(マミー・ギィ)

Lv: 1(0/80)

HP: 20/20

MP: 0/0


固有スキル:なし

スキル:『魔言語』Lv1『引っ掻き』Lv1


魔法:なし

耐性:『耐火属性弱体化』Lv1

状態:従属 (ゲドウ イツキ)


 人間(フルダ)よりも明らかに弱い。元となった素材があまりに貧弱なため、創造召喚しても弱い個体になったのだろう。


伊月は二人の(しもべ)に命令して、更に素材をかき集めた。この近辺にはエルギィの他にも蠍や蜘蛛のような生物がいたので、それらを創造召喚の材料にしていく。


 これで分かったのは、創造召喚で召喚する伊月のMPは2。しかしそれ以上にMPをつぎ込むと、使い魔のレベルが上がっていく。


 そして、素材を一つだけではなく、二つ以上組み合わせていくと、使い魔は素材全ての性質を持った生物に変化していくこと。


そうすれば、


名前: なし

種族: 岩殻(アーチ)(・ギィ・)蠍猿(スコーピオン)


Lv: 1(0/120)

HP: 45/45

MP: 0/0


固有スキル:なし

スキル:『魔言語』Lv1『魔素毒』Lv1『引っ掻き』Lv1『硬化』Lv1


魔法:なし

耐性:なし

状態:従属 (ゲドウ イツキ)


 このようなキメラが誕生する。その辺の岩と蠍とエルギィを素材にして作られた使い魔。スキルは豊富だが、その分伊月のMP消耗が激しく、回復するまで待つことにした。


 その間、再び使い魔たちに命令を下して、獲物を狩っていると、伊月の身体が突然軽くなった。


「ん? なんだこりゃ」


名前: ゲドウ イツキ

種族: ヒューマン(純血)

Lv: 2(13/240)

HP: 18/18

MP: 95/95


固有スキル:『創造召喚』Lv1


スキル:『世界言語』Lv10『鑑定』Lv10『人心掌握』Lv1『商人』Lv1『剣術』Lv1


魔法:『精神汚染』Lv1

耐性:『疫病耐性』Lv1

状態: 正常


 情報を見ると、レベルが上がっていた。伊月は全く動いていないので、経験値は入らない筈だが、現にレベルは上がっている。ということは、狩りに行った使い魔たちの経験値が、伊月の経験値として反映されている可能性がある。


「くくく……これは嬉しい誤算だな……」


 これをやり続ければ、働かずして兵隊を作り続けることが出来る。伊月は夜が来るまで、狩りをし続けた。


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