デスマッチの技量
わたしたちが外に出てみると、腐敗した身体にボロボロの衣服がまとわりついた20体以上のゾンビが群れを成し、スラム街から商業地域に向かってゆっくりと進んでいた。
デスマッチは「うぉっ」と驚きの声を上げ、
「こっ、これは一体…… どういうことだ!?」
「分かりません。スラム街で突如として現れたという以外、何が何やらサッパリ……」
ギルド員は驚き、うろたえるばかりだった。
「わけが分からんが、このまま捨て置くわけにもいかんだろうな」
デスマッチは手近にあったメイスを1本ずつ左右それぞれの手に持ち、通りに飛び出していった。
メアリーは槍を握りしめ、
「カトリーナ様、わたしたちも……」
「こんなところで無駄に体力を使うことはないわ。ここは、デスマッチの手並みを見せてもらいましょう」
スラム街からゾンビが押し寄せたということは、スラム街の住民がカオス・スペシャルでゾンビ化したということで、すなわち、近い将来、カオス・スペシャル販売地域ではゾンビ化被害が続発するであろうということ。このことはメアリーもマリアも知らない。
とうとう来るべきものが来た感じだけど、こうなったからには……わたしも知らないよ。
ゾンビに挑みかかっていったデスマッチの技量は、一言で表現すれば、とにかくすごい。あっという間に、自分はダメージを受けることなく、ゾンビをすべて叩き壊してしまった。RPG的には、ゾンビが低レベルの冒険者でも容易に撃破できる程度ということは割り引いて考える必要があるとしても、剣闘士として連戦連勝していたと言われるだけこのとはある。
メアリーもポツリと、
「デスマッチという男、かなりの使い手のようですね」
「そうね。でも、メアリー、あなたほどではないでしょ」
「いえ…… 武器を使った戦闘なら、いい勝負ではないかと……」
メアリーは言葉を濁した。名人は名人を知るということだろうか、わたしには見えていないものも、メアリーには見えるのだろう。
「やれやれ、今日はやたらとゾンビに縁のある日だな」
デスマッチはゾンビの一団を片付けると、何事もなかったかのように戻ってきた。
「デスマッチ社長、今日はお騒がせしたわね。わたしたちはこれで失礼するわ」
「もう戻るのかね? こちらとしては別に構わないが、話は途中ではなかったかね」
「話は次の機会でいいわ。ラードがいないなら長居する気にならない……というより、ゾンビばかり見ていて、本格的に気分が悪くなってきたわ」
わたしたちはデスマッチに別れを告げ、帰途についた。ゾンビの連想でカオス・スペシャルとの関連を感づかれてもマズイ。引き揚げるには潮時だろう。




