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外道が往く!  作者: 論田リスト
アランドール侵略編!『ハラペコ・ヌエバ・ヘネラシオン』
28/29

商談成立!

 夕日が沈んでいくスラム街周辺のエリア。野良犬や夜盗の闊歩する危険な街中とは裏腹に、豪華な屋敷を構える闇の富豪たちが集まる裏世界。違法な財で作り上げられたその屋敷の中では、娼婦たちがストリップをしていた。


 ゴウマンと呼ばれる闇商人は大麻とタバコの密売で財を成した男で、女癖の悪さで裏社会では有名だった。それゆえ、使いきれないほどの財産を毎日のように屋敷で女たちを漁り、快楽を貪っていた。あらゆる贅を凝らし、10代の若い女たちを囲う生活を続けるうちに、ゴウマンの身体はみるみるうちに太っていった。


 それを見て笑ったものは今まで何人もいたが、ゴウマンは決して許さなかった。依然雇った若い庭師はゴウマンの前でにやけ面をしたせいで、顔の皮を剥がされ、今も地下室に監禁されている。


 ほかにも様々な理由でゴウマンを不快にしたものは、残虐な方法で拷問され苦痛の中で命を落としていった。


「わっはっは! ナルバスの酒はうまいな! 来週はもっと仕入れろよ!」


 若い男に言いつけながら、ゴウマンは攫ってきた少女を犯す。辺境の都市から送られてきた混血の少女は、ぐったりとしたまま男の動きに合わせて頭を揺らしている。すでに衰弱しているのだが、男は構わず腰を振った。


 使用人である若い男は、なるべく視線を合わせないようにして部屋から出て、蒸留酒の保管部屋へと移動する。少しでも遅れれば物理的に首を切られるため、急いで向かっていた。


 その時、突然前から黒い塊が現れて男の頭部に命中する。岩にぶつかったような鈍い音がした後、血を流しながら男は倒れた。


「ああ…やっちゃった……」


 アスラは震える手で麻袋を手放す。その袋には庭で拾った石ころが入っており、振り回せば凶器として十分な殺傷能力を持っていた。隣にいたゴッゾと目が合うと、お互いに青い顔をしながら歩き出す。


 今から20分ほど前、アスラとゴッゾはゴウマンの屋敷の裏口から侵入し、一目を避けながら屋敷の最上階を目指していた。あまり護衛がいなかったのは、ゴウマンが屋敷の内部には護衛を入れたくないからだったのだが、それが裏目に出ていた。寝首を掻かれたくないあまりに、自分の近くには傭兵は置きたくなかったのだ。


  その結果、アスラとゴッゾの侵入をここまで許してしまったのだ。


「随分進んだな」

「伊月の旦那ッ!?」


「ボス、もう来たんですか!?」

「これでも急いできたんだよ」


 伊月は外にいた護衛を一人ずつ、後ろから襲って減らし確実に息の根を止めて回っていた。万が一にも息を吹き返さないように、遺体の頸動脈を切断していたので、屋敷の外では血まみれの死体が14体も転がっている地獄絵図だった。

 

 伊月は後から死体をキューブに吸収するつもりだったので、殺すだけ殺したらさっさと最上階に上がってきたのだ。


「くくく…行くぞ、てめえら」


 悪魔的な笑いをした主人を前に、なすすべもなく付いていく二人の従者たち。伊月は顔はどう見てもかわいい女の子なのに、貫禄が王族並みにあり、平気で人を殺せる度胸を持った異邦人だ。


 アスラはその不思議な主人を前にして、ある考えを持つようになった。


(この人なら、カルテルに勝てるんじゃないか……?)


 かつて自分たちの住んでいた土地に土足で入り込んできた無法者たち。彼等にはとても戦力では敵わないが、同じ違法人の伊月なら彼等を止めてくれるのではないだろうか。そんな考えを他所に、3人はゴウマンたちの部屋へとたどり着いた。


「あん? 商人の部屋かと思ったら、ただの豚小屋だったか」

「旦那……あれがゴウマンです……」


「くくく、この国じゃあブタでも商売が出来るんだな」


 伊月の後ろではアスラとゴッゾが青い顔をしながら、視線を下に下げた。どう考えても、伊月の態度が取り引きをしに来た態度ではなかったからだ。アスラは「またか…」と思いながら、腰に掛けたナイフに手を伸ばした。


「き……きさまッ……!!」


 ゴウマンはあまりの怒りにうち震え、犯していた少女を手放し、その巨体で立ち上がる。


「何をやっている衛兵どもぉぉ!!! このクソ女をさっさと始末しろ!!」


 叫び声をあげるゴウマンに対して、部屋の中では倒れた少女と壁の隅で怯えるストリッパー嬢たちが震えているだけだった。それから何度か、ゴウマンは応援を呼んだが、誰一人として部屋に入ってくるものはいなかった。


「あーあ、こいつはダメだな。リスク管理も碌に出来ねーとは。万が一に備えて奥の手の一つや二つはあるかと思ったが、ただのブタだったか」

「き、貴様さっきから私のことをブタ呼ばわりしおってクソガキが! 私を誰だと思っている!?」


「家畜に名前を付ける趣味はねえよ」


 伊月はそう言うと、腰に掛けたポーチから肉肉しいキューブを取り出した。それを潰して床に垂らすと、ボコボコと奇怪な生物が生まれていった。


「よっしゃメヒコ1号! あのブタをタコスの具材にしてやりな」

「キィエエァァ!!」


「ひえぇぇ!!!?」


 その化け物に威嚇されたゴウマンは、恐怖で失禁してしまう。しかしすぐに逃げようと走り出したが、思うように体が動かなかった。普段から引きこもっているせいで身体は鈍り、脂肪が邪魔で上手く走れなかったのだ。

 

 漸く5メートル進んだ時、バランスを崩して床に転んでしまったゴウマン。その後ろからメヒコ1号が飛び掛かり、両手のブレードで肉をそぎ落とした。


「いだぁぁぁ!!!? やめてくれぇぇ、頼むぅうう!!」


 必死に命乞いをするゴウマン。しかしそれを見ていた伊月は、手を叩きながら笑っていた。まるでベーコンの加工工場のように肉がスライスされていく様は、伊月にとっては笑いの種でしかなかったのだ。


「はははは!! 見ろよ、ブタが命乞いしてるぜ!」

「あ、あはは…!」

「お、面白い! 面白いですね旦那!」


 最早、二人の従者たちは、伊月には絶対に逆らわないと誓っていた。


「ごめんなさいぃぃ!! ゆるしてくださいぃぃ!!!」


 腕を切り落とされたゴウマンは頭を床に押し付けて、頭を垂れた。そこでようやく伊月は、追撃をやめさせた。アスラに椅子を持ってこさせ、ゴウマンの前に座る伊月。


「オラ、クソブタ。最初に言っとくが俺は女じゃねーからな」

「はいぃぃ!! 何でもいいですぅぅ!!」


「何でもいい訳ねえだろ、オラァ!」


 伊月がゴウマンの頭を蹴り飛ばすと、ゴウマンの奥歯が宙を舞った。


「ああああ!!?」


 痛みと貧血で意識が飛びかけるゴウマン。しかし伊月はその状態をいたわりもせずに、ゴウマンの頭を靴で踏みつける。あまりの暴力性に、アスラたちは目を逸らしていた。かつて、この地区で最も恐れられた闇商人のゴウマンが、こんなにも命乞いをする無様な姿になるとは想像も出来なかった。


 これでは最早、どちらがバスカル地区を束ねるボスなのか分からないほどだ。


 伊月はその後、ゴウマンに隠し資産の在処を聞き出し、ついでに指をへし折った。それから1時間もすると、屋敷内に隠された金銀財宝が山のように出てきた。これは全て犯罪で稼いだ違法な財産だった。


「これで全部か? ブタちゃんよー?」

「ころ……して……」


 ゴウマンは既に意識が途切れかけていた。そこで伊月は腰からサーベルを抜くと、ゴウマンの首に躊躇なく刺しこんだ。

  

この主人公チンギスハンみたいな性格してるな

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