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ザ☆旅行記Ⅳ カオス・スペシャル  作者: 小宮登志子
第6章 ハーフ・オークの恨みは深く
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大増産大作戦

 目の前の現ナマに思わず目がくらんだことで、カオス・スペシャル大増産大作戦(といえるほど大袈裟ではないかも)が始まった。混沌の領域では今も散発的に小規模な一揆が発生しているので、エルフ姉妹と魔法科の生徒には多くの護衛を付け、作業に集中してもらった。さらに、全耕地でカオス・スペシャルの栽培を強制したり、混沌の住民を徴用して開墾し、荒地の耕地化を進めたりして、栽培面積の拡大に努めた。その結果、供給量を一気に3倍にすることはできなかったものの、それに近い成果を上げることができた。

 わたしは、ドーンが持参した「混沌の領域におけるカオス・スペシャルの栽培に関する月次報告」をパラパラとめくりながら、

「最初は『全然ダメか』とも思ったけど、やってみればできるものね」

「人生で気合と根性に勝るものはありませんよ。3倍に届かなかったのは残念ですがね」

「別に構わないわ。3倍なんていう要求がムチャクチャなのよ。そんな中でメアリーたちもよく頑張ってくれたみたいだから、近いうちに慰労会でも催してあげましょう」

 エルフ姉妹と魔法科の生徒は数日前に戻ってきていたが、さすがに少し疲れが見えていた。


 その時、ポット大臣がドアをコンコンとノックして執務室に入り、

「カトリーナ様、G&Pブラザーズから、いつもの用件で使者が参りましたが、いかがいたしましょうか」

「あれ? 大臣、その顔はどうしたの? 珍しく、至って普通……というか、こんなこと、初めてじゃない?」

 いつもなら、あのいまいましいキム・ラードに殴られて怪我をしているのに、今日は、そんな様子はない。

 ポット大臣はきまりが悪そうに、ゴホンとひとつ咳払いをして、

「いえ、その使者なのですが、あのヤロー、つまりハーフ・オークではなかったのです。理由は分かりません」

「そうなの? まあ、いいわ。通してやりなさい」

 ラードの超絶技巧的にキモい顔を見なくて済むというのは朗報だけど、一体、どういうことだろう。忙しくて来られないだけか、あるいは、希望的観測としては、更迭されたか……


 しばらくすると、初めて見る男がヨロヨロと、金貨の入った大きい袋をいくつも背負って執務室に入ってきた。

「これが今回の分の代金です」

 男は袋をドスッと床に置く。カオス・スペシャルの供給量を大幅に増加しただけあって、金貨の袋は、かなりの重量感だ。プチドラは目の色を変え、金貨の袋を開けて体ごと中にもぐりこんだ。

「では、わたくしめはこれにて……」

 用が済み、男は早々に帰ろうとしたが、

「待ちなさいよ。せっかく来たんだから、もう少し、ゆっくりしていかない?」

 わたしは男を呼び止めた。大した情報は握ってそうにないが、とりあえずタダでは帰したくない。

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