殴り込み
わたしは急きょ、メアリーとマリアを呼んだ。ラードの独走かG&Pブラザーズの組織的犯行かは分からないけど、とにかくキム・ラードがわたしの領内を荒らしたということで、G&Pブラザーズには落とし前をつけてもらおう。魔法科の生徒も連れて行こうと思ったけど、メアリーが「まだまだ技量が未熟で無理」と言うので、少年魔法戦隊の楽しみは次回に取っておこう。
というわけで、魔法科の授業は中止、わたしたちは魔法科の生徒に見送られながら、ミスティアの町に向けて出発した。わたしは伝説のエルブンボウと矢筒を持って隻眼の黒龍の背中に、メアリーは例によって槍に腰掛け、マリアも隻眼の黒龍の背中(わたしの前)に乗った。
「ねえ、マリア、あなたは杖に乗って飛ばないの?」
「はい、飛べなくはないのですが、ちょっとした事情がありまして……」
マリアが意味ありげな笑みを浮かべた。なんだろう。なんだか気になる。
ミスティアまでは、空路、数時間の航程。前回は町の外で一旦地上に降りて町の門から入ったけど、今回は、直接、ミスティアG&Pブラザーズ本部前に降りることにした。取引ではなく脅迫が目的だから、少しでも怖そうに見える方が好い。
町の住民の反応は予想どおりだった。隻眼の黒龍を目にするや、みんな恐れをなして家の中に隠れ、わたしたちが地上に降りると、G&Pブラザーズ本部前には猫の子一匹いなくなっていた。
「ここがシーフ・ギルドのアジトですか。それにしても……」
マリアはハンカチを取り出して口元を押さえた。そういえば、マリアは初めてだった。G&Pブラザーズ本部は商店街の外れ、スラム街に程近いところにある。言われてみれば、なるほど、そこはかとなくスラム街特有の臭い……
ともあれ、わたしは子犬サイズに体を縮めたプチドラを抱き上げ、
「プチドラ、Fire!」
「はーい」
プチドラは炎を吹き、本部1階の壁に大きな穴を空けた。その際、建物の中で何人かが犠牲になったかもしれないが、わたしの知ったことではない。
その穴からは、すぐにギルド員たちが武器を構えてぞろぞろと現れた。そのギルド員たちをメアリーとプチドラがちぎっては投げ、ちぎっては投げ……
前回と同じような光景が繰り広げられている。
そうこうしているうちに……
「何事だ!? 殴りこみか?」
と、社長レオ・ザ・デスマッチが右手にハンドアックス、左手にメイスを持って飛び出してきた。道端にギルド員たちが傷を負って転がっているのを見ると、ギロリとわたしをにらみつけ、
「おまえはっ! 一体、どういうことだ?! 悪戯が過ぎるぞ!!!」




