表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記Ⅳ カオス・スペシャル  作者: 小宮登志子
第6章 ハーフ・オークの恨みは深く
57/87

敵は山岳ゲリラ?

 早朝、まだ辺りが薄暗い時間に、

「マスター、起きてよ。朝だよ」

 プチドラがわたしの体を揺すぶった。う~っ、眠い…… 頭がまだ半分眠っている状態で上半身を起こすと、

「急がないと、マスター。早朝、まだみんなが眠っている間に、こっそりと偵察に行くんじゃなかったの?」

 プチドラはヨチヨチと、伝説のエルブンボウと矢筒をわたしに手渡した。そういえば、昨晩、「護衛を付けるとか言われたら面倒だから、みんなが起きるまでにこっそり出発したい」と言ったような気が……

「行こうよ」

 わたしはプチドラに促され、テントを出た。早朝だけあって、やっぱり少しひんやりとしている。思ったとおり、みんな、まだ眠っているようだ。野営用のテントが並んでいるだけで、人影はない(寝ずの番をするほど、戦況は切迫していないようだ)。

 プチドラは、体を象のように大きく膨らませ、巨大なコウモリの翼を左右に広げた。左目が爛々と輝く。わたしが落っこちそうになりながらも、どうにかその背中によじ登ると、隻眼の黒龍は、物音一つ立てることなく、ゆっくりと大空に舞い上がった。


 隻眼の黒龍は、付近一帯が見渡せるくらいまで、高度を上げた。この辺りは山岳地帯。猟犬隊は、後方の山の上に陣を敷いている。混沌の領域に侵攻するためには、狭隘な谷間を縫うように進まなければならないから、一筋縄では行きそうにない。

「でも、混沌の勢力はどこにいるのかしら?」

 不思議なことに、いくら探しても敵陣は見つからない。

「敵さんとしては、猟犬隊を混沌の領域から追い払えば十分と見てるのかもね。それに、この辺りの地形を考えれば、まともに戦うよりも、少人数でゲリラ戦を仕掛けて弱らせていく方が、理に適ってそうだし」

「敵がどこにいるか分かる?」

「マリアなら、どこに何が潜んでいるか分かると思うよ。マリアにも来てもらえばよかったかなぁ~」

 なるほど、でも、今更それを言っても遅い。とはいえ、館まで一旦引き返す気にはならないから、目視で偵察するしかない。

「ねえ、プチドラ、ちょっと地上に降りてみない?」

「いいけど…… 危険かもしれないよ。敵がどこに潜んでいるのか分からないし」

「うん。だから、ほんのちょっとだけ」

 山岳ゲリラといってもゴブリンやオークだから、プチドラがいれば、なんとかなるだろう。


 隻眼の黒龍はゆっくりと高度を下げ、谷間に降り立った。両側は崖で、谷底には小川が流れている。辺りはしんと静まり返っていて、上下を含めて周囲に誰かがいるような気配はない。一応、差し迫った危険はなさそうだ。わたしは子犬サイズに体を縮めたプチドラを抱き上げ、歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ