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幼馴染みとの恋を昇華させるには  作者: ウィング
うたと霙澪の関係
9/20

詩尋の仕掛け

明日入学式です〜。(2017/04/05)

いまだ入学前課題が終わらないっていう(笑)



今週ももう金曜日になった。

今朝も、うたと共に登校する。が、私はおかしなままだった。

うたも少しおかしかったけど、どんどん反応が変になっていく私を見かねてか、月曜日ほど変なうたは、もういなかった。


滞りなく授業も終わり、ざわつく教室内で帰る準備を進める。

明日は、立水家に遊びに行く予定だ。受験生になった時から遠ざかっていたのでかなり久しぶりになる。

桃桜も来るみたいだし、うたの妹の奏璃かなりに会えるのも楽しみだ、と明日に思いを馳せていると


「柊霙澪さん?少しいいかしら」


凛とした声が聞こえた。

私を呼んでいる。

なんだろう、と声のした方角を見ると、驚くことにB組にいるはずの各務原美璃がいた。

私を、値踏みするような目で見ている。

この学校は特に厳しいわけではないので、お互いのクラスの行き来は自由だ。


(だが、なぜ私の所に…?)


否、うたのことだろう。

クラス内は彼女の出現に湧いていた。


「きゃー!ついに⁉修羅場だわ!」


「私、柊さんに1票‼」


「私もですわ!」


教室の至るところで女子の声が聞こえる。男子同士も顔を寄せ合っている。

そして、彼女達は抑えてるつもりであろうその高い声は、地獄耳な私の耳に次々と入ってくる。


(…修羅場、なんだろうか)


だが、私には婚約者がいるし、うたにも好きな人がいる。

皆の勘違いだと、全てを説明したい衝動に駆られるが、 そんなことでは彼女は止まらないだろう。

以前に似たようなことを何度か経験しているので分かる。


私は正面からぶつかる覚悟を決めて、既にまとめ終わった荷物を持って立ち上がった。





私が今いるのは、ちょっと高めのカフェ(?)だ。しかも個室。

そして向かいには、例の各務原美璃がいる。

テーブルの上には、私のアイスティーと彼女の抹茶ラテがおいてある。

ここに来てから、もう10分ほどが経った気がするが、まだほとんど話していない。

注文が決まったかの確認された時だけだ。


気まずさから俯きがちの私には、彼女の表情は見えない。

更に30秒ほどたって、私は沈黙に耐えきれずにアイスティーを手に取った。


「…柊さん。そんなに緊張なさらないで?私が悪いことしている気分になってしまいます」


「えっ、あっ…いや、す、すまない!こういう場所に来ることも初めてだし、一人ではないのも初めてで…」


友達が皆無の私には、カフェは縁遠い場所なのだ。

遊ぶのは立水の二人だけだし、こういうところよりも家の方がよっぽど設備が整っているため、本当に来たことがないのだ。

…悲しきかな。


「そうですか、では、本題ですが」


「あ、ああ。……うたのことだろう?」


「やはり、知っておられたのですね。…はい、既にご存知のようですが、私は、立水詩尋君を好いております」


彼女は、私の目を見て言った。


「……」


「それでお話というのが、詩尋君の彼女である貴女に、彼に告白する許可を得ようと…思ったのですが。」


ちょっと待て。…彼女?告白?


「あの、」


「もちろん、これは横恋慕をしてしまった私の不始末です。貴女は、断ることもできます」


「いや、ちが」


「?」


「あの、貴女は勘違いしている。私とうたは、付き合ったりなどしていない。だから私に許可を取る必要も…」


「まあ、そうでしたの?ごめんなさい。私ったら、毎朝ご一緒に登校したり、彼の仕事のない日は家の前まで送ってらしてると聞いて、つい、勘違いを…」


「いや、気にしないでくれ…」


「ありがとうございます。…そうと決まれば、明日にでも告白してみようかしら。彼の休日を削ってしまうけれど…」


彼女は、とても楽しそうに思案する。


(恋とはこんなものなのか。…ん?明日⁉明日って…

はあ、うたはああいうけれど、呼び出されたら出て行くのだろうな。どうせ、私だし。あ、また…)


胸がチリッとなる。

今回は、一回じゃなく断続的になる。


「ああ、頑張ってくれ。微力ながら応援している」


心が重く、違和感がある。

頭と心の間に壁があるような。私が私じゃないような。


自分が何を話しているのかが分からない。世界に置き去りにされたような感覚。

私の知らないとこで、私が各務原さんと会話を交わしていく。


「___では、そろそろ帰らしていただきます。お会計はしておくので…」


正気にかえる。


「えっ、いや、私が…」


「勘違いをした私が悪いんですもの。私が払います」


「私だって貴女に勘違いさせたんだ。私が払おう」


「そうですか?では、自分の分だけでも払わしていただきますわね」


「ああ、了解した」


私は彼女と共に立ち上がらなかった。

否、私は立ち上がることができなかった。

先ほどの違和感に呆然としていたのもあるが、信じられないことに、私は彼女の姿を見たくないと、ふと思ってしまった。

愕然とした。

頭が混乱して、グルグルしている。


「なんなんだ?一体…」


私は、その後も五分ほどカフェで混乱してから、明日にでも桃桜に相談しようと決め、やっと腰をあげた。





その日から、各務原さんと似たような事を聞かれることがだいぶ増えた。

一人で聞かれることも、複数人で聞かれることも、好奇心で聞かれることも、敵意まるだしで聞かれることもある。


また、チリッを感じることも増えた。

桃桜に相談しても、自分で考えるものです、と教えてくれなかった。


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