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ザ☆旅行記Ⅳ カオス・スペシャル  作者: 小宮登志子
第6章 ハーフ・オークの恨みは深く
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形勢はいかに

 ラードはジャンクされたみたいな顔に、品性のかけらもない薄笑いを浮かべ、

「考え直すなら今のうちだぞ。タダでは済まないことは違いないが、今なら特別にサービスしてやろう」

 わたしは言葉を返すことなく、「たのむわ」とばかりに、プチドラの尻尾を軽く引っ張った。プチドラは「うん」とうなずき、口を大きく開けてドッジボール大の火の球をうち出す。

「げっ!」

 火の球はピンポイントにラードの顔面に命中し、激しい魔法の炎がその体を包んだ。ラードは苦しげに炎の中でもがきながら、何歩か後ずさった。「大口をたたいていた割に、意外とあっけないヤツ」と思ったその時、

「こっ、この! 小娘が!!」

 ラードは錫杖で床を突き、口をモゴモゴと動かした。すると、何かの魔法なのだろうか、不思議なことに、ラードを包んでいた炎は一瞬にして消えてなくなってしまった。ラードは体勢を立て直し、

「なかなか味なことを…… しか~し、この私を怒らせて、今まで無事だったヤツは、一人もいないのだ!」


 ところが、ラードが吠えたその時、執務室のドアがさっと開き、

「今まではそうでも、これから先は、どうかしら?」

 入ってきたのは、銀色の髪と透き通るような白い肌が美しいエルフ妹、マリアだった。

「あら、マリア、あなた……」

「ドタバタと騒々しかったので、事件かと思いまして…… 来てみれば、びっくりでした。ほんと、ひどい顔ですこと……」

 マリアはクスクスと口元を押さえて笑い出した。マリアにはラードの顔は見えていないはずだけど、「ひどい顔」はハーフ・オークの枕詞だろうか。ともあれ、これだけあからさまにおちょくられたとあっては、当然のように、ラードは怒り心頭、

「許さんぞ、おまえら! 二人と一匹、まとめて地獄に送ってやるわ!!」

 と、ドスドスと錫杖で激しく床を突いた。


 するとその時、今度はガチャンと大きな音を立てて、館の外から執務室の窓を突き破り、

「残念ながら、二人ではありません。あしからず……」

 銀色の髪をなびかせ、槍に横向きに腰掛けたメアリーが、ラードの前に立ち塞がった。

「あら、メアリー、あなた、魔法科の授業中じゃなかった?」

「妹から緊急の通信が入りましたので、授業は自習にしました」

 エルフ姉妹は、離れていても、テレパシーのように心の中で会話できるらしい。異変を察知したマリアが、メアリーにいわゆる「電波」を送り、緊急に応援を要請したのだという。

 こうなれば、実質3対1、こちらが圧倒的に有利になったわけだ。どうする、キム・ラード。

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