ミミズを倒そう!
指に挟んだ二つのサイコロ。
それは二人のメキシコ人を加工して作られた。
スキルの定義上はそのサイコロは生物であり、伊月の命令を聞く奴隷であるが、生前の面影などどこにもない。最早ただのサイコロステーキだ。
伊月はその2つのサイコロを左手に握り込むと、そのままグチャリと握り潰す。これは何処にでも持ち運びが出来る携帯生け贄の役割を持った生物だ。
なので使う時には必ず潰して絶命させ、素材として再召喚するのだ。
「創造召喚」
こうして汚れた赤黒い肉片は地面に落ちると煙を出しながらボコボコと隆起していく。
「キィエエァァァ!!!」
奇声を発しながら産まれたのは、両腕が刃と一体化し、足が山羊のような蹄と毛で覆われた羊脚。頭は無数の眼で覆い尽くされた奇怪な生物。
どう見てもただの化け物だ。
しかし、伊月の流した大量の魔力と二人の固有スキルを持った異邦人を掛け合わせて作った使い魔であることは確かだ。
「やべえ、見た目がキモすぎる…」
あまりの化け物ぶりに唖然とした伊月だがすぐに思い直し、命令を与えた。“あのミミズを倒せ”そう伝えると化け物は器用に羊脚でがに股走りを行い、『ハムラァ』と呼ばれる巨大ミミズの元へいく。
すると砂漠を走る生命体の温度に気付いたハムラァがメヒコ1号に襲い掛かる。するとメヒコ1号は奇声を挙げて構えを取る。
「キィアアアッ!!!」
大振りなブレードの一撃。それはハムラァの頭部を正確に捉え、牙もろとも一刀両断にした。
「いいぞ、その調子だ!」
メヒコ1号と名付けたその使い魔はハムラァの頭から順に両手のブレードで切り刻み始めた。緑色の血液が四方八方に飛び散りミミズの体は原型をとどめない程にぐちゃぐちゃになっていく。
「やっぱ化け物には化け物ぶつけるのが正解だな」
キューブを作った時点で確認していた二人のメキシコ人の情報。アレハンドロの固有スキル『物体追尾』、そしてリカルドの固有スキル『斬鉄』この2つが合わさった結果、正確な命中率を持った斬殺モンスターが産まれた。
一方でもう一匹のハムラァと戦うオスロは大槍を振るい、ハムラァの腹部を切断し、飛び散る内臓をぶちまけていた。どうやら勝利したらしい。
「こんな所で死んでたまるかっての。おい、アスラァ! 被害状況は?」
少し離れた所にいたアスラに声を掛けるとビクッとしたような姿勢で此方に振り向く。
「に、荷車に被害はありませんっ! 仲間たちも無事です!」
「よし、一先ずは乗り越えたな。あとその武器貸せよ」
「え…」
伊月が要求したのはアスラの所有している伊月の背よりも長い斬馬刀だ。アスラは一瞬、自身が殺されるのではないかという疑念を抱いたが、直ぐに刀を明け渡した。
もし抵抗したとしても負けるのはわかりきっていたからだ。伊月はその斬馬刀を引きずりながら歩くと、ニヤリとした笑みを浮かべる。
そのまま助走を付けて刀を引きずり、渾身の力で斬撃を撃ち込む。獲物に当たると鈍い音が響き、メヒコ1号は首を切断された。数メートル飛んでいく首を眺めると伊月は言った。
「よし、じゃあこの遺体を運べ」
「わ、分かりましたっ!」
何が何なのかまるで分からない。しかしアスラは後に知ることとなる。この世界で最も邪悪な者は魔族などではなく、自らの仕える主人であるということに。
「さっさとしろよ、もうじき夜が明ける。そしたらアランドールの首都“アーバンモロー”に行くぞ」
「はいぃっ!」
その後遺体は頭部と胴体に分けられ、二体のハムラァを吸収して再び伊月のポーチへと収まった。
◇ ◇ ◇
この大陸には五つの大国がある。
豊富な自然を抱え、農業に力を入れる獣人の国『バルトゥール共和国』。
北方の大地を支配し、強大な軍事力を持つ『ダスニア帝国』。
楽園と称される西の豊穣な大地を持つ大国家『カティア第三帝国』。
最も侵略的であり野蛮な民族が作ったと云われる『ダルキア王国』。
そして工業力に特化し、大量の武器を生産できるドワーフの末裔と云われる民族が作った国『アランドール王国』。
これらの国は覇権と祖国の領土を守るために、争いと憎しみの歴史を今日まで繰り広げてきた。多くの村と小国が消え、虐げられる民族と支配する民族との格差が生まれた。
それはこのアランドール王国の王都『アーバンモロー』でも例外ではなかった。300年前の前王朝の崩壊で支配者層が入れ替わりドワーフの血を引く民族“ヴェスト”が王となり、この国を支配している。前王朝の血筋は淘汰され、その支援者たちも多くが処刑されたのだ。
元々この都市にいたタナト人と呼ばれる民族は強烈な差別に遭い、王宮からもっとも離れた東エリアの貧民街に隔離された。彼等は貴族や豪族を含めて農奴に落とされ、女は娼婦としてヴェストの民に献上されることなる。こうした実質的な民族浄化が行われ、300年の間に400万人いたタナト人は90万人にまで減った。
無論ほかの都市でも同じような状況なので、彼等は毎日を陰鬱としながら過ごしている。
ただ家族と平和に過ごし、厳しい税をやり過ごして平穏な余生を送る。これがこの都市のタナト人の願いだった。しかしそれをよく思わないものが、この東エリアに巨大なスラム街を築きあげた。独自のコミュニティにはよそからやってくる流れ者とタナト人の低所得者の坩堝になっていた。
「アルマンド、今月の上りがどうだったか知ってるか?」
「知ってますよ、先月より減ったんでしょう。若様」
「ハハハッ!」
掠れた声で笑うのはカルテルと呼ばれる組織の幹部、というよりはその後継者である男。ダン・レガリロ・クレメンス。カルテルの大ボスであるエル・リブロの息子だ。
「笑っちまうよな? 流れ者の異邦人に喧嘩売られてるんだぜ?」
「怖いもの知らずって世の中にはいるんですよね」
ここはスラム街の中にあるホテルの一室。元々いた店主を殺害し、娘に無理矢理経営させ、そこに時たまダンは現れる。彼らの目的は定期的にスラムの人間たちに接触し、彼等に恐怖を与えて従順にさせることだ。
ダンは娘主人の髪を掴んで、自分から腰を振るように強引に促した。今やっていることも恐怖政治の一環だ。
「もっと穴しめろよ、芋娘が!」
「ひぃッ!」
一年前カルテルがここに来た時にスラム街の人間と抗争になったが、結果はカルテルの圧勝だった。
彼等は捕虜をとらえると見せしめのように、広場で処刑を開始した。スラム街のまとめ役だった男は最初に両耳をナイフで削ぎ落されてから腕を鋸でゆっくり切断された。
それでも意識があったが今度は顔の皮を剥がれ、ついでに両目を抉りだされて最後に足をマチェットで乱雑に叩き切られた。
そのあとは彼の家族や、一緒に戦ったメンバーも同様に処刑された。中には5歳の子供もいたが失禁しながら首を切断された。
恐れをなした住民がアーバンモローの街中に行って助けを懇願したが、タナト人がいくらスラム街で死んでもヴェストの民は助けてくれず、派兵を断られた。
彼等は国家に見捨てられたのだ。
ダンたちはスラム街の人間たちに賠償金と称して金品を巻き上げ、若い女を娼婦として差し出すように命じた。無論逆らったものは見せしめとして残虐な処刑に合わされタナト人の抵抗力を徹底的に削いでいった。
それからダンは娘主人をレイプしたあと、大麻を吸って上機嫌なまま次の集金先に向かった。まるでN●Kのように強引な手口で次々と住民からお金を奪っていく。
ホテルに残された娘主人は虚ろな瞳のまま、調理用のナイフを持ち自分の首に押し当てる。じっとり赤い鮮血が流れていく。
(誰か助けてよ……)
数時間後、ホテルで若い女の死体が発見された。。
頑張ってPV伸ばすよ(*‘ω‘ *)
ご協力お願いイタシマス( ^^) _旦~~