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幼馴染みとの恋を昇華させるには  作者: ウィング
うたと霙澪の関係
8/20

詩尋、頑張る

パーティから二日経ち、今週も学校が始まった。

結局、私の婚約者騒ぎで、うたと各務原さんの話はできなかった。

うたは機嫌が悪いというか、落ち込んでる様子だったし、桃桜も何か考えているようだった。


今週は、今日と水曜日がうたの仕事が休みだ。

うたは、初めて私と同じ学校に通えることがよほど嬉しいのか、仕事のない日は一緒に帰ろうと誘ってくる。お互い部活動には入っていないから、うたが飽きるまで続くのだろう。

まあ、私も初めて同じ学校に通うことができてうれしいけれど。


婚約者の件は、家に帰ってから真剣に家族と話し合った。けれど、わたしの覚悟を話したら、微妙な顔をされたけど特に否定的な声はなかった。


また、立水家でもなにやら動きがある。

柊家のトップの私の父親と、父の手伝いを既に始めてる兄は、この話があったことを私に話してくれたとき、「やっとか…」と、遠い目でしきりに呟いていた。

話の内容については、今の私には見当もつかないけれどいつか分かるときが来るらしい。



学校に行く前、準備が待ち合わせの時間より早くに終わったので、のんびりとそんなことを考えていた。

すると、


「霙澪様、詩尋様がご到着になりました。どうぞ玄関へ」


玄関付近が持ち場の執事が声をかけてきた。


そう、うただ。立水さんとこの詩尋うたひろ君だ。

この前の婚約者の騒ぎから昨日の夜まで、ショックを受けていた様子のわりには連絡アプリでの会話もメールも無かったと思っていたら、夜寝る前に電話が来た。

内容は簡潔に、『明日から学校に一緒に登校しよう』というものだった。そして、特に異議もなかった私は何も考えずに了承した。


今思えば、全て計画の内だったのだろう。


「うた、時間通りだな。おはよう」


広い玄関に制服姿のうたは居た。


「おはよう。流石に初日だからね。でもみぞれだって、すぐ家から出てきた」


「だって、迎えに来てもらう身で遅刻なんて論外だろう」


「みぞれらしいな。でも、そういうみぞれもたまには見てみたいな」


「またどうして…」


「えー?だって滅多に見れないし、可愛いだろうから」


「またそんな…どこで覚えたんだ?」


「いっとくけどお世辞じゃないよ?みぞれ。事実」


「……うた?頭打った?」


うたが変だ。今までこんなお世辞を言うことは何回かあったけど、こんな引かないうたは初めてだ。

いくら幼馴染みだっていっても、そんな事言って許される時期はそろそろ過ぎるのに。


「…みぞれは謙虚だね。でも、事実だよ。」


「まあ人が見れる顔だとは自覚しているが、うたが言うほどじゃないぞ?」


なんたってうたは、今をときめくモデルのヒロでもあるんだし。


「今日はそういう事にしとく」


「…そういえば、うた。あのウワサは聞いたか?」


パーティで聞けなかった、あのウワサについて聞いてみる。

…というのは言い訳で、話を逸らさないとそろそろ赤面しそうだったのだ。


各務原美璃かがみはらみり?」


「なんか、クラスの女子たちに誤解されてたからな。各務原家の人だ。誠実に扱え。私も巻き込まれてるし」


「みぞれの方が地位高いのに?」


確かに、家柄は私の方が断然上だが。


「私とはただの友達なんだから。女性の恋心を無碍むげにするな」


「じゃあきちんと振ればいいの?」


「え、振るのか?」


「うん。だって俺、ずっと好きな人いるし」


____衝撃の事実。こんな長く一緒に居たのに…し、知らなかった。

__そして、なぜか、胸にチリッとした痛みが走った。


「えっ…?」


「みぞれ、知らなかった?」


イタズラが成功した男の子のような笑みを浮かべたうたが、私の顔を覗き込んでくる。だが、思ったよりショックを受けたらしい私は、


「し、知らなかった…

わ、悪かったな、好きな人が居るのに私に構わせて…嫌だったろう?」


こんな、噛み噛みのぎこちない返しをすることしかできなかった。


「んー?全然いいよ。俺にとって、みぞれは特別な女の子だから」


なぜか、みぞおちの奥の辺がキュッとなった。

最近のうたは変な感じだ。それにつられて、私も変になっている気がする。チリッとかキュッとか。


「誤解されるぞ…」


「うん、そうだね」


なぜ、こんなにも平然としてられるのだろうか。嬉しそうにすら見える。


あれ、もしかして脈なしだったり…いや、ないな。

こんないい男を振る女子がいるとは思えない。

私の自慢の幼馴染みだし!


「みぞれ、学校着いたよ。…ん、思ったよりいい反応してくれて嬉しいな。じゃあ、みぞれ。帰りに、また」


「あっ、うた…」


学校についた途端、うたはよく分からない言葉を残してさっさと行ってしまった。





教室に入って、授業が始まってもボーッとしていた私は、いつもより教室の皆(主に女子)がコソコソと私を見て話していたことに気付かなかった。






いつも読んでくださりありがとうございます。

アクセスが、更新の度に一定数あってすごく嬉しいです。今後もよろしくお願いします。

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