親衛隊誕生
装いも新たにカトリーナ学院がスタート。生徒数が増え、いろいろと新しい仕事も増えているが、エレンは毎日楽しそうに隣の校舎まで出かけている。一方、わたしは執務室にこもって生徒名簿を眺め、
「やっぱりね。思ったとおり」
「マスター、どうしたの?」
プチドラは興味がなさそうに言った。金貨とじゃれている方が楽しいのだろう。
「生徒の中に騎士の子供が一人もいないのよ。予想していたとおりだけど」
わたしが騎士団に不人気なのは分かっていた。騎士たちも、自分の子供を人質に送るようなことはしたくないのだろう(あるいは、自前で家庭教師を雇っているのかも)。
騎士たちは、今は大人しく従っているが、状況が変われば反旗を翻すかもしれない。プチドラやエルフ姉妹がいれば心配はないが、用心するに越したことはない。それに、財政的に余裕がある今ならば……
「決めたわ」
わたしは勢いよく立ち上がった。机が揺れ、プチドラは机から落ちそうになった。
「びっくりした…… マスター、今度は一体、どうしたの?」
「エルフ姉妹とメアリーの配下を集めて親衛隊を作るのよ」
わたしはプチドラを抱き、執務室を出た。
エルフ姉妹は、都合よく、部屋で紅茶を飲んでいるところだった。このところ、カオス・スペシャル供給量の伸び率は安定し、メアリー、マリア及び魔法特待生の成長促進魔法合宿コースは行われていない。
メアリーは、突然の闖入者に驚いたように、
「カトリーナ様、これはまた…… あの……」
「どうしたの? 今日はそんなに危ない話じゃないわ」
エルフ姉妹は「危ない話じゃない」と聞いて、少し安心したようだ。わたしは姉妹に、財政のやりくりが楽になってきたので、メアリー配下の精鋭に給料を払えそうなこと、この機にメアリーを隊長として、エルフ姉妹とメアリーの配下を中核とする親衛隊を組織したいということを話した。
「はい、カトリーナ様がそのようにおっしゃるなら、仰せのとおりに。部下にはわたしからも伝えておきます」
こうして、新たな武装集団として親衛隊が発足した。コスチュームは、猟犬隊とは対照的に赤で統一した。ドーンはブーブー文句を言っていたが、騎士団の組織的な反抗に備えるため、純粋な軍事組織が必要だからということで押し切り、最後にはドーンも渋々ながら了承した。
でも、ドーン、あなたは正しい。親衛隊の剣先が向かう相手は騎士団だけではない。もしも、わたしを追い落とそうとする者がいれば、それが誰であれ……




