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外道が往く!  作者: 論田リスト
ファルシ攻略編!
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プロローグ!

 蒼天堀の大通りを塞ぐ二台の高級車。目立つ赤色のフェラーリと、闇のように深い色のキャデラックだ。その両車の間には、二人の男女がいる。


 すらりとした美脚を惜し気もなく晒しだして、胸元を強調するような衣装。首には黒色のチョーカーが付けられており、一目見ただけで強烈な印象を残すファッションだ。


唇には血のように真っ赤な口紅を塗り、貴婦人めいた妖艶な色気を出している彼女は、表向きはアパレル系のビジネスを展開する女社長という顔を持っているが、その裏の顔は、大阪に巣食う闇の商人だ。


 流通、賭博、売春、銃の密造等を掌握する道頓堀の悪女。


 その名を喪神(もがみ)千両(せんりょう)という。


「ねえねえ、外道(げどう)さん。そろそろ潮時だと思わない? 私たちは共存するべきなのよ」


 そう言って微笑みかける姿は、男であれば誰でも気を許して仕舞いそうな仕草である。だが、正面から相対するこの男には、一片足りとも通用しない。


「くくく………共存? 嗤わせんなよアバズレ。稀代のビッチが腑抜けになったか? あと俺は外道(げどう)じゃねえ、外道(そとみち)だ」


「うふふ、お姉さん困っちゃうわあ。大人には落とし所ってものがあるのよぅ。外道(げどう)ちゃん?」


 男は電動の車椅子に腰掛け、両腕を肘掛けに置いている。その両手の十本の指には、それぞれ違ったブランドの禍々しい指輪が嵌めらめており、カチカチとした金属の擦れる音を、常に発生させていた。


直立すれば背は160半ばほどで、平均身長よりも小さい。身体は華奢と言われる程に薄く、肩の辺りまで伸びた髪は、濡れ鴉のような光沢を持ち、漆黒を見事に具現化したように黒い。


 その男は、男であり、男にあらず。


「はっはっは! 悪人が和平を望むなんて有り得ねえ! 恥を知れアバズレ」 

「あらあら、思春期の女の子は大変ねえ。生理痛かしら?」


外道伊月はどう見ても女の子である。

否───男の娘である。


「てめえ………さっきからおちょくりやがって。飛田新地に沈めるぞ、アバズレ」

「そこは私の管轄よ。そもそもどっちかというと、貴方の方が人気出そうじゃない? 変態な親父とかに……うふふ」


「くくく………面白え。お前のそういうところ好きだぜ、千両さんよ」

「え……」

「え?」


 二人の間に微妙な雰囲気が流れる。それを察してか、近くにいた喪神の部下は携帯電話を差し出し、喪神に受け取るよう促した。


「こ、これはこれは、ご機嫌よう。私、今忙しいのだけれど、緊急の用かしら? え、あ、そう? いいわ、やってちょうだい」

「ん……終わったか喪神? 俺はお前と違って暇じゃねえんだよ。早くしな」


 そう言うと、車椅子から降りてフラフラと歩きながら、キャデラックに腰掛ける。


「失礼したわね。それじゃ始めましょ、大阪と京都の犯罪戦争。私はこの戦いを───」


 そこから先の言葉が紡がれることは無かった。喪神がいた場所に10トントラックが納車(・・)されていたからだ。それはドライバーの居眠りによる追突事故。それに加えて伊月もただでは済まなかった。


 元から虚弱体質である伊月は、無理に身体を動かして地面に転ぶ。そこへは新手の車両が猛スピードで迫っていた。


────プリウスである。


 それは飲酒による蛇行運転だった。今や大阪は喪神千両と外道伊月によって、世界有数の犯罪都市となり、警察すらも彼らを恐れて逮捕出来ない。


ありとあらゆる犯罪は黙認され、悪逆無道の限りを尽くす彼らに習い、今では誰もが犯罪を犯している。


故に、こんな事故は大阪では日常茶飯事だ。  


「いいね彼、家に貰っていい?」

「いいっすよー」


 誰かの話し声が聴こえた後、伊月の意識はプッツリと切れた。

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