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ザ☆旅行記Ⅳ カオス・スペシャル  作者: 小宮登志子
第9章 帝都の空に
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決戦

 帝国宰相は、内心ではいらだっているのかもしれない。しかし、態度には出さず、ドラゴニア侯を制しつつ口調も穏やかに、

「ウェルシー伯よ、冗談は、時と場合をわきまえられるがよいぞ」

「ドラゴニアは冗談です。でも、ウェルシーの隣のミスティアをいただきたい。これは本気です」

 もとより、ドラゴニアを丸々もらえるとは思っていない(ちなみに、「ミスティア」という言葉が出た瞬間、ドラゴニア侯はホッと胸を撫で下ろした)。でも、ミスティアくらいなら、わたし的には正当な報酬の範囲内だと思う(一般常識は知らないけど)。

 ただ、帝国宰相は、性懲りもなく繰り返される要求に思わずカチンときたのか、眉をピクリと動かし、

「ミスティアをどうしようというのか?」

「つまり、有り体に言えば、あっさりと併合ということで……」

 問答の間にもラードの攻撃は続いている。早急に手を打たなければ魔法アカデミーも宮殿も完全に破壊されてしまうだろう。帝国宰相にとって、値切る時間的余裕はないはずだ。

 宰相は、とうとう諦めて腹を決めたのか、「ふぅ」と大きく息を吐き出し、

「分かった。要求を呑もう。あの魔法使いの撃退に成功すればの話だ。ただ、失敗すれば、その時はどうなるか、分かっておろうな」

「ありがとうございます」

 わたしはにっこりとして言った。


 わたしはプチドラを抱き、大会議室の窓際に立つと、

「プチドラ、頼むわ」

「任せて、マスター」

 窓を開け、プチドラを空に放った。プチドラはラードに向かって一直線に飛びつつ、体を象のように大きく膨らませて本来の隻眼の黒龍の姿に戻る。

 ラードは隻眼の黒龍に顔を向け、

「ぬっ!? おまえはあの小娘のマスコットだな! そうか、ヤツも宮殿にいるのか!!」

 ラードの指先から幾筋もの電光がほとばしった。電光は隻眼の黒龍に命中。でも、その瞬間にバリアを展開して防いだようで、ダメージはない。隻眼の黒龍は口を大きく開け、火炎放射で反撃を開始した。


「うむ、なかなかやりおるわ」

 帝国宰相は、いつの間にか、わたしの隣に立って、隻眼の黒龍とラードの戦いを観戦している。

 ラードが(顔に似合わず)強力なことは実証済みだが、隻眼の黒龍にも魔法勝負でまったく引けを取らない。電光、火炎、竜巻等々、多彩な技を繰り出してくる。錫杖にまたがった空中での動きも素早く、隻眼の黒龍の方が鈍重に見えるくらい。

「これはちょっと、まずいかも……」

 隻眼の黒龍がラードごときに敗れるはずはないと思うけど、ただ勝てばよいというものではなく、時間がかかるのは困る。魔法アカデミーの魔法使いたちが帰ってきて、その助力を得てようやく撃退できたとすれば、それは、ミスティアを得る条件の「成功」とは言えまい。できるだけ早く決着をつけなければ……

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