作戦 Side立水ファミリー
Side桃桜
今日の朝は立水本家で朝食をとりました。
そのほうが楽だからです。
今日は、久しぶりにみぞれと遊べます。
彼女の心境にも変化があったようですし、詩尋との様子も気になるところです。
…と、思っていたのですが…
「桃桜」
「なんですか?」
「例の、各務原のヤツに呼び出された」
「連絡先を交換していたのですか?」
もし交換していたんならシメましょうか、と一瞬で考えを巡らせますが__
「違う、家に連絡をしてきた。見合い扱いだ。かなり本気だな、向こうは」
その言葉に少しだけ驚きました。
「家に、ですか…今日のやつ、どうするんです?」
「いいチャンスだから、みぞれに軽く仕掛けてみようと思う。協力してくれるか?」
なるほど。
「良いと思います。分かりました、奏璃にも話しておきましょうか」
「…ああ」
自分の妹にまでお膳立てをしてもらうのはイヤだと見えますが、自分がモタモタしていたのが悪いのです。
ということで、早速、奏璃にも話します。
※
「___というので、どうでしょう?」
「うん!分かった!よぅし、私、お兄様のために頑張る!」
大体の作戦は決まった。
Side奏璃
今日は、お兄様とお姉様方と久しぶりに遊べる日‼と、楽しみにしていたのに、それはどうやら叶わないみたい。
お兄様が呼び出されたからだ。
全く、いつまでもみぞれお姉様に告白しなかったお兄様が悪いのに。
はあぁ、と溜め息も出てしまう。
それでも、これからお兄様が仕掛けるんだからもうこんなことも起きないかもしれない。
だって、二人でデートとか行ってしまうだろうし…
二人で、か…
つい、こみ上げてきた寂しさに任せて、お兄様に抱きつく。
「お兄様…」
「どうした?奏璃」
「もし、みぞれお姉様と付き合っても、私と遊んでね?」
すると、苦笑しながら
「もし、な…安心しろ。みぞれも俺もお前の事が好きだから大丈夫だよ」
自然と、笑顔になる。
「うん!お兄様、頑張ってね‼」
「ああ」
お兄様は、もし、と前置きしていたけれど、私とみおうお姉様が、そんな心配を露ほどないのはここだけのお話。
Side詩尋
早朝、親父に呼び出された。
話の内容は予想つく。気分はあまり乗らないが、必要なことだ。
「詩尋。お前、各務原美璃さんを知っているだろう?」
__来た。
「…それがどうした」
「立水家に話が来ている。今日という急な日取りだ。断ることは簡単だが、どうする?」
今日は、久しぶりにみぞれと遊ぶ日。
そんな大切な日を削るのは惜しいが、仕方ないな…
ある作戦も思いついたし、これで向こうも諦めないだろうから…
「___受ける」
意外だったか、目を見開く親父。
なんとなく、してやった気分。
「…分かった。話を進めておく」
ならば、さっき思いついた作戦を決行してみようか。
※
桃桜、と少し前を歩くその背に向かって声を掛ける。
そう大した内容の作戦じゃないが、桃桜と奏璃の手を借りなければできない。
Side桃桜
うたが、ついに仕掛けると言いました。
大きな進歩です。
彼は、各務原さんの件を早く済ませて、2人きりになるようです。
そのお膳立てを私達がするという訳ですね。
奏璃もやる気に満ちていて、頼もしいです。
(覚悟を決めるんですね、みぞれ)
私は心の中でそう語りかけました。
※
各務原家も、詩尋がみぞれを好きなことは承知の上でしょうから、今日の件は早くすむでしょう。
なので私たちは、詩尋からの連絡を受けると同時に、みぞれを一人にしなければなりません。
…そこまでは、私たちに無警戒なみぞれのことですから簡単に事は運ぶのでしょうが、詩尋とちゃんと話せるか、詩尋が暴走しないかが心配です。