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ザ☆旅行記Ⅳ カオス・スペシャル  作者: 小宮登志子
第7章 破滅への道
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キム・ラードの行方

 レオ・ザ・デスマッチは右手にハンドアックス、左手にメイスのファイティングポーズを取り、一歩、また一歩と、徐々に距離を詰めてきた。メアリーはわたしを守るべく、デスマッチの進路をふさぐ形で槍を構える。なお、今までいつもデスマッチと一緒にいたキム・ラードの姿はない。

 わたしはおもむろにデスマッチの前に進み出て、

「デスマッチ社長、今日は損害賠償の取立てに来たの。まずは、専務キム・ラードを引き渡してもらうわ」

「損害賠償? ラード? なんのことだ?」

 デスマッチは顔をしかめ、舌打ちした。なんだか、いつもと違って余裕がなさそうに見える。

「とぼけないで。ラードが混沌の住人をそそのかして、カオス・スペシャルの生産地帯を不法占拠しちゃったのよ。おかげで生産はストップ、当分、再開の見込みはないわ。G&Pブラザーズに賠償請求する前に、まずラードを八つ裂きにしないと、部下に示しがつかないの。あなたが認めないなら、実力行使あるのみ」

「そうかい。しかし、その事実が真実であるとしても、証明はできるのかね?」

「判決書は帰ってから書くわ。証拠は揃ってるしね。でも、執行は、今すぐこの場で行うから」

 領主の裁判権が領外のG&Pブラザーズに効力を及ぼすかどうかという理論的な問題はさておき、とりあえず交渉事は気合がものをいう。戦闘になってもプチドラとエルフ姉妹がいれば負けないだろう。状況は絶対的に有利。

 デスマッチは目を伏せてじっと考えていたが、しばらくすると顔を上げ、

「うむ、『分かった』と言ってもいいが、それは不可能だ。ただ、ここで話すのはマズイな」


 わたしたちは社長室に案内された。デスマッチは「ふぅ」とため息をついてソファに腰掛け、

「最初に言っておく。ラードが何をしたか知らないが、そのこととG&Pブラザーズは一切関係がない。正直な話、ラードが行方不明になったので、我々も秘密裏にヤツを探しているところなんだ」

「いなくなったって、いつ?」

「前回のカオス・スペシャルの代金支払いに、ヤツは出向かなかっただろう。その頃にはね。『忽然と姿を消す』というやつだ」

「そうだったの、それで、あの若くて弱々しいサラリーマン風の人が来たのね。でも、その話はウソじゃないわよね」

「ああ、人聞きのいい話じゃないから、箝口令は敷いておいたがな」

 話しぶりや顔つきからすると、ウソではなさそうだ。でも、念のため、

「もう一度きくけど、本当に本当? どこかにかくまってるんじゃないでしょうね」

 すると、デスマッチはあきれ顔で、

「疑り深いお姫様だな。分かったよ。信用できないなら、家捜ししても構わんぞ!」

「だったら、そうさせてもらうわ」

 すると、デスマッチは、一瞬、「しまった」と渋い顔。デスマッチともあろう者が、うっかり失言らしい。でも、その意味は? 本当はラードを隠しているのだろうか、あるいは、それとは別に、見られるとマズイものが?

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