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幼馴染みとの恋を昇華させるには  作者: ウィング
うたと霙澪の関係
16/20

尋問

 うたに手を引かれて桃桜みおうの邸を出る。

 彼の部屋に行くのだろう。二人きりだなんて、いつぶりだろうか?

 いつも、桃桜や奏璃がいたから、そんな機会はめったになかった。


 ___うたを避けていた罪悪感もあいまって、顔を直視できない。


 それに…今の私は、詩尋への気持ちを自覚しているのだ。触れている手、その温もり、漂ってくる匂い、こんな私にも気を遣って速さを緩めてくれている足音。すべてが愛おしく思えてきてしまう。


「みぞれ?入って」


 いつの間にか、普通の高校生ならばあり得ない程広いうたの部屋に入る。

 うたの部屋には、おおまかに3つの部屋がある。

 寝室兼趣味のもの等が入っている部屋、少し小さめの勉強部屋、そして、リビングのような、ソファーと大きなテレビ、更には冷蔵庫まである(他にもいくつか家具がある)部屋だ。

 ちなみに、トイレ、お風呂も完備。もう一人暮らしできる状態だ。事実、食事のとき以外は部屋から出ない日もあるらしい。

 まあ、私の部屋も似たような状況(私の部屋にはキッチンもある)だが、男の人にしてはキレイでシンプルな部屋だ。


「そこ、座ってて」


「あ…う、うん」


 うたが向かった先は冷蔵庫だったから、飲み物でも持ってくるんだろう。

 この2週間、ずっとイヤな態度でいた私にもこんなに優しくしてくれているなんて、うたは優しすぎる…

 こんな状況でも、キュンとしてしまう。


(本当に嫌われてなくて良かった…)


 彼の態度を見る限り、怒ったり、嫌われたりはなさそうだ。長年の付き合いだから、感情の機微はだいたい分かる。

 そんなことをループを繰り返しながら考えていると、


「メロンソーダでいいよね?」



 私の好きな飲み物の1つだ。さすが、分かってる。

 こんな事にもキュンキュンしてしまう私は本当におかしい。

 いや、恋のせいなのか?


「うん。ありがとう…」


 コップを2つ持ったうたが来た。片方はメロンソーダだ。そして、コの字型のソファーの向かいに座った。

 一般的な物より小さめだし、テーブルも挟んでるからそこまで距離があるわけではないが、少し寂しく思ってしまう。

 というか、そろそろ質問されるのだろうか。自分で持ってきた強炭酸の飲み物に口をつけているうたを伺い見る。

 何を考えているのかは、よく読み取れない。が、相変わらず整った顔がある。


(…っ!き、緊張してきた…なんて言えば…?__やはり、ごまかすべきだろうな…)


 多少の悲しさを感じつつ、その結論に至る。

 すると、


「それで、みぞれ?どうして俺を避けた?この2週間、すごく寂しかったんだけど」


 私の心の波がおさまったところに聞かれる。

 なんというタイミング…


 さっき、ごまかす、という結論に至ったはいいが、本当の気持ちを洗いざらい話せたらどんなに良いだろうか、と考えてしまう。


(その後の展開は考えたくないけど)


 どうせフラれるけれど、スッパリ諦めたいな…

 うたに恋心を持ったまま相賀家に嫁ぐなんて失礼だろう。

 …だなんて、自分の都合に良い方ばかりのメリットが頭に浮かんでしまう。


「みぞれ?ちゃんと話すまで家に返すつもり無いからね、俺。早く言わないとお泊りだよ?」


「ぅえっ⁉と、泊まりっ⁉」


「うん。みぞれの家にも話してあるし。あ、ちなみに俺の部屋からも出すつもり無いから」


「っ⁉うたの部屋⁉」


「うん、そうだよ。こんな年頃の男と同じ部屋で泊まりたくないなら、さっさと言いなよ。俺もこんなことしたいわけじゃないし」


(こんなことしたくないって…私、うたにとっては女じゃないのか…)


 些細なことに敏感に反応してしまう。うたはそんなつもりで言ったのでは無いだろうに。

 こんな自分がイヤだ。


(心の中がカオスだ…っ…でもっ)


「別に、ふ、深い意味があった訳では…」


「ウソはダメだよ?みぞれ」


「なっ」


「みぞれがつくウソくらい分かるよ。だから、下手に逃げないで本当のこと言って?」


 ……正直うたのことを甘く見てた。まだ何も言ってないのに、こんなすぐにバレるなんて…

 そもそも、考えてみればうたにウソをつくこと自体初めてなのだ。


(ど、どうしようか…こんなことになるなんて)


「みぞれ、言わないの帰れないよ」


「だっ、だってっ‼」


「うん、何?」


「うたに会ったら、我慢できないと、思ったから…!」


「何を?」


「わ、私が、うたを、す、好きな気持ち…」


 ああ、言ってしまった。もう、後戻りは出来まい。うたの顔まで見る勇気はもうないが、この際、全て言ってしまおう。


「気付いたのは最近だが、もう、ずっと前から好きだった。私がうたを避けていたのは、バレたくなかったから。…私には婚約者がいるから、この気持ちは何があっても報われることは無い。だったら、ごまかして無かったことにって、思ったから…」


「……」


「___もう、言ったから、帰るな、うた。良いだろう?」


 何も言わないうたの顔を見ることはできなかった。

 うたの返事が無いのを良いことに、帰る支度をする。


 最後まで、意識してうたを見ないようにした。


「じゃあな、うた…」


 だから、うたがどこにいるのかも、何をしようとしているかも、分からなかった。


「みぞれ」


 支度をすませ、部屋のドアへ向かおうと思ったその時、私の腕は、うたに握られていた。

 そして、一瞬の間をおいて引っ張られる。振り返ろうとしていた私は、なすすべなく倒れていった。



これからテスト週間に入ります。

次の更新は、早くても7月です。

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